音羽川遡行〜てんこ山☆九輪草に誘われて
- GPS
- 01:42
- 距離
- 5.4km
- 登り
- 390m
- 下り
- 391m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
音羽川遡行は一般ルートなし。 わずかに踏み跡はあるもののテープの類いは一切なし。 北山トレイル〜てんこ山〜曼殊院は地図の記載はないものの、明瞭なルートあり |
写真
感想
例年になく花の季節がおしなべて早いようだ。クリンソウに出会える山を探しているうちに意外な場所に咲くことを知った。比叡山から流れ出る音羽川である。京都には山科にも音羽山から流れる音羽川があり、さらに清水にも音羽川があり、境内の音羽の滝はつとに知られた名所である。これらと区別すべく、修学院音羽川とも呼ばれるらしい。比叡山の稜線を京都市内から南に辿ると、小さくなだらかのピークがあることに気がつく・・・京都に20年以上住んでいて、この山行のコースを考える上で初めて気がついたのだが。てんこ山だ。この音羽川は比叡山と、このてんこ山の間を市内に向けて流れている。
比叡山への登山道の中でも最もポピュラーと思われる雲母(キララ)坂がこの音羽川沿いから登っていくことになるが、上流には幾多もの砂防ダムと堰堤が作られている。何故、この川にかくも多くの砂防ダムがあるのかと思えば、かつて昭和47年の台風によるこの川の水害で、激甚な被害を市内にもたらしたことがあったらしい。
この日は午前中に用事があり、午後は別の山行(ミゴ谷の沢登り〜イチゴ谷山〜三国岳縦走)を予定していたのだが、来週以降は出張がと仕事が過密にたてこみ、京都の散策をする機会もこの日しかないので、意を決して早朝より音羽川に向かう。
曼殊院の隣、関西セミナーハウスから音羽川に出て沿って上流に歩き始めると早速にも、大きな砂防ダムが出現する。ダムの左手に細い石段が設けられており、越えることが出来る。ダムは既に比叡山特有の花崗岩の細かい砂礫で埋まっている。昔はボードウォークがあったように記憶しているが、その殆ども砂礫に埋伏されようとしている。最後の大きな砂防ダムを越えると展望台が設けられているが、残念ながら市内の展望は望めない。「ここからは危険」との看板を過ぎて、川の左手につけられた細い踏み跡を辿る。樹の枝に「音羽の滝↗」との木製のプレートが付けられている。
堰堤を越える度にガラリと川の表情が変わってゆく。小さな滝を従えた堰堤を越えると、既に川という呼称は相応しくなく、完全に沢登りの様相を呈する。しかも、倒木も少なくないので厄介だ。トレラン・シューズで来たことが間違いであったことに気がついてももう遅い。
やがて大きな堰堤が現れるが、両岸いずれも高巻くのが困難に思われ、果てどうしたものかと途方に暮れるかけたところ、ふと堰堤の右に緑のロープがついているのが目にはいった。ロープを辿っていくと、堰堤のコンクリートにハーケンが打ち込まれているではないか。ロック・クライミングならぬ堰堤クライミングである。しかし、ここを越えると引き返すのが容易ならざることをも意味しているようだ。
ハーケンを足がかりにして何とか堰堤を越えると、いよいよクリンソウのご登場である。群生というわけには行かないが、ちらほらと咲いているのが目に入る。愛宕山はともかく、京都の市街からこんなに近いところでクリンソウに出遭えるとは・・・という斬新な驚きを禁じ得ない。そもそもこの沢の光景そのものにも充てはまることなのだが。
クリンソウに誘われるように奥へと進み、沢の右手に幾重にもつけられた石垣を登っていく。急峻な斜面には新鮮な足跡がある。どなたかが近い過去に通過したのかと思ったが、その大きさと幅から、それが鹿のものであることは容易にみてとれる。鹿のトレースを辿り、次なる堰堤を越えると、再びクリンソウだ。
そして沢に沿って奥に入っていくと大きな音が聞こえる。いよいよ音羽の滝だ。近づいてみるとかなりの水量である。右手の花崗岩の砂礫からなる斜面にとりつくと、すぐ目の前を鹿が駆け上がっていく。一足先に上に登ると鋭い鳴き声を繰り返し発しているのは周囲に警戒を呼びかけているのかのように聞こえる。斜面の上がとても妙に明るいと思えば、忽然と開けた場所に飛び出した。このままどこかの登山道と合流するのかという一抹の期待があったが、どうやらその気配はない。
さらに堰堤を越えて沢に沿って登っていくと、再び開けた斜面に出る。斜面の中央で華やかにピンク色の花を咲かせている樹が目に飛び込む。タニウツギのようだ。いつの間にか沢は細くなり、水量も少なくなったように思える。沢に沿って遡行を続けると京都一周トレイルに出る。時間があれば源頭までこの沢をつめてみたいが、それはまたの機会にとっておこう。滝や花を愛でるうちに予定よりも大幅に時間が超過している・・・にも関わらずトレイルから目に入ったヤマフジが綺麗なので、鑑賞すべくついついコースを脱線してしまう。
トレイルに入るとすぐに石鳥居に出る。鳥居の右手に延びる道をいくと間もなく鉄塔に出る。天子と書いてあるので、てんこ山の漢字はこのように充てるのかと思い至る。鉄塔の右手から尾根に沿って明瞭な道がついているので、これがてんこ山山頂にいたるルートであろう。果たしてまもまく三等三角点のある山頂に出る。
下りは山頂からのトレイルを辿り、曼殊院をめがけて下るコースに入る。手元にあるいくつかの地図には全く載っておらず、ヤマレコのGPSにも軌跡が見当たらないが、深く削られた登山道は古道の趣だ。後で調べてみるとかつての白鳥越えの古道らしい。道には倒木もなく、かなりよく整備されているように思われる。ほどなく曼殊院の右手の林道に出る。
道標も何もないので知らなければこのコースを辿ることがないかもしれないが、このレコを訪れて下さった方、この旧白鳥越えを比叡山に登られるコースの選択肢に加えて頂ければ幸甚だ。非常に登りやすく、杉の植林の単調さに飽きることもない。間違っても音羽川の遡行はオススメではない・・・クリンソウの咲く季節以外では。
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