20代最後の山行 聖岳東尾根


- GPS
- 80:00
- 距離
- 41.9km
- 登り
- 2,991m
- 下り
- 2,994m
コースタイム
1月1日(火)
沼平ゲート11:10―11:45畑薙大吊橋―13:00中の宿吊橋―14:50聖沢登山口―(崩壊個所に沿った急斜が登れず引き返す)―16:20標高1200m適地(幕営)
1月2日(水)
標高1200m適地6:10―10:50ジャンクションピーク―12:40白蓬ノ頭直下(幕営)
1月3日(木)
白蓬ノ頭直下6:00―7:20東聖岳―8:55奥聖岳―9:10前聖岳―9:20奥聖岳―10:50白蓬ノ頭直下11:25―12:20ジャンクションピーク―(1800m付近及び1420m付近で誤った尾根に引き込まれ都度登り返す)―16:05標高1200m適地(幕営)
1月4日(金)
標高1200m適地5:20―5:30聖沢登山口―6:55中の宿吊橋―8:50沼平ゲート
天候 | 1月1日:晴れ 夜一時雪 1月2日:晴れ 1月3日:快晴 1月4日:快晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2019年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
登山指導センター(沼平ゲート)〜聖沢登山口:一般車通行止めのため、ひたすら歩く。多少のアップダウンあり。ほぼ展望なし。 聖沢登山口〜白蓬ノ頭:出会所小屋手前のトラバース道が崩落しているため、尾根を直登する方向に赤テープが付けられルートとなっているが、急峻。その後は特に難所は無いが、下りは誤った尾根に引き込まれないようにルートファインディングに注意。今回は登山口では地面がやっと白くなる程度の積雪で、白蓬ノ頭まで登ると膝程度。ほぼトレースあり。 白蓬ノ頭〜奥聖岳:ピークに近づくほど細い箇所が増えるため滑落注意。トレースは一応確認できるが吹き溜まり等では既に消失。奥聖直下の岩場は慎重に行けば問題ない。(ノーザイル) 奥聖岳〜前聖岳:地形的な危険個所は無いが、北からの風が強烈。今回は自分が行動できる限界の強さだった。 |
写真
感想
聖には苦い記憶がある。
十年近く前、某大ワンゲル部の正月山行として聖岳を企画したが、天候の悪化する中、隊のメンバーに止められるまで山頂に向けて突き進み、結局直下の斜面で敗退したばかりか、隊の半分以上が手や足の指に凍傷を負うという事態を招いてしまった。
時が経ち、平成が終わりを迎えようとするこの正月(そして自分としては20代の終わりでもある)、再びあの頂を目指すことを思い立った。
以前は長野県側の便ヶ島から入山したが、数年前に林道が崩壊して通行出来ない状態になっており、このルートは使えない。さらに、畑薙大吊橋から入山し上河内を経て登るルートも昨年の台風で上流の吊橋が数か所で崩落し、通行止めになっている。
そのため、ルートは必然的に聖岳東尾根に決まった。
懸案は山頂直下の岩場。ザイルを出している記録もあるが、積雪や気象の状況によって危険性は大きく変わるため、進むかは現地判断することにする。とにかく無理はしないことが肝心だ。
当時と違い、忠告をしてくれるメンバーはいない。
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1月1日(火)
落石だらけの狭い車道を延々走り、ようやく畑薙湖畔の沼平ゲートに到着する。指導センターに計画書を提出して出発。
既に人が多く入っておりトレースもあると告げられる。
申し訳程度の水を湛えた畑薙湖を左に見ながら進んで行くと、下山してきた数パーティとすれ違った。マウンテンバイクを利用している人もいて羨ましい気もするが、登り坂は大変だろうと思う。
すれ違った方から、出会所小屋のトラバース道が崩壊し、直登するルートに変更されていると教えてもらった。(ただ、自分は出会所小屋より先が崩壊しているものと勘違いしていたが、実際は小屋手前で既に崩壊してルートが寸断されていた。)
情報通り、畑薙大吊橋には通行止めを示す看板が立てられている。
異様に河床との比高が小さい真っ赤な畑薙橋を渡りさらに進むと、今度は中の宿吊橋に至る。片道14キロの林道の約半分まで来たことになる。
休憩ついでに吊橋を少し渡ってみるが、結構高度感がある。
吊橋から見る大井川源流の流れが美しい。
林道は地味なアップダウンを繰り返しながら、やがて左に大きく屈曲する。地形図上には「赤石渡」と表記がある。ここから、目指す聖の白い頂が初めて望まれる。これまでほとんど展望が無いだけに少し見えるだけでも嬉しい。
赤石トンネルを抜けると結氷した赤石ダムに至る。独特の質感の湖面で、これが誰でも簡単にこられる場所にあればインスタ映えスポットとして有名になりそうな感じだ。
足と肩が疲れてきた頃、ようやく聖沢登山口に到着。まだ時間があるので出会所小屋まで行くことにする。雪が無いので林道歩きに使ったアプローチシューズのまま登り始める。
取り付きは谷だがすぐに左手の尾根に乗る。そのまま進んで行くが、傾斜が増すとほどなく倒木が増え、その先の斜面が崩壊している。上方を見ると赤テープが付けられておりこちらがルートであると分かるが、かなり傾斜がきつく冬山装備を背負ったままだとかなりキツイ。
いずれにせよ、ここを登っても出会所小屋に着けなければ水も得られないので、今日は諦めて引き返すことにする。
標高1200メートル付近の沢沿いに、非常に良い天場があり(かつて作業小屋でもあったのだろうか)、ここで幕営することにする。何より近くに沢があり、水作りをしなくて良いのがありがたい。
少々不安が増すが、キムチうどんを食して就寝。
夜は小雪となった。
1月2日(水)
テントから出ると地面が白い。
東尾根の取り付きは聖沢登山口の他に東俣林道をさらに北に進んだ地点の2箇所あり、迷った挙句、もう一か所の取り付きから登ろうと考え、一旦登山口まで降りる。
ここで、昨晩テントを張っていたパーティの方と話す。元々は後者の取り付きから登るつもりだったが、ほとんどの人が聖沢登山口から登っているという指導センターでの情報から、こちらから登ることにした、とのこと。
再び迷いが生じる。
そういえば、昨日はアプローチシューズだったが、アイゼンとピッケルを使えばもう少しは登りやすくなるんじゃないか、そんな考えもよぎり、結局もう一度同じルートを登り始める。我ながら優柔不断である。
結局この選択は正しかった。急斜の手前で、アイゼンを付けて昨日の斜面に取り付いたところ、大して難所と感じることもなく通過できてしまった。改めてアイゼンは凄いと思う。なお、ちょうどこの急斜部分で、ザイルを出して下降するパーティとすれ違った。
ここを過ぎると、しばらく特筆すべきこともなく延々高度を稼いでいく。中途半端に雪が積もっており、木の葉や枯れ枝などがアイゼンにまとわりついてくるので厄介だ。
しかし、天気は良く、トレースもあるので、あまり苦になる登りではない。
標高2260メートル付近のジャンクションピークあたりまで来ると、少しだけ雪が深くなる。昨日も10センチくらいは積もったような感じだ。
ゆるやかになったら尾根を辿り、最後に少し灌木のうるさい斜面を登ると白蓬ノ頭直下の幕営適地に至る。ピークの南側にあたるためほぼ無風で、スペースも広く、かなり良い天場だ。
テントを張り、白蓬ノ頭まで散歩に行ってみる。
ピークは眺望が良く、特に北側に聳える赤石岳は圧倒的な存在感を伴って視界に飛び込んでくる。東には樹林帯越しにピラミダルな奥聖も見えるが、ここから見ると「本当にあそこまでピストンできるのか?」というくらい遠くに見える。
笊ヶ岳方面はほとんど雪が無い。
そんなこんなで、今日はカレーを食べて就寝。
快適な天場とはいえ、寒がりの自分にとって、標高2600メートルでの幕営はやはり辛かった。。
1月3日(木)
今日はいよいよ聖アタックの日である。
できれば今日中に登山口付近まで降りてしまいたいため、空が白みかける頃には天場を出発。トレースはあるにはあるが、風と新たな積雪の影響で不明瞭な個所もある。
二重稜線の乗り換え部を過ぎるとほどなく森林限界を突破し、それとともに風が出てくる。尾根は最初たおやかな姿をしているが、次第に急峻な様相へと変化していく。
聖沢側、赤石沢側どちらも基本的には切れ落ちているため、とにかく忠実に雪稜上を辿る。また、ところどころ傾斜の強い部分もあり、しっかりとキックステップで足場を固めながら前進する。
次第に奥聖の迫力ある絶壁を間近に望むようになる。
奥聖手前のコル付近にテン場の跡があった。ここで一服し、最後の核心部の登りにかかる。とにかく身軽な方が良いと考え、核心部の取り付きあたりにザックをデポし、残りの行程は空身でいくことにする。ザックは小さな灌木にスリングでビレイしておいた。
かなり急ではあるが、取り付いてみると登れないほどではない。引き続き、慎重にステップを切り高度を稼ぐ。途中、小さな岩場があったが丁寧に雪を払いのけるとちゃんとスタンスがあり、特に問題なく通過。
問題の岩場はどこだろうと考えながら登っていると、最後の急登を経て奥聖の山頂標識が見えた。ということは、さっきのが例の岩場だったらしい。個人的には岩場よりもその前の細い稜線の方が恐怖感があった。
奥聖ピークからの眺めは素晴らしいの一言に尽きる。360度遮るものがなく、南アルプスの真っただ中にいることを実感する。
しかし、あまり悠長にしてもいられない。今日中に登山口まで降りるには時間は限られており、それでなくともとにかく風が強くじっとしていられない。
最後の前聖のピストンにかかる。簡単かと思ったが、北側からの風が尋常じゃなく強い。うかうかしていると、斜面から引きはがされそうなほど強く、聖沢側に身体を倒しながら進んで行く。
ピークに近づくほど風が強くなり、もう山頂標識の15メートルくらい手前で敗退したくなったが、なんとか標識まで辿り着き、写真だけ撮って即引き返す。勿体ないが仕方ない。
奥聖からの下りはトレースが明瞭になったので、登りよりも恐怖感は少なかった。だが、ふと首から下げていたはずのマップケースをみると、まるで凶暴な肉食動物に食いちぎられたかのように下半分がマップごと消失している。こんな壊れ方初めてだぞ・・・それほど風が強かったらしい。
下山途中、2人パーティに合ったほかは誰とも会うことなく、淡々と下り、天場まで戻る。なんやかんやで5時間弱でピストン出来てしまった。
ということで、予備の地図を出して、登山口に向けてさらに下降開始。
やはり雪山の下りは楽で、1時間ほどでジャンクションピークへ到着。このまま何の問題も無く天場に着くかと思いきや、そう簡単にはいかなかった。
ジャンクションピークを過ぎると次第に雪が少なくなり、必然的にトレースもなくなる。もともと夏道はないので、不明瞭な樹林帯の踏み跡をコンパスと赤テープ頼りに下りていくのだが、目標物が少なく、1800メートル付近で既に1700メートルのベロを通過したと勘違いしてしまい、敢えて赤テープを外れて120度の方向の尾根を降り始める。
流石に途中で怪しいと感じ、遠方に見える赤石ダムの位置などから、元々の想定よりも北側の尾根にいると断定。登り返して復帰。
しかし、今度は気を付けていたにも関わらず例のトラバース道崩壊個所の直上をそのまま通過してしまい、出会所小屋跡の平地が見えて再び登り返す。1420メートル付近に赤テープがあり、そこから急ではあるが下降可能そうな尾根が派生していたので、ここから半分藪漕ぎっぽいこともしながら降りていくと、ようやく昨日のルートに合流して一安心。
既に日の入りまで1時間を切り、ようやく沢沿いの快適なテン場に戻ったときには、心身ともかなり疲労した状態になっていた。
鴨ロースを入りの少し贅沢なキムチうどんを食べて山行最後の夜を迎えた。
色々な意味でお腹いっぱいである。
1月4日(金)
今日はほぼ林道を歩くだけ。
遅くなると東名の渋滞が予想されるので、できるだけ早めに駐車場に戻ろうと、まだ真っ暗な5時20分に出発。
疲れてはいるものの、3日間分の食料が軽くなっていることもあり、ザックは軽く、思いのほか足は速く動く。
夜明けの時刻には既に中の宿吊橋に到達した。今日も天気が良い。寒いが鳥のさえずりが聞こえのどかである。
その後、3人ほどすれ違う登山者と挨拶し、順調に歩を進め、9時前に沼平ゲートに戻った。色々なことがあった、長い4日間だった。
このあと、車で暫く大井川沿いに林道を下ったところにある接岨峡温泉「接岨の湯」で汗を流し、帰路に就いた。
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平成最後の年に無事に聖のリベンジを果たすことが出来て良かった。
とにかく、山頂から何一つ人工物が見えない、南アルプスの真っただ中にいるのだということを実感できたのが印象的で、こういう山の奥深さがこの山域の魅力だと思う。
反省点としては、細かい地図読みや行動判断など、不完全な点が色々あった点。そして、装備も行動食が大量に余るなど、もっとコンパクトにすることが出来た点か。
聖の登頂を機に、今年が良い年になると良いなあ。。
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