播備国境尾根縦走☆総検行山〜日和倉山〜後山〜ダルガ峰


- GPS
- 11:31
- 距離
- 25.5km
- 登り
- 2,115m
- 下り
- 2,075m
コースタイム
- 山行
- 7:07
- 休憩
- 0:29
- 合計
- 7:36
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
写真
感想
【山行前】
播備(ばんぴ)国境とはあまり聞きなれないかもしれないが、文字通り、兵庫と岡山の県境である。この県境は大部分は地味な低山の尾根を蛇行するのだが、鳥取との県境に近づくにつれて後山という岡山県下最高峰にまで高度を上げると西に転じ船木山、駒ノ尾山と続く。駒ノ尾山で北側に向きを転じるとさらに大海里山、ダルガ峰とピークが続く。
土曜日の午後に岡山への出張の予定があったのだが、金曜日に有給休暇を取得することが出来たので前日の金曜日の夜に駒ノ尾の避難小屋に泊まり、この播備国境尾根を縦走することを考える。幸いにして金曜日から土曜日にかけて好天の予報である。
初日は後山を越えて駒ノ尾山にたどり着く計画だが、当初、日和倉山から登り始める予定であったのだが、地図を見ているとその東の総検行山という文字が目に入る。日和倉山への登り口となる奥海乢に至るのにこの総検行山を越えてもそれほど大きな時間のプラスにはならないだろうと踏む。
【一日目】
京都からは相生で新幹線を降りて、出張の道具をコインロッカーに預けるとまもなく京都を始発した特急スーパーはくとが到着する。智頭急行線の大原駅でスーパーはくとを下車すると駅前はがらんとして閑散としている。後山へは美作共同バスというのが運行されているのだが、一日2便のバスは16時台と17時台のみであり、およそ現実的とは思えない運行スケジュールである。後ろ山方面にはもう一つ、美作市営バスが運行されているのだが、こちらは何故か駅から南へ歩いて10分ほどの大原病院から出発する。
バスの出発時間まで丁度10分ほどだったので大原病院へと急ぐ。病院の玄関にたどり着くと丁度、バスが出発するところであった。驚いたことに大型のバンはほとんど満席に近い。乗客はほとんど顔見知りなのだろう、いきなり出発時間になって見知らぬ顔が乗り込んで来たので運転手も吃驚したようだ。
東青野から谷の右岸に沿って付けられた林道を進む。まもなく林道は谷を離れて右手の斜面を登って行く道と谷沿いの道に分岐する。分岐点には赤字で「走路」と記された道標が立てられており、その上には美作・後山ベルピール・トレイルランと小さく記されている。どうやらトレランのコースとして整備されているらしい。
国土地理院の地図では谷沿いに点線が記されているので、谷沿いの林道はこの登山道へ通じていることが期待される。この谷を辿って尾根に出ることを考えるだが、さらに大きな間違いであった。林道はすぐに終わり、谷に沿って極めて薄い踏み跡がある。
谷の奥には石垣で組まれた堰堤が目に入る。作りからすると、かなり古そうな堰堤だ。薄い踏み跡を辿り堰堤を右岸から乗り越えるが、まもなく踏み跡は完全に不明瞭となる沢の水量はそれほど多い訳ではないが谷は徐々に険しくなってゆく。大きな岩の間を縫って沢の中を遡行する。
もう一つ、先ほどの堰堤と同様の石垣造りの堰堤が現れる。
小さな小滝が連続する。狭隘な沢の奥には平らな土地が見えるが、この小滝を通過することが困難である。撤退の二文字が頭を過るが、少し沢を戻理、左岸の斜面へとトラバースすると難なく高巻きすることが出来る。それまでの狭い谷間が嘘のように広々とした谷になる。その谷の奥に一条の滝が現れた。
滝を右岸から高巻く。斜面はそれほど急ではないが、ざれ気味であり足場が脆い。一足ごとにボロボロと崩れてゆく斜面を辿り、滝を越えるとなだらかな樹林帯に入る。もなく左手から合流してくる登山路と先ほどのトレランの道標が目に入る。
檜の植林の中を登山路を辿り県境尾根、すなわち播備国境に辿りつくと小さな山頂広場
には「杉の奥」とある。後で総検行山の点名であることを知る。稜線の奥からは後山から駒ノ尾山に至る稜線が大きく視界に入る。小さな鞍部を下って登り返すと伐採された好展望の小さなピークがある。ここからは植林の中を緩やかに奥海乢(おみねたわ)へと下る。
奥海乢に到着した時刻は14時10分。総検行山に登らずにバスを降りてここまで歩いてきたら12時過ぎには到着していただろう。この日のこの後に予定されていた行程を考えると、最初からそうすべきであったのだ。
奥海乢からはベルピールへの車路を歩く。ススキの原と植林の間を登ってゆくと忽然と白亜の大きな建物が現れる。ベルピールの建物だ。この建物は日本最大というフランス製のベル、リュバンヴェールを吊り下げる塔楼らしい。周辺の森林を伐採して広い草原を作ってまで何故この辺鄙な場所にこの塔楼を作ったのか疑問ではある。塔楼の前のベンチには1組のご夫婦が座っておられ、が、茫漠としたススキの原の彼方に広がる見晴らしを鑑賞しておられるようだった。
ベルピールの建物のアーチを潜り、芝生の斜面を登る。日和倉山への山頂へと至る登山道を探す必要があるのだが、斜面の上部に至るとススキの原の中に踏み跡があり、すぐに整備された階段の遊歩道に出るのだった。後ろを振り返ると斜面の北側の落葉松が美しく色づいている。山頂までは紅葉の自然林の中につけられた階段を登りすぐに辿り着く。
山頂広場に達すると東側の兵庫の山々が視界に飛び込むが残念ながら山が全く分からない。北側にはススキの原越しに後山から駒ノ尾山への稜線と同時に後山に至る尾根を眺望する。後山に至るには志引峠まで大きく高度を下げ、そこから再び700mほど登らなければならない。時計の針は既に15時を過ぎている。明るいうちに山頂にたどり着くことは到底無理であることを再認識するのであった。
日和倉山から北斜面を下ろうとして登山路を探すのだが踏み跡が全く見当たらない。ススキの藪を漕いでススキの原を抜けると突然、下草のない広葉樹林の尾根となるが、尾根筋はかなりの急下降である。やがて植林帯に入ると左手の斜面の林道から伸びてくる踏み跡に先ほどの「走路」と書かれたトレランの道標が現れる。まもなく尾根はなだらかになるが、志引峠に出るまでが意外と長い。
志引峠についた時には陽が傾き初めていた。これまで昼食も取らずに歩き続けてきたことに気がつく。行動食で腹ごしらえをするといよいよ登りに取り掛かる。地図から読み取れるようにのっけからかなりの急登が始まる。尾根の樹林の中は藪はなく歩きやすいが、薄い踏み跡は尾根を直登するので勾配が急である。
植林地の二重山稜を下り上乢に辿りつく、植林地を抜けるとその先に明るく黄色に輝く樹林が見える。西陽を受けて輝く黄葉の樹林であった。しかし陽が落ちると急速にあたりは暗くなってゆく。尾根の上部になるとようやく勾配が緩くなり笹原が広がるようになる。いつしか登山道の周囲には山毛欅の樹が目立つようになるが既にあたりはかなり暗い。気がつくと東の空の高いところで月が煌々と明かりを放ち始める。秘かに月明かりの明るさを期待していたのだった。
後山にたどり着いたのは丁度18時であった。遠くに佐用の街の灯りが見える。ここからは広くなだらかな尾根を西に辿る。笹原の尾根道は広く刈払いがされており、ヘッドライトの明かりを消しても月明かりで十分に足元は明るく、夜間歩行とはいえ安心感がある。
駒ノ尾山の避難小屋にたどり着いたのは19時をかなり回っていた。ビールで乾杯するとまずは焼肉を愉しむ。後半はすき焼鍋である。持参した日本酒、東一の純米吟醸を空けると瞬く間に眠りに落ちていくのであった。
【二日目】
明け方に目が醒めると既に月は西に沈み、満天の星空が広がっている。用意を整えて駒ノ尾山に向かうとスイッチを入れたかのように急速にあたりは明るくなってゆく。駒ノ尾山から播備国境尾根を北に辿ると山毛欅の美しい回廊が歓迎してくれる。
登山路は大海里山の山頂を避けて西側の斜面をトラバースするようだが、ここは迷わず尾根芯を辿り山頂を目指す。既に落葉した広葉樹林を抜けると低木の見晴らしの良い尾根に出る。振り返るとススキの原越しに駒ノ尾山のなだらかな稜線が見える。
最後のピーク、ダルガ峰へは紅葉が美しい自然林の中を辿る。山頂は展望のない小さな広場であった。山頂からはなだらかな西側のススキの原を降り、ダルガ峰林道へと至る。最後は大茅のスキー場を目指して杉林の中を下る。
大茅スキー場に下り、あわくらのタクシー会社へと電話する。しかしタクシー会社は既に営業を休止したとのこと。大茅スキー場からあわくら温泉までだと1時間くらいですよと電話口から聞こえてくる。1時間歩いても次の汽車にはかなり時間お余裕がある。駅前には酒屋があり、人の姿は見えなかった、店の前の自動販売機でビールを手に入れ、汽車が到着するまでの間に乾杯である。
岡山駅にたどり着くと岡山マラソン前日ということで多くの人で賑わっている。この岡山マラソンは前日までにエントリーして、ゼッケンを受け取らなくてはならないらしい。岡山駅でリュックを入れるコインロッカーを探すと、コインロッカーを数ヶ所探したが、大型のロッカーはおろか小型のものに至るまで完全に塞がっている。仕方なく出張会場までリュックを担いで行くことを余儀なくされるのだった。
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