横山岳☆新雪の藪を越えて大展望の尾根に
- GPS
- 06:20
- 距離
- 11.0km
- 登り
- 1,169m
- 下り
- 1,205m
コースタイム
- 山行
- 5:49
- 休憩
- 0:31
- 合計
- 6:20
天候 | 曇り時々晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
下山は杉野農協前へ |
コース状況/ 危険箇所等 |
標高900mを超えたあたりから膝下までのラッセル。 三高尾根の下りは雪が薄くなったあたりでは尾根の急下降はかなり滑りやすい。 |
写真
感想
1月も終わりになって、ようやく京都や滋賀の山々にも冠雪した。京都に初雪が降ったのは観測史上、最も遅いらしい。山行先を思案するが、前日に谷山から安蔵山にかけての稜線から眺めた横山岳の銀嶺が瞼の裏側に焼き付いたままだ。二日連続の湖北になるが、横山岳に・・・。まずは久しく新雪のラッセルから遠ざかっていたこともあり、自分のラッセルのスピードを確かめるという目的もあった。
横山岳に向かうのであれば金居原から東峰を経て、墓谷山を周回するコースにしようと思っていたのでこの日は長浜行きの琵琶湖線から北陸本線に乗り継ぐ。米原を過ぎると右手の車窓からは冠雪した伊吹山の姿を大きく望む。何かのスポーツの大会があるらしく、車内はジャージを着た女子高生達で溢れかえっている。後ろの座席の女子高生が伊吹山に気がついたらしく、それまでの会話を遮って「伊吹山が白くなってるやん、私、雪の伊吹山が好きやわ〜」。御意である。隣の女の子は「あれ、伊吹山なん」と感心したのか白けたのか分からなかったが、登山者でなくとも冠雪した伊吹山の姿を待ち望んでいた人は多いだろう。
列車が北上するにつれ、一段と白い金糞岳、そして横山岳の姿が目に入る。昨日も湖北の山を登っているが、朝には着雪していた周囲の山々も夕方にはすっかり雪を失ってしまっていたのだが、横山岳や金糞岳は昨日の朝に見た時のままに純白の山肌を見せている。湖北の山々の上には淡墨を流したような真冬の雲が広がってはいるが、雲の間から差し込む朝日を受けて山肌が白銀に輝くのを見ると、一刻でも早く山に入りたいと心が逸るのだった。
木ノ本駅ではリュックにスノーシューを括り付けた単独行の男性と一緒になる。やはり金居原行きの湖国バスに乗って横山岳を目指されるようだ。下山は東尾根を下る予定らしい。余呉トレイルクラブ主催の湖北の山行によく参加されておられるようで、湖北の山々にお詳しい。お話をお伺いしているうちにバスを待つ時間が短く感じられる。
?を過ぎると、バスの車窓からは再び白銀に輝く横山岳の姿が見える。車内から窓越しに横山岳の姿を写真に収めようとしてカメラを取り出した途端、レンズ・フィルターの奥でレンズの表面が曇っていることに気がついた。昨日、雪で湿ったカメラ・カバーをつけたまま朝まで車の中にカメラを放置してしまったのが悪かった。これまでも何度か試したがレンズ・フィルターを外すことが出来ない。いつもはもう一台、コンデジを携行しているのだが、この日に限ってコンデジを取り出して来てしまったことも悔やまれる。
バスの終点、金居原で降りるともう一人の登山者と共に車道を歩き始める。登山道が杉の植林地へと入っていくところで、失礼して先に行かせていただく。植林地はすぐにも終わり、明るい自然林の尾根が始まるとすぐにも雪が繋がるようになる。
Ca?m手前の手前の急登を登るとユズリハの藪であった。どうやらルート・ロスしていたらしい。しかしユズリハの藪はさほど密集しているようには思われない。すぐ先の目の前には進むべき尾根が見えているので、ユズリハの藪の中を直進すると、すぐにも左手から登ってくる登山道と合流する。登山道はどうやらこのユズリハの藪を迂回するようにつけられていたようだ。
横山岳東峰からの東尾根に乗ると積雪が深くなる。小さな鞍部でスノーシューを装着する。早速にも山毛欅の林が始まる。樹林の切れ目からは右手には土倉岳から猫ヶ洞を経て神又峰へと続いてゆく江美国境稜線の山々の眺望が開ける。
山毛欅の林を緩やかに登って行くと尾根が広がったところで間には小さな池が現れる。夜叉ヶ妹池だ。もう少し積雪が多かったら完全に雪の下に埋もれてしまうところであったが、結氷した薄鼠色の水面を見せる池は雪の中で微睡む瞳のようだ。池の眠りを妨げないように池のほとりを静かに周回し、先へと進む。
尾根はますます広くなり、すぐにも先ほどの池よりも一回り大きな池が現れる。今度は姉上の夜叉ヶ池だ。鼠色の水面に伸びる山毛欅の長いシルエットと新雪が美しいモノクロームのコントラストを呈する。気がつく空には蒼穹が大きく広がっている。
東尾根登山道と合流すると、山毛欅の林はますます樹高が高くなり、壮麗である。昨日に辿った谷山から安蔵山にかけての稜線においても壮麗な山毛欅の林に圧倒されそうになるが、こちらの山毛欅林も相当なものである。
昨日、谷山で標高が900mを少し超えたあたりから急に積雪が深くなったのだが、やはりこの尾根においてもそれは同様であった。スノーシューを履いていても膝近くまでのラッセルとなり、吹き溜まりではそれ以上だ。久しぶりの本格的なラッセルはやはり時間を要し、早くも両脚に疲労を感じ始める。
標高がca1080mのあたりで、山毛欅の樹林が唐突に切れて、小高い隆起に登り詰めると一気に大展望が飛び込んでくる。純白の白山を奥座に戴き、重畳とした山並み、左千方の右手には三周ヶ岳から先に連なる越美国境の山々、右手に目を向けると御嶽山とその右手に中央アルプスの山々、さらにその右では恵那山のシルエットの左に南アルプスの山々も見える。一眼レフがここで役に立たないのがなんとも残念だ。
この好展望地で行動食をほうばりながらしばし眺望を楽しむ。ここからは東峰にかけて樹林の中へと入って行く。予想はしてはいたが、昨日の谷山や安蔵山と同様、雪の重みで垂れ下がったリョウブやヒメシャラの低木が登山道を塞いでいる。雪が多いせいか、この東尾根の方が雪によりにわかに生じた藪がひどく、何箇所かで尾根芯を進むことを諦めて南斜面をトラバースする。
東峰のピークに達するとここでも再び東の方角への大展望が広がる。いよいよ、本峰への吊尾根へと入る。こちらも純白の雪の尾根からは南北にかけてパノラマが広がる。滑らかな雪の上には鹿の足跡による一筋のトレースがつけられている。
横山岳の山頂ではカップヌードルで2回目のランチ休憩をとる。ここまでの展望尾根に比べるとこの山頂からの琵琶湖の展望はなんとも狭隘に感じられるが、
下山は三高尾根の急下降を下る。暖かい気温のせいで雪がかなり緩み始めている。東尾根とは対照的に尾根を下るとみるみるうちに積雪が浅くなってゆく。南斜面のせいで雪の積もり方も違うのだろう。
山頂直下の急下降が終わるとしばらくはなだらかな自然林の尾根が続く。ca800mあたりで尾根上には突然踏み跡が現れる。その靴の後は見覚えがある。昨日、尾羽梨林道で見かけた猟師の履いていたものと全く同じだ。足跡は尾根筋から斜面へと消えている。
鳥越峠にかけての急下降が始まると斜面からは急に雪がなくなる。溶けた雪のせいで斜面の泥濘みが酷い。ここで面倒臭がらずにチェーンスパイクを取り出せばよかったのだが、墓谷山への登り返しで再びスノーシューを使うだろうと思っていたので、そのまま下る。
鳥越峠に下ると車が二台、停められている。一台は四駆のRV車で、もう一台は軽トラックだ。網谷林道を登って来られたのだろう。林道には雪は全く見当たらない。バズーカ砲のような大型の望遠カメラが西側に向けられている。カメラの先には形良く並ぶ七頭ヶ岳、妙理山、大黒山が目に入る。バードウオッチングに来られたという男性が少し前に「猟師さんが登って行きましたけど会いませんでしたか?」と云う。やはり猟師のものであった。
墓谷山に登りかえす。墓谷山の北斜面には再び雪が現れることを期待したが、雪が繋がったのは山頂がかなり近づいてからであった。山頂が近づくと西側から植林が登ってくる。山頂からは北にわずかに横山岳を望むが、それが墓谷山からの唯一の展望だったかもしれない。
墓谷山からの下りは随所に真新しいロープがつけられており、途端に道が良好に整備されている。植林地に入ると尾根の斜度も緩やかになり、下りやすい。植林地の中には小さなお堂が現れる。南けい寺の跡であり、今はわずかにこの観音堂がかつてこの地に栄えた寺院の栄華を偲ぶよすがとなっている。
御神木とされる大きな杉の木を通り過ぎるとまもなく杉野の集落の奥に出た。バス停にたどり着くと木ノ本の駅に向かうバスの時間までは1時間ほど待たねばならない。バスが到着すると乗っているのは朝に一緒だった単独行の男性であった。
東尾根から降りた林道沿いには多くのフキノトウが咲いていたとのこと。まだ二月もはじまったばかりだというのに。昨年、美濃俣丸から笹ヶ峰への山行後の林道でフキノトウを摘んだのは三月も半ばのことだった。
バスが木ノ本の駅に到着し、駅の物産品売り場にはとれたてのフキノトウが数多く売られている。はたしてこの時期にこんなに蕗を手に入れてよいものだろうかと思いながらも、京都に帰宅し、久しぶりに蕗味噌を調理すると、なんとも良い蕗の薫が鍋から立ち上るのだった。
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