飯豊連峰 ダイグラ尾根
- GPS
- --:--
- 距離
- 29.0km
- 登り
- 2,722m
- 下り
- 2,726m
コースタイム
7:00飯豊山荘-7:30桧山沢吊り橋-9:30休場ノ峰-10:50千本峰-12:50宝珠山-14:30本山-15:30御西小屋
【10月21日】
7:00御西小屋-9:00梅花皮小屋-10:20門内小屋-10:50梶川尾根分岐-13:30飯豊山荘
天候 | 10月20日:晴れ 10月21日:稜線上は雨あられ、麓側は曇り時々雨 |
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過去天気図(気象庁) | 2012年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
○桧山沢の渡渉 桧山沢の吊り橋は雪害により損傷しており、利用不可。 これから冬を迎える事より、今季修繕の見込みはなく、来期に関しても修繕の明確な時期は決まっていないそうです。 その為、尾根に取り付くには沢を渡渉しなければなりません。 この日の水位は膝上程度でしたが、これでも水位は低い方。 増水したら渡渉不可能になる沢ですので、下山利用は危険。 下山時に増水していた場合、進退極まる状況になります。 あくまでも登り限定で、無理そうであれば引き返す心構えで臨んで下さい。 (今季にダイグラを登る人はもう居ないとは思いますが・・・) 渡渉点は、吊り橋の上流側。 ゴルジュ手前辺りが最も楽に渡れると思いますが、あくまでも自己責任で。 基本的には、渡渉はオススメできない沢です。 渡渉後は藪漕ぎを経て登山道に出ますが、そのまま沢岸を進むより、 一旦山側に登ってから登山道方面へ向かうとスムーズに抜けられます。 その途上に獣道のような荒れた道がありますが、登山道ではありませんので、間違って登らないように。 獣道を下って行けば、登山道と合流します。 ○ダイグラ尾根 飯豊連峰では最も険しい登山道。 危険箇所は多数ありますが、ルート上にロープや梯子は一切設置されておらず。 初心者が入ったらトラウマになりそうな登山道なので、あくまでも上級者向け。 長丁場のルートですが、途中に山小屋やエスケープルートは無し。 一旦入ったら、その日の内に本山まで到達しなければならないので、体力も必要です。 テントを張れるような広いスペースは皆無なので、ビバークの可能性を考えるのであれば、ツェルト持参を薦めます。 今年は吊り橋が利用できない、とあって利用者はかなり少ない模様。 その為、宝珠山周辺は明瞭な踏み跡が無く、正ルートを見極めるのは困難な状況でした。 わずかに踏み跡が残っているような場所もありますが、間違った踏み跡もいくつかあります。 今回、そこで一部ルートミスをしてしまった為、やや危うい登攀を強いられましたが、 正ルート通りに進めば技術的に困難な箇所は無いので、道を見失わないようにして下さい。 ○飯豊主稜線 10月21日の稜線は、あられ混じりの雨。 風は冷たく強風吹き荒れ、体感的には真冬並み。(日中気温:3℃位) 鳥帽子岳〜梅花皮小屋間は、風下側が切れ落ちている箇所があり、 強風下の通過は難航しました。 これからの稜線歩きには、冬を想定した風防/防寒着が必要です。 降雪もありえますので、天候には御注意を。 (本山には降雪の跡がありました。) |
写真
感想
今年、5度目となる飯豊登山。
時期的に今年最後になるかもしれない今回は、登山ルートにダイグラ尾根を選んだ。
ダイグラ尾根は、毎年この時期になると欠かさず訪れているルート。
長丁場の険しいルートであり、これまでは下り専門で利用していたが、
今季は尾根取り付きの吊り橋が損傷した為、下山利用は不可。
それなら登りで利用しよう、と考えて、初のダイグラ尾根登りを試みる。
初日はダイグラの登りで長時間の登山、かつ入山者も少ない状況なので登山道の状況は不明。
思わぬトラブルに遭遇する事もあり得るので、時間に余裕を持たせたい。
早出が基本で、いつものような寝坊は許されず。
その為、金曜の夜に移動し、小国の道の駅にて車中泊。
そして、翌日の早朝、登山口の飯豊山荘に到着した。
飯豊登山には厳しい時期になってきた為か、登山口の駐車場に車両は少ない。
数えてみると5台しか無く、登山者はめっきり減ったようだ。
7時に飯豊山荘を出発し、ダイグラ尾根方面へと向かう。
林道を進み、玉川沿いの登山道に入ったところで、こちらに向かってくる登山者に出合った。
話を聞いてみると、ダイグラを登る予定だったが沢の渡渉に難色を示し引き返すとの事。
どうやら、桧木沢の渡渉を飛び石を渡る程度、と考えていたらしい。
しかし、水に濡れずに進むのは不可能であることが見て判り、諦めたそうだ。
「あなたはどうするのですか?」
と、その登山者に質問されて、
「もちろん、濡れる覚悟です。」
と、威勢を見せる私。
・・・ウソである。またつまらぬ見栄を張ってしまった。
この時期の冷たい水に素足を入れるような根性は無い。
濡れないように防水対策を施した上で渡渉するつもりだ。
その登山者と別れて先を進み、やがて吊り橋に到着。
更にその上流側へと進み、渡渉点を探る。
沢の流れは穏やかで、水位も低い。
念の為、ロープも持参していたが、使わずとも渡渉は十分可能そうだった。
早速、渡渉準備に取り掛かる。
防水パンツを履き、更に沢登りで使用している防水ソックスを履いた後は、
パンツとソックスの継ぎ目をテーピングでシールする。
足にはゴムサンダルを履いて、渡渉準備完了。
だが、いきなり本番は危険だ。
まずは荷物を背負わず身軽な状態で沢に入って様子を見る。
防水のお陰で水に濡れる事はなく、冷たさは全く感じない。
水位は深い所で膝の上程度と、問題なし。
よし、行けるな。
一度対岸を往復し、安全確認した後で、荷物を背負って再び沢を渡る。
渡渉を終えた後は藪漕ぎ。
一旦、山側へ5m程度登って、その後は沢に沿って下流側へ進む。
しばらく進むと獣道のような荒れた道に出て、その道を下ったところで登山道と合流した。
渡渉開始から登山道に至るまでの時間は30分程度。
予定通りに渡渉を終えて安心したところで登山道を進んで行く。
そして、長く険しいダイグラ登りが始まった。
9時30分、休場ノ峰に到着。
延々と急登が続いた為か、ここで早くもシャリバテ気味。
休場ノ峰以降はザックを降ろしてゆっくり休めるような場所は殆ど無いので、ここで昼食を取った。
この峰は眺望に優れ、ノコギリの歯のようなダイグラの峰が一望できる。
白骨化した針葉樹が印象的な千本峰、そして奥に見える双耳峰のような宝珠山。
本山はまだ遥か彼方で見えないが、登頂意欲を掻き立てられる尾根の絶景が目の前に広がり、食が進む。
ここまででも十分な登山量であるが、まだ行程は半分にも満たず。
言わばウォーミングアップみたいなもので、ここから先がダイグラ尾根の真骨頂。
アップダウンの激しい道が続き、難所が続く。
十分な休憩を取った上で、先へと進んだ。
急な登下降、
切れ落ちたトラバース、
幾つもの難所が続き、中には一般登山道とは思えないような箇所も現れる。
一つ一つの難所を見れば、それほど難しくは無いが、その数があまりに多い。
千本峰を越えて、1499mピークを通過、そして宝珠山。
ピークを越える度に道は過酷になっていき、体力や精神力を試されているような感を覚える。
宝珠山手前に差し掛かったところで道は草に覆われ、一部不明瞭になった。
例年であれば、明確な踏み跡が付いているので、これまで道に迷った事はないのだが・・・
今年は吊り橋が使えない為、入山者は少なく道は荒れている。
登山道上は草で覆われており、正ルートが判別しにくい。
わずかではあるが入山者は居るようで、微かな草の踏み跡が残っている場所もある。
しかし、間違った方向に進んでいるものも幾つか見受けられ、あまり信用できない。
宝珠の肩までは迷わず到着出来たのだが、その先への宝珠山頂上へと続く道にて、ルートを見失う。
間違いトレースに、うっかり引っ掛かってしまったのだ。
すぐに正ルートは見つかったが、復帰するには急斜の草付き部をトラバースしなければならず、厳しい登攀を強いられた。
宝珠山を越えた先でも、まだ難所は続く。
草が密集していて足場となる岩が見えなくなっているような箇所もあり、例年以上の難しさを感じさせる。
手足をフルに活用し、時には草を掴んで支点とし、先へと進んでいく。
その道は緊張を感じさせ続けるが、この緊張は心地よい。
張り過ぎず、緩過ぎず、程良い程度の緊張感。
山を登っている、という事を強く意識させる。
やがて宝珠山を越え、あとは本山前に立ち塞がる最後のピークを残すのみとなった。
この最終ピークは穏やかな山容であり、その途上に難所は無い。
夏であれば山の斜面に花が咲き乱れている事もあり、険しいダイグラ尾根らしからぬ優しいピークだ。
最後に見せるダイグラの優しさ、と言ったところだろうか。
この先には、もう危険な箇所は無く、核心部的な存在であった宝珠山を越えた事で安心し、
しばらく寛ぎ周囲の景色を眺める。
主稜線の方に目を向ければ、本山-駒形山間の緩やかな稜線上を2人の登山者が歩いていた。
本山頂上にも、2人の登山者の姿が見える。
ダイグラ尾根上では全く人に出合わなかったせいか、久々に人の姿を見たような気がした。
その穏やかな光景は、これまで歩いてきたダイグラ尾根の険しさとは対照的に見える。
…それにしても寒い。
稜線上から吹き付ける西風は、冬の寒さを思わせる。
もう少し眺望を楽しみたい気持ちであったが、風に急かされ先を行く。
14時30分、本山頂上に到着。
コースタイムは7時間30分。
10時間はかかる、と見込んでいたが予想以上に早く着いた。
以前、ダイグラを下りで利用した時は本山から飯豊山荘まで7時間はかかったのだが…
ダイグラ尾根はそのアップダウンの激しさから、登りも下りも所要時間はあまり変わらないようだ。
十分に頂上からの眺めを堪能した所で、本山を後にする。
では、また来年。
本山、そしてダイグラ尾根の雄姿を最後に一目見て、
御西小屋へ向かって、稜線上を歩いてゆく。
Luskeさんこんばんは
実は僕もこの週は少し遠出したくて飯豊を考えていました
でも日曜日のお天気が絶望的でしたから、船形の日帰りにしたのでした。
飯豊の登山者情報をチェックしていましたが、やはりまだ修理されていなかったのですね。
今期はどれぐらいの人がこの尾根を利用したのだろうと思いました
来期もこのままだとかなりマニアックなルートになりつつあるかもしれませんね。
僕が歩いたときは雪が着いていたので、本当のダイグラ尾根の山のカタチをじっくり眺めるのは初めててです
その行程の厳しさからか、ネットで検索しても詳細な報告は少ないですからね。
でもLuskeさんの写真を拝見すると、千本峰から宝珠山にかけての核心部、その厳しい山行が蘇ってきましたよ
僕もやはりトラバースが最も恐かったです
すぐ横の雪庇がいつ大崩壊しても(というか目の前で何度か崩壊しましたが)おかしくなかったですからね
Luskeさんの感想に痺れました
>その道は緊張を感じさせ続けるが、この緊張は心地よい。
>張り過ぎず、緩過ぎず、程良い程度の緊張感。
>山を登っている、という事を強く意識させる。
こういう気持ちになるルートはそんなに多くは無いでしょう。
このセンテンス‥僕も同感です
私も日曜日はヤバそうだなぁ・・・
とは思ってましたが、雪が降る前にダイグラに登れるのはこの日が最後と考え、決行しました。
お陰でダイグラの充実した登山を満喫できましたが、
翌日の日曜日はレコの通り・・・
2日連続のハードな登山になりました
宝珠山、厳しいですね〜
tooleさんの記録に触発されて、もしこの道に雪が付いたらどうなるだろう?と脳内シミュレーションしながら登ったのですが、出た結論は、
「ロープ無しでは無理><」でした。
緊張の糸が張り過ぎて切れてしまいそうですw
それにしても、よく積雪の中、ここを通られたものです。
tooleさんの記録に、あらためて敬意を覚えた次第です。
飯豊連峰の中で一番好きな登山道は、石転び沢ですが、
一番思い入れのある登山道は、このダイグラ尾根です。
険しいこの尾根を歩く度に、
なぜ、山に登るのか?
なぜ、単独行なのか?
そして、自分が求める理想の登山とは?
そんな登山者の永遠の命題の答えが、
おぼろげながら見えてくるような気がします。
まだ明確な答えは見えてこないので、これからもダイグラには通い続ける事でしょう
あ、でも夏は勘弁。
猛暑の中、あの尾根を上り詰める自信はありませんので
Luskeさん、こんばんは。
無事の下山お疲れ様でした。
2日目の天気は残念でしたが、紅葉は一番良い時だったのではないでしょうか。
今回も綺麗な写真ありがとうございます。
ダイグラ尾根、Luskeさんのレコでなかなか大変な所と思っていましたが、かなりの難所 ・・・ですね。
自分では歯が立ちませんがいつかは登ってみたい所です。
一番危険なトラバースの所は岩、土、小石でしょうか?
濡れているとかなり危険そうです。
今回は安全についてあらためて参考になりました。
えーい、行っちゃえ〜は怪我のもと、なんだなと。
今更ですけど・・・。
残りのシーズン、その事を考えながら登ります。
2日目は残念でしたが、1日目のダイグラ登りは素晴らしい紅葉景色に恵まれました
でも、危険箇所が多いので、紅葉を眺めながらのんびり歩く、というワケにはいかないのが辛いところです。
ダイグラ尾根は東北のみならず、国内一般登山道の中でも、かなり険しい部類に入ると思います。
真夏のダイグラ尾根は3000m級の山に登るよりも辛い、なんて言う人もおり、侮れない登山道であります。
雨の日は非常に危険で、雨天時に立ち入る勇気はありませぬ…
写真のトラバースで危険に思えるのは土の部分で、雨で地盤が緩んでいたら、と思うとぞっとします
道中は危険箇所が多いので、それに慣れてしまい、つい大胆な行動をとってしまう事もしばしば。
そんな時に事故は起こるのですなぁ・・・
お互い、初心を忘れず安全な登山を心がけましょう
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