奥久慈男体山 下山は弘法堂経由
- GPS
- 05:53
- 距離
- 15.3km
- 登り
- 1,048m
- 下り
- 1,043m
コースタイム
- 山行
- 5:24
- 休憩
- 0:31
- 合計
- 5:55
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
大円地駐車場は駐車禁止です。 大円地からのアクセスは登山道崩落により通行止めです。滝倉登山口を使うことになりますが、滝倉登山口周辺に合計8-10台くらい駐車可能です。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
滝倉尾根のコースは途中岩場のトラバースがあり危険です。また踏み跡は明瞭ですがまぎれも多いところです。道迷いを避けるためのペンキマークがありますので活用してます。 一般コースの序盤をはじめ、赤土が露出している箇所は雨上がりの際には油を引いたように滑るので、用心して歩きます。 健脚コースは濡れていると大変危険です。特に鎖場の鎖が濡れている場合、鎖を持っていても滑落を止められない場合があるので脚の置き場所に用心します。 |
写真
装備
備考 | 雨具、GPS(スマホ)、モバイルバッテリー、デジカメ、デジカメ予備電池、マスク(花粉症対策でもあります)、絆創膏、痛み止め、日焼け止め、水、行動食 |
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感想
一週間前の霧と雲海の奥久慈の山々とは打って変わってすっきりとした緑のみずみずしい景色を楽しんだ。頂上稜線のニッコウキスゲに期待していたが今回は不発であった。ずっと気温が低めで来ているせいかもしれない。また序盤の圧倒的な銀河をたたえた星空はサプライズだった。
(以下自分用のメモ 長文注意)
■山が逃げるのではない。自分の持ち時間が逃げるのだ。
県内移動自粛も解除されたし、まだ山に行きたいという気力とと体力が残っているときには山へ行こう。「好山病」「行山病」とは良く言ったものである。まして自分は年のせいでむやみな夜更かしが出来ない(ただし徹夜ハイキングは除く)。今回は前回の遅めの歩き始めを反省して、さらに早めのスタートを決め込んだ。前回遅めって前回も午前3時過ぎなんですけれど。いやいやこの季節は薄明が早い。3時台はすでに空が明るくなり始める。それは毎朝自分が寝室、兼居間、兼書斎の部屋で毎朝経験していることではないか。目覚ましなどかけなくても、カーテン越しに入ってくるぼんやりした光と、それに呼応するように鳴き出す鳥の声で3時台には目が覚めている。無論9時過ぎに床に就くのが前提ではある。
かくして1時台、先週に続いて起床とほとんど同時に、朝食もそこそこで車に乗った。濃霧に慎重になった前回であったが、今夜のドライブは霧に悩まされることも無く、快適に走ることが出来た。八神純子の「夢見る頃を過ぎても」を聞き終えるころに西金駅に到着するといういつものパターン。
■銀河の向こうに
恒例により西金駅の駐車場に車を停めた。ヘッドランプを消灯して車から降りると息を呑んだ。銀河が空を覆い尽くしている。曇っているのかといぶかってしまったが、確かに星空であった。カシオペアが銀河の淵の中に輝いてきていた。通常夜間出発は夜明けまでの辛抱ということになるのだが、今回はまもなくやってくる薄明を惜しむようにうきうきしながらの歩き出しとなった。ヘッドランプを点けなくても歩けてしまう。北アルプスの稜線、裏高尾の遊歩道と同じ僥倖にあずかった。おもわず「銀河の向こうに飛んでゆけ」と上条恒彦と六文銭の「旅立ちの歌」のさびの部分が口から出てきた。さびの部分が出ると、冒頭から歌いたくなるのだが、節はわかるが正確な歌詞が思い出せない。「むにゃむにゃ。。。なにだぁ」等と歌いながら登山口を目指した。「誰かが風の中で」なら歌えるのだが、、、。先週に続いて吐く息が白かった。初夏なのに吐く息が白いというのが面白かった。
■星を溶かした薄明の中に稜線が現れる
いつまでも銀河を見ていたいけれども、林道も後半に入ると青紫の薄明の中に星はどんどん溶けていく。でもそれは悪いことばかりではない。ほら、桐原商店が遠望できる箇所にやってきた。桐原商店は寂しい街灯を除けばまだ闇の中だが、その闇の向こうに盟主男体山がそのシルエットを現している。入道岩、鷹取岩をはじめとして奥久慈岩稜もシルエットを現した。蛙の大合唱が鳥の大合唱に切り替わりつつある。
林道崩落の修復はまだ期待できないから、大円地登山口は通過した。滝倉トンネルをくぐった先で滝倉尾根に乗って、木製の鳥居に手を合わせて登山を開始した。さすがに樹林帯の中はヘッドランプ頼りだ。雨上がりではないものの足元は枯葉で滑るし、滝倉エリア独特の無数のけものみちの紛れがあり、うっかりすると道迷いしてしまう。ペンキマークを追い、ぜいぜい言いながら一気に高度を上げた。一渡り高度を上げたところで樹林が切れる箇所があり、雲海に眠る大子町方面をちらりと覗いて心躍らせながら、滝倉尾根の筋を快適に通過した。しかしやっぱり分岐点直前のトラバースだけは慎重にならざるを得ない。今回はハイキングシューズではなく冬用のジョギングシューズなるものを履いてきた。ゴアテクス使用で靴底は雪道に強いような材質を使ってある。男体山の岩場でどんな仕事をしてくれるか期待した。岩には強そうだが、濡れているところはそれなりに滑るようだった。
危険地帯を慎重に通過すると、巻くか尾根筋か迷う箇所がある。どちらを選んでもすぐに分岐点に到着する。前回の山行きで崩落箇所は一般コースないであることがわかったので、気分的にはやや辛いが、滝倉分岐から健脚コースをいったん健脚・一般分岐点まで下山した後、一般コースを登り返すことにした。
もうヘッドランプはいらないものの、樹林帯はかなり暗い。斜度も高い。岩場のクライムダウンもありと地味な割には厳しい。滝倉尾根の危険なトラバースほどの恐怖はないのだけれども、二足歩行は難しい箇所が続く。四足歩行の世界へようこそとばかりに、谷の先を獣が疾走する藪のざわめきが聞こえる。道なき道の感があるトラバースを過ぎると、筆者にとってはおなじみの緑のトンネルが現れた。あれを過ぎると茶畑に飛び出して、普段なら登山のゴールということになる。ただし、本当に茶畑に飛び出す前にスリップしやすい土が露出しているので要注意だ。
茶畑に飛び出した。本格的な日の出にはまだいくばくか時間があるが、薄暗い樹林帯を抜けた目に飛び込んでくる緑はおいしい。大円地越方面の前衛峰、鷹取岩方面の岩峰を覆っている潅木の緑たち。そして当然ながら鼻から肺までを満たす草木の香り、早朝登山のごほうびである。
今回も木道の崩落を前提に茶畑から分岐点までの木道を見直してみると、かなり危ない状態になっている。適宜補修してくださっているけれども、今回すでに一箇所穴が開いていた。木道全体もくたびれた感じがしていたし、去年は一般コースへの取り付きの橋、橋であることを忘れるほど草木と土に覆われていた橋が落ちたが、木道自体もそろそろ崩れ落ちるかもしれない。慎重というよりも運を天に任せて健脚・一般分岐まで下山した。
■まず大円地越を目指す
根気の要る下山を経て、いつもの一般コースの取り付きまでやってきた。また暗い樹林帯に飛び込むのだ。飛び込むといきなり滑りやすい関東ローム層、赤土の道が待っている。いつかの山行記録ではこの赤土の道を下山で通らなくていいことに感謝したいなどと書いたこともあったのに、忘れていた。いきなり油を敷いたような登山道に何度も手を付きながら序盤の危険箇所をを通過した。ここは杉林なので、道の両側にある杉の木の枝(枯れ枝)を足元にまきながら歩いていけば滑らないのではないか。
この先に、今度は元々木の階段を支えていたであろう鉄杭が、階段が朽ち果てて杭だけ露出している箇所がある。赤テープで存在を警告しているものもあるのだが、そうでないものもあるので、つまづいて大怪我しないように気をつけなければ。この鉄杭を通過すれば、罠はない。じわじわと高度を上げていく。健脚コースみたいにあっという間に歩ききるのではなく、じわじわというところが脚に心地よい。そしてじわじわ歩きながら左右、足元の草木を眺める。右手に巨大岩壁が見えるのを待ちつつ、根気良く歩いていく。そこはイロハモミジの谷。秋の紅葉もいいけれども、薄い若葉を透かして緑の光線が谷間を満たすこの季節も良い。そして崖を見るととても手に負えるものではないけれどもわくわくしてくる。この精神の高揚を楽しむと、大円地越直前の山場(谷場?)の小さな沢を通過する。枯れていることも多い沢であるが、今回は水が流れていた。とはいっても靴の中を濡らすことを心配するほどではない。沢を通過してひと巻きすると、すがすがしい大円地越に到着した。気温16度。前々前回、12月に来たときに、朝6時過ぎの大円地越の気温が15度だった。いかに暖冬だったかがわかる。
■快適な頂上稜線
大円地越から頂上稜線は首が痛くなるほど見上げていたい。下枝の少ないスリムなケヤキが峠と、頂上稜線へかけての急斜面にぱらぱらと立ち並んでいる。真っ直ぐでセクシーな幹が無数の矢のように空に向かっており、その先には若々しい緑の天井がある。まるで緑の天井を支えている柱のようだ。ここでお茶でもしたらどんなにさわやかだろうと思いつつ、体はどんどん頂上を目指してしまう。急斜面をぐいぐい高度を上げていく。峠から見上げている時の感覚とは異なり、高度は一気に上がる。そして少しずつ岩稜の気配が出る。その岩場を靴底の摩擦を利かせて器用に攀じていくところが楽しいと思ったところで頂上稜線へ飛び出すのだ。5時を過ぎ、もう本格的に朝日が昇り始めた。大円地越のケヤキ林は緑と金色の贅沢なコントラストを帯びはじめた。
左手に見える大円地越に別れを告げて頂上稜線からいったん土つき斜面を下る。そこの主であるブナの巨木は存在感がある。下ったかと思うと登り返しなのだが、ここから眺望が一気に開ける。今朝の正面岩壁はすでに金色に白熱しはじめていた。一年で一番日の長い季節に、赤銅色に鈍く光る夜明けの正面岩壁を見るためにはもう1時間早く出ないとならないか。いっそ大円地越に前日泊かなどと妄想しつつ、ちょっとした岩場を気持ちよく攀じ、頂上に到着した。奥久慈の山並みがきれいに見える。先週と異なって霧や雲海はかなり控えめだった。滝倉尾根で見た雲海は晴れていた。晴れながらも、ところどころ谷間をうずめたり、小ピークを取り囲んだりと、新緑のみずみずしさに変化を添えていた。そして前々前回発見した朝日に映える男体山のシルエットを大子町方面にくっきりと確認した。
この季節のお楽しみは頂上稜線に咲くニッコウキスゲなのだが、今回は不発だった。5月の気温がやや低めだったせいで、生育が遅れていたのかも入れない。祠でさわやかな山歩きに感謝し、後半のクライムダウンへ挑むことにした。
■靴底は良く岩を噛んだ
あずまやで人心地付いてから、ぱっくりと口を開けている健脚コースの谷間へ降りていった。前回は水が流れているような状態で、鎖に頼ってもなお滑るという状態だった。今週も樹林帯は結構湿っていたから心配しながら始めたクライムダウンだったが、いざ足を置いてみると快適だった。靴底の摩擦は良く効いて、この斜度で手を付かなくても平気なの?と思うようなところで両手を離すことが出来た。これなら快適に降りていくことができるだろう。しかしすたすた歩けるわけではなく、岩場での足の使い方にちょっとしたパズルをしなければならない。核心部分は心持ちオーバーハングになっている岩を越えてその下の土つきに降りるところ。何回もやっているのだけれども、なかなかきれいにクライムダウンすることが出来ない。今回も結局大きくスタンスを取って無理やり降り、安定感を欠いてしまった。ここは鎖を使うならオーバーハングを避けて横のスラブ気味を降りればよい。このスラブ気味を鎖なしで降りることがまだできず、残された宿題になっている。
今回履いてきたジョギングシューズは実は壁トレにも使っている。その際にはつま先は柔らかすぎてホールドを取れない、外側のソールもこれまたやわらかいので使えない。細かいホールドに立ち込めるのは、足親指の付け根の部分だけだ。ここを使うか、靴底全体でぺったりと岩に張り付くかのいずれかでクライムダウンする。とくに靴底全体を使って降りていく作戦は、自分がクモかヤモリにでもなった気分で、これは結構楽しい。近頃は岩を巻くような踏みあとが発達しているのだけれど、巻けば簡単なところでも敢えて岩、岩と伝っていった。
鎖場の終盤、いつもの展望台岩に登って緑の奥久慈の山々、気になる謎のツインピーク、そして男体山頂を拝んだ。これから歩く滝倉尾根の緑が一段と美しい。
そして小岩溝をこれまたへたくそに下り(美しくクライムダウンするときは垂直の壁になる)、そのあとは木の根をホールドに小気味良く取りながら最後の鎖場をするすると下って、鎖場開始地点のヘルメットの谷(山頂を指す標識にかつてヘルメットが引っ掛けてあった)にやってきた。先週はここを水が流れていたが、予想通り今朝は流れていない。座禅小僧(筆者勝手に命名)基部のコケつきの岩壁がみずみずしい。
そして分岐点まで下山した。あとはあのいやらしいトラバースさえ過ぎれば危険箇所は終了だ。そのトラバース地点で登山者とすれ違うこととなった。登山者の方はトラバース地点の比較的下部にある木の根(倒木?)を伝うようにしてあっさりと通過していった。なるほどそういう歩き方もあるのかと、じぶんはその1mくらい上側をはいつくばりながら通過した。危険地帯を通過したら急に元気が出てきた。足許がジョギングシューズであることも手伝い、走りたくなった。そのまま鳥居までほとんど小走りで下りてしまった。それでも飽き足らず、古分屋敷への急な登り返しでばてるまで、途中四葉のクローバー探しをする間を除いて走ってしまった。
そのクローバー探し。一週間前の男体山登山の後、崩落地の確認の帰りに大円地山荘近くの草むらで、たくさんの四葉のクローバーに、六葉のクローバーまで見つけたことを思い出し、まだあるかを確認してきたのだ。最近は摘んでくると「貯まる」ので生息地を確認だけして、リリースしてしまう。
クローバー探しは、弘法堂への分岐路、下山時の林道、クサイチゴの薮でも行われた。合計、沢山の四葉のクローバー、そして五葉、六葉のクローバーをそれぞれひとつ発見した。
■弘法堂経由でのんびり下山
興奮して走った後はのんびりと、弘法堂を通って下山しよう。ペットボトルの水を片手に下げて、林道の分岐からのんびりと弘法堂へと進んだ。弘法堂の良さは、盟主男体山をはじめとする奥久慈岩稜を一望に収められる点にある。ご丁寧に山名盤まであるので。今まで巨人の三兄弟と勝手に呼んでいた岩峰が、櫛が峯であるとか馬の背のような輪郭の稜線が木落しなどと呼ばれていることを勉強させていただいたのだ。
岩稜を拝ませていただいた後は、のんびりと林道へ合流し、西金駅までぶらぶらと下山した。キイチゴ、クサイチゴを摘み、セリとノビルをかじった。ノビルの茎は硬くてゆでても歯が立たないのだが、花穂の部分から茎の先端部分は食べられる。生タマネギのような辛さが初夏のいい刺激になる。雨のおかげで林道脇のコケが鮮やかで、快晴の日の光を浴びて黄緑色に輝いていた。
終盤、これまた恒例により旧道を回ってペットボトルに清水を満たし、ハイキングの締めくくりとした。西金駅駐車場のそばには製材所があり、ヒノキのいい香りに一瞬神社を感じた。
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