前黒法師岳（寸又三山・静岡百山）〜遭難と青空とコーヒーと〜
Junjapa
その他1人 - GPS
- --:--
- 距離
- 14.0km
- 登り
- 1,947m
- 下り
- 1,952m
アクセスを調べる
標高グラフを拡大コースタイム
07:15 寸又峡温泉発
07:55 前黒法師岳登山道入口（0:40） 08:00
08:45 湯山林道 （0:45） 09:00
10:15 1495m地点 （1:15) 10:25
11:45 前黒法師岳頂上 （1:20) 合計4:00
[下山]
12:40 前黒法師岳頂上発
13:40 1375m直角の曲がり角地点（指導標）（1:00)13:50
14:50 前黒法師岳登山道入口通過 （1:00）
15:30 寸又峡温泉駐車場 （0:40) 合計2:40 計6:40
| 天候 | 快晴！ |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2012年10月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
自家用車
[復路]寸又峡P＝千頭＝島田＝吉田町 |
| コース状況／ 危険箇所等 |
■コース状況 ＜寸又峡〜登山道入口＞ ・寸又峡温泉の温泉街に入る入口に駐車場がある。そこには観光案内所や山岳図書館そして当時ここを走っていた鉄道の展示もある。 ・10月にはいると紅葉の観光客が増えるため500円/車の駐車料金が取られる。 ・寸又峡バス停の先で一般車は通行止め。そこから水平の林道を歩くこととなる。この林道の名前が寸又川右岸林道。 ・しばらく歩くと下に吊り橋である猿並橋が見える。朝日岳への登山道にもなっている。 ・やがて大間ダム。バックウオーターがコバルト色をして美しい。まだ紅葉には早く、これが紅葉になったら水の色と相まってとても美しい組み合わせとなるに違いない。 ・さらに進むと飛龍橋。この橋も昔は鉄道の橋だった。 ・飛龍橋を渡ると道は二手に分かれる。左手の林道を取る。この林道の名前が大間林道である。分岐から700mのところが登山口となる。 ・鼻をふたつほど回り込むと登山口。入口には太い丸太が置いてあるのでここで一息入れるのもいいだろう。 ＜登山道入口〜栗ノ木段＞ ・登山口からいきなりの急な登り。ここは下りの時にも要注意ポイント。 ・・965から南東に張り出した尾根に取りつく。 ・やがて標高700m地点から湯山集落跡を通過する。 ・湯山集落跡は林業関係者が居住していたところで石積みが残っている。 (元20軒ほど家があったそうだ。昭和30年代には1軒だけが残っていた） ・もう一カ所小規模に石積みが残っている場所（ここは集落の神社があったらしい）を通過し、湯山林道に飛び出る。 ・林道は崩壊しており、クルマの通行は無理。 ・登山道が飛び出したところには、作業小屋があるが、すでに朽ちており屋根があるだけという状況。 ・作業小屋の前を下り方面に20mほど歩くとそこからまた登山道が始まる。 ・なおここまで来るまでに尾根上から朝日岳の雄姿が望める。地図で見るよりも中腹のガレは発達している。 ・林道からひと登りで尾根は広くかつ緩傾斜になってくる。 ・一投足で栗ノ木ノ段の三角点。登山道から右に20mほどのところに標石が埋設されているが、指導標があるので容易に分かるだろう。三等三角点。 （この三角点のあった場所の少し下に以前は大きな栗の木があった） ＜栗ノ木段〜白ガレの頭＞ ・しばらくは原始林の素晴らしい緩傾斜の尾根が続く。 ・約1390mのところで尾根は真っ直ぐ伸びているが、登山道はいったん右にトラバース気味に斜上し、小尾根に乗ったところから左に直角に曲がり再び尾根上に導かれる。曲がり角には指導標があるのでわかりやすい。 ・そこから200mの急な登りを喘ぎながら登る。 ・やがて白ガレの頭（・1665）から北東に伸びた尾根を目指して登山道は右に斜上気味に登る。右へ右へと行き、その尾根上に乗ったところで左に直角に曲がる。 この屈曲点がイワカガミの群落であり、指導標が建てられている。 ・ゆっくり登り、白ガレの頭に導かれる。頭とは言ってもガレを孕んだ尾根上の細長いコブであり、目立つポイントではない。ガレは登山道まで発達しており、場所によっては、下がえぐれている。あまりガレよりに歩くことはお奨めしない。 ＜白ガレノ頭〜前黒法師岳＞ ・いったんコルまで下り、そこから前黒法師岳”名物”の最後の急登に突入する。約200m弱の急な登りが連続し疲れた脚にはつらいところだが、頑張る。 ・途中「展望所」という表示があり、そのコブからは、尾根北側の展望が開ける。聖岳や光岳などの展望が見えた。 ・やがて頂上台地の一角に踊り出て、登山道はそのまままっすぐ西端の頂上へと導いてくれる。頂上は、このあたりの名物”串団子”の形の山名表示と三等三角点とがある。 ・基本、樹林帯の頂上であり、展望は望めないはずだが、南側を誰かが伐採したようであり、天水方面の展望は狭いながら望める。左側には大井川の流れも遠望できた。 ・黒法師岳への登山道も明瞭に踏まれている模様。 ・下りは登りの道をそのまま忠実にたどった。 ■日帰り湯 ＜町営露天風呂＞ ・400円/人 ・お湯はトロトロの気持ちのよいお湯。美肌の湯なんだそうだ。 ・シャンプー・リンス・石鹸などはないので持参する必要がある。 （聞いたところによると洗い場が狭く、シャンプーやリンスが飛んで浴槽に入るので置くのをやめてしまったそうだ。もう少し広く風呂場を作ればいいのにと思った） ■会計 ・交通費：往復 153km÷17km/LX148円/L＝1330円 ・食糧：コンビニ：600円 ・下山後食糧：ノンアルコールビール130円＋日本酒600円＝730円 ・風呂：400円 合計3060円 （駐車場代は、商店の駐車場に止めさせてもらいそのかわりお土産を購入） ■歩数 23000歩 ■静岡百山57座目 |
写真
拍手
総延長52kmの千頭森林鉄道…。相当長かったんだなぁ。78万立方メートルもの森林を運搬したという。長さにしても木材の量にしてもスゴスギる。一大林業地であったことがわかるというものだ。
ナンだか重々しい雰囲気で説明をしていると思ったら、近隣の消防署の人たちの「遭難救助隊」でした。これから幾手にも分かれて行方不明の方を探しに行きます。人ごととは思えませんでした。「何とか見つかって欲しい」そのことを心からお祈りしました。
寸又峡温泉の説明板。硫化水素系単純硫黄泉だそうです。もともとは、「湯山」集落の名前のとおり、あちらの方から引湯して温泉としていたらしい。その後、ボーリングをして泉源を探り当てたという。
先日、金沢の方の猿が馬場山に行ったときにトチ餅を買いました。なのでトチの木が何だか親近感をもってみることができました。なんとパリで有名なマロニエもそれなんですね〜。知りませんでした。
飛竜橋を通過します。橋のたもとに碑がありますが、誰かえらい人がこの橋の名前をつけたそうです。むろんこの橋も森林鉄道の橋でした。
旧湯山集落跡。こんな高所に集落があったとはとても信じられない。寸又峡で聴いたところ50年も前に閉じられたという。林業関係者の集落だったそうです。
「オレの彼女だ！イロジロだろ〜」の木。イロジロの木の名前はヒメシャラ。前黒法師岳名物です。1300m地点に生えています。必見！
「ハナビラダクリオキン」という名前の植物。どこで一呼吸置いて読むか？と思わせる名前ですが、最初が「花びら（ハナビラ）」で、そのあとのダクリオはラテン語？のようですね。キクラゲの仲間だそうです。キレイですね。鮮やかな橙黄色。ゼラチン質で、形は脳みそ状。針葉樹の枯木や切り株上に生えるとのこと。Archaengelさんありがとう。
Archaengelさんありがとう。
感想
移動性高気圧が本州をすっぽり覆ってよい天気になった。
紅葉には早いけれど前黒法師岳に出かけた。
白峰南嶺を共にしたNJさんも一緒だ。
寸又峡温泉の駐車場に着いてみると消防署員がたくさん集まっている。
何やら重々しい空気。
「消防訓練かな。防災の日も近いし」
初老の人が立っていた。
「ナニかの訓練ですかね？」
その答えに耳を疑った・・・。
「私の娘が18日に沢口山に登って行方不明になっているんです。これから消防の方が捜索に行くんです…」
沢口山。遭難・・・。
未発見・・・。捜索・・・。
2年前、大学生5人が遭難した山だ。
目の前の沢口山が急に覆いかぶさってくるように思えた。
「私の娘はひとりで登ったんです。頂上から友人にメールを出したあと連絡が取れなくなりました。」
”ワタシの”という言葉が何より重かった。
知ってか知らずか他の登山パーティーが三々五々出発していく。
このまま山に登っていいのか？と思った。
でもわれわれは消防団ではないし、消防団に加わって捜索の邪魔をするわけにもいかない。
結局、注意に注意を重ねて自分たちの山を行くしかないのだと悟った。
★★★
寸又峡---山奥である。
ここ大間集落のある場所は大昔の大井川の河原にある。
だから険しい山中なのにおあつらえ向きに平地が多い。
近くにダムを作った時に一大集落となった。
一時は、病院や学校などもあってにぎわったが、ダムの建設が終わると次第にさびれていった。
そしてある篤志家が大井川鉄道の支援も得、昭和37年に温泉を掘り当てたのだという。
今年はその50周年にもあたる。
金嬉老の事件も起きたりしたが、ひなびた温泉宿として隠れた人気を誇ってきた。
寸又峡温泉は三つの原則がある。
�．灰鵐僖縫�ンや芸者を置かない
�▲優�ンサインをつけない
��山腹に○○温泉などの看板表示をしない
山の温泉場では静けさや憩いが一番の売り物だ。
ネオンサインやコンパニオンは、長い目では二流歓楽街への片道切符だろう。
三原則は本当の価値を見抜いている。
★★★
紅葉にはまだ早い。
大間ダムの湖水はコバルト色で紅葉が映えたらさぞ素晴らしいことだろう。
飛龍橋から左の林道に入りそこから急な登りとなる。
寸又峡温泉が標高約500m。前黒法師岳頂上が約2000m。
今日は1500mを登って下るのだ。
空はどこまでも澄みわたっている。
その蒼さに心まで染まっていく。
まさにカタルシス。
だけど遭難を思うとすっきりしない。
NJ氏に訊くと新聞にも遭難の記事が出ていたという。
”早く出てきてほしい”と思う。
「お〜い。お〜い」という捜索隊の掛け声が遠くから響いてくる。
★★★
原生林の登りにあえぐ。
「静岡の百山」には次のようにある。
「（略）・・・・少し下ると黒灰色の衣をまとったような前黒法師岳が姿を現す。ここから山頂への登りは、倒木と密生した木々にはばまれ、まさに悪戦苦闘となる。それも山頂稜線の平地にでればホット一息、三角点は近い。（略）」
ちょっと前までは未開の状態だったんだなと思う。
今はコースにテープが数多いが、常に道が明瞭というわけでもない。
まだまだ原始の山の風情は残っている。
前黒法師岳では1時間ほどゆっくりした。
いつもガサガサ登りトコトコ下るのでこんな時間があっていい。
風が強く雨具をあわてて着こむ。
熱いコーヒーをすする至福のとき。
★★★
思うことはやはり遭難のことだ。
行方不明の娘さんと帰りを待つお父さん。
頂上で陽光をあびてコーヒーを手にする僕たち。
それぞれの山登りがある。
「ひとときの幸せなくつろぎ」と「限りない不安の広がり」の光線が交錯する。
通りすぎていく時間は何もしてくれない。
ときおり”見つかったかなー”とつぶやく。
”あー”と応える。
NJ氏も自分も他人行儀な評論家的な言い方がイヤだ。
苦しんでいる人たちの傍らで至福を味わっている。
山では助け合わなきゃダメだろ・・・どれほどドヤ顔で言ってきたことか。
いまの自分たちは、コーヒー片手に捜索隊の「おーい」をBGMにしている。
「人を助ける」
書くのは簡単、だが容易い（たやす）ことじゃない。
以前、富士山で数百m下まで滑落してしまった遭難者をスノーボートで引き上げたことがある。
谷底から林道まで引っ張り上げたが、ひとりに10人以上の山男がひーひー音をあげた。
身動きできない人を助けるとは、本当に大変なことなのだ。
助ける方にいつも余裕があるというわけではない。
その重労働に、その大変さに救助者が救助の意志を喪失してしまう場合もある。
助ける方が助ける状況でなければ救助は成り立たない。
助ける必要なんてないなんてのもある。
自己責任なんだからほーっておけという考え方だ。
自分はリスクに対して、精一杯対処している。
それをやらないお前が悪いんだろということだ。
見て見ぬフリというのもある。
救助して自分がリスクにさらさるのは、まっぴらごめんということだ。
結局、山で遭難して誰かが助けてくれるなんて「過剰な期待」、ある意味では「妄想」なのだ。
平地以上に助け合いが要求されるのに、平地以下しか満たされないのが山だ。
むろん地元の遭難救助隊が最後には出動するケースもあるが、一日3万円というのが相場。
そう、救助隊の人たちの努力には頭はさがるが、タダというわけではない。
誤解を恐れずに言えば対価をいただく”労働”になっている。
見も知らぬ他人をリスクをおかして助けるのだから、対価は頂くというのも至極当然とも思う。
「山では助け合い」−−−それは山の教科書の中においておくしかなさそうだ。
「山では助け合えない。助け合いの期待度は平地以下」がふつうと考える。
「自分の身は自分で守る」ことにどれだけ徹底的な執念を燃やすか。
登る前の周到な計画。
登っているときの鋭敏な注意。
登ったあとの反省。
それができないのなら山に登るな。
「山ではひとり」だから。
そんなことのようだ。
★★★
帰りは一気に下った。
飛龍橋まで来ると観光客が多い。
彼ら善男善女は、遭難のことを知らないだろう。
平和と遭難、2つの光線はここでも重なることはない。
本日の捜索では手がかりは得られなかったそうだ。
消防団の捜索は今日で終了し、明日からはご家族と山岳会での捜索となるらしい。
下山後のため息。
いつもの達成感はない。
山の底からみる空は透き通るほど青い。
遭難した娘さんもきっとこの青い空を見ている。
こっそり拍手
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録するこの記録で登った山／行った場所
関連する山の用語
山行記録を公開しました
X
Facebook
リンク取得
メール
ブログパーツ
情報提供のお願い
山行記録を投稿して、ヤマレコのコミュニティに参加しよう！
この山行記録の写真
前黒法師岳の最新記録
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する