至仏山。7月初めは、花がいっぱい
- GPS
- --:--
- 距離
- 10.3km
- 登り
- 856m
- 下り
- 839m
コースタイム
→山ノ鼻(9時42分着、食、9時55分発)→植物研究見本園を見る→至仏山への登りにとりつく(10時04分)→ 森林限界を抜ける(11時すぎ)→山頂東面の高山植物帯(上部の稜線部は高天原と呼ばれる、ゆっくり写真撮影)→至仏山山頂(12時50分着、食、13時10分発)→鳩待峠(15時05分着、15時12分発)
→バス→戸倉(15時30分着、15時42分発)→関越道、圏央道経由→入間インター→西多摩の自宅(18時55分着)
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2006年07月の天気図 |
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
10数年ぶりで尾瀬の至仏山に登りました。 前回は、晩秋の山行でしたが、今回は、花の開花がいっせいに始まる7月初旬の時期です。コースも上部で花が満喫できる山ノ鼻からの「至仏山東面登山道」を登高コースに選びました。 http://trace.kinokoyama.net/josinetu/sibutu0x07.htm |
写真
感想
梅雨前線が一時、南下して、上越以北は曇りの天気予報でした。
尾瀬で花を見るには、曇り空が好適、と読んで、登山口の片品村・戸倉をめざしました。戸倉では、なんと快晴の空が、私たちを迎えてくれました。
8時38分、鳩待峠を出発。山ノ鼻をめざして、緩やかに下降する木道をすすみました。
山ノ鼻から至仏山に登る「東面登山道」は、雪解けを待って、この日、開通したばかりです。この道を登りに選んだのは、下りに使うのは避けてほしいとの呼びかけが、尾瀬関係の団体のサイトにあったためでした。下降では、登山者がスリップを避けるため道を外れたり、弾みでルートを踏み外すことが多く、植生をいっそう傷めるからです。
私たちは、そのことと共に、何よりも、至仏山の森林限界から山頂部にかけての高山植物帯を、登りながら低い目線で楽しみたいと考え、登りのルートに、この登山道を選択をしました。
実際、訪れてみると、東面登山道は期待にたがわぬ、すばらしい自然が迎えてくれました。
10時すぎ、山ノ鼻の植物研究見本園の湿地帯を横切って、至仏山に上がる樹林帯に入り込みました。
東面登山道から登っていく至仏山は、植生や地形の区分が明瞭です。
第一段階は、山ノ鼻から、東面登山道の取り付き点がある、森の入り口まで。
この1キロほどの区間は、尾瀬ヶ原西南端の池塘と湿原が広がる木道歩き。前方には、至仏山の山頂部がゆったりと見渡せ、降り返ると、牛首の狭まりの向こうに、燧ケ岳がそびえたっています。
第二段階は、東面登山道の取り付きから、1時間ほど続く、樹林帯の登りです。
ミズナラ、桂などの広葉樹と、針葉樹が茂る樹林は、心地よい木陰となり、足元の登山道は崩壊の防止のため、木道が要所に設置され、歩きやすい。私たちは、コシアブラの若木や、タニウツギ、ムラサキヤシオなどの花を眺めつつ、よいピッチで登りあがりました。
第三段階は、標高1750メートルの森林限界から、山頂部にかけての一帯です。
至仏山は、山体が蛇紋岩でできている、全国的にもめずらしい山です。
標高が低い地点で、森林限界を抜けるのもそのため。蛇紋岩は、崩壊しやすく、安定した植生を保てないことが影響しています。その分、森林を抜けてから、山頂までの標高差が大きく、潅木帯に続いて、上部の残雪が遅くまで残る地帯では小沢や湿地が錯綜する高山植物の群生地が広がります。
周囲の視界も早い段階で開けてきます。高度を上げるごとに、まるで航空機から眺め下すような高度感がある尾瀬ヶ原と、燧ケ岳の景観が見事です。
しかしその一方で、蛇紋岩は摩擦にも弱く、登山靴の靴底の摩擦でも、表面がつるつるに磨かれてしまいます。しかも見た目以上にグリップが効きません。注意をしても、意外なほど滑ってしまうので、危険です。
尾瀬関係のサイトでは、7月1日の開通後も、この山道を極力、登りに使うように呼びかけています。滑りやすい下降では、ルートを外して足場を求める人が後を絶たず、登山道のいっそうの崩壊・拡張を招くためです。
しかし、今日の場合も、利用する登山者の95パーセントは下降組です。とくに、ツアーやグループ登山者はほぼすべてが、山の鼻への下降でした。下降の登山者は、晴天のこの日でも、目の前で激しい勢いで転倒する人もいました。
花と景観の楽しみ、安全、登山道保全のどの点から考えても、この道は登りに使ってこそ、本領が味わえます。周回する所要時間も、逆回りコースにくらべてと30分と差異はない。関係者のいっそうの周知徹底を望みます。
稜線が近くなると、これがあの穏やかに見えた至仏山かと思えるほど、道は険しく、斜度はきつくなってきます。植生が潅木帯に湿原や草地がまじりだして、いよいよ至仏山の高山植物帯です。 まず登場は、この山など限られた山に分布するクモマイカリソウ。
次いで、登山道の両脇に、ユキワリソウが現われ、その数がぐんと増しました。こんなにたくさんのユキワリソウの群落を抜けて登るのは、初めてです。
直径が1センチ足らずの小さなユキワリソウの花に比べて、ずっと大きく見ばえがするのは、ジョウシュウアズマギクでした。この花も、高度を上げてゆくにつれて、数を増してゆきます。
チングルマ、ハクサンイチゲ、ハクサンチドリもちょうど盛り。ショウジョウバカマ、イワカガミはやや時期遅れにさしかかったようです。
潅木では、ウラジロヨウラク、イワナシの花が、いまが旬というところでした。
稜線が近づくと、強風と乾燥のザレ地が現われてきます。
そこに、見渡す一面に咲いていたのが、ホソバヒナウスユキソウ。小さなエーデルワイスですが、表面を綿毛にぽってりと覆われたこの花のつくりは、愛らしく、清楚でもあります。谷川岳と、ここだけに咲く花です。これほどの群生をしているとは、予想を超えていました。
タカネシオガマ、ジョウシュウアズマギクも、この一帯が一番、多く咲いていました。
12時50分、至仏山の山頂着。森林限界を抜けてから、花の撮影で道草してきたとはいえ、やはりなかなか登りごたえがある山です。
視界が開けている今日は、たくさんの山が望めます。平ヶ岳には、まだたっぷりと残雪がありました。越後三山は雲の中。本谷山から谷川岳方面へ延々と続く国境稜線の山々が、モノトーンの色調で連なっていました。
日光・皇海山方面の山々も、よく見えていました。
眼下は、切り立った岩稜の間を、狩小屋沢が楢股川へと落ち込み、楢股ダムの湖が間近に見下ろせます。このダムの建設直前の時期、27年前に、楢股川を釣りあがって、狩小屋沢の出合いを越えたときのことを思い出しました。
至仏山の山頂には、一辺が80センチ、高さ120センチほどの大きな御影石の標石が、どんと鎮座していました。人工物で、この大きさは、のどかな山頂のたたずまいを損ねます。
13時10分、山頂発。
鳩待峠への下りです。
山頂北側はザレ地でしたが、南側の稜線は岩場と灌木地帯です。ホソバヒナウスユキソウは数がぐんと減ります。代わって、今が盛りのハクサンシャクナゲがまず一番、目立つ花になりました。ヒメシャクナゲも濃い紅色で迎えてくれました。
この一帯に見られるチングルマは、花弁の外側に朱色がさしているものがあり、立山特産のタテヤマチングルマを想起させられました。
小至仏山をこえて、岩場の灌木帯から、雪が解けたばかりの湿地帯に入り込むと、シナノキンバイ、ハクサンイチゲ、イワカガミが見ごろ。ゴゼンタチバナとツマトリソウは、まだ開花前。コバイケイソウはまだ花芽がありません。
オヤマ沢田代から、鳩待峠への樹林の下降でも、ムラサキヤシオ、イワナシ、キバナイカリソウ、コミヤマカタバミ、シラネアオイ、オオタチツボスミレなど、花は続きました。
15時05分、鳩待峠に下山。
一番の時期に、花いっぱいのルートをたどって、充実感いっぱいの山行を結びました。
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