暴風雪→晴天 白馬大池での4日間



- GPS
- 80:00
- 距離
- 7.7km
- 登り
- 702m
- 下り
- 699m
コースタイム
【2日目、3日目】停滞
【最終日】0655白馬大池山荘…0838ロープウェイ乗り場
天候 | 【26日】雪、時々雷 【27日】終日吹雪き 【28日】快晴(午前中は強風) 【29日】朝は晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2013年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
ゴンドラリフトの乗り場で計画書の提出を求められます。 途中でロープウェイに乗り換えます。 料金は4人分まとめて先輩が払ってくれ後に精算したので詳しい額は分かりません。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
ロープウェイ乗り場と白馬大池の間は、赤布やスキーヤー用の旗が立っているので、 吹雪いてなければコースを見つけるのは容易と思われます。 が、吹雪かれるとかなり分かりにくい(特に天狗原は広いので方向がよく分からない)ので、 地図やコンパスを頼りに歩く事になります。 白馬大池から先の稜線は雪庇があったり尾根が細かったりするので、 視界が悪い時は入らない方がいいみたいです。また強風の際も注意です。 |
写真
感想
当初の予定は、栂池高原から雪倉を通って栂海新道経由で親不知へ出る予定でした。
3泊4日に予備日を2日設けてありました。
しかしならが前半に悪天候に阻まれ、思った以上に残雪も多く、結果的に白馬大池で停滞したまま下山することに…。
【4月26日(金)】
ロープウェイを降りた時にはまだ視界は良好でした。
地図を見ながら夏道の取り付を探しますが見つけられず右往左往。
適当に横槍を入れて(笑)、うまいこと夏道に合流。
その後徐々に風が強くなり、雪も混じるようになって視界が不明瞭に。
乗鞍岳への登りでは、視界の悪さから取り付きの尾根を間違えてしまいました。
途中で気付き、ルンゼ上の斜面をトラバースします。
この時、雪が柔らかくキックステップで登れたので、みんなアイゼンはつけていませんでした。
トラバースが苦手な私は、途中で左足(谷側)の雪が崩れて股裂け状態になり、
そうこうしているうちに右足(山側)の足元も崩れて、挙句ピッケルが斜面から抜けてしまい、
そのままズルズルと滑り落ち始め……。
ピックを斜面に刺してはみましたが、表面の柔らかい雪を切り裂きながら地味なスピードで落ちていきます。
ヤバイヤバイ、止まらない!と思いながら必死にピックを差し込むのですが全く止まる気配はなく、
結局そのまま50mほど落ちてしまいました。
幸い、スキー場のゲレンデみたいな易しい斜面で、下は天狗原という原っぱですし、
途中に障害物もないので落ちても危なくない場所だったのでなんともありませんでした。
これが2週間前の爺ヶ岳〜鹿島槍の斜面だったら、確実に助かってないです。
止まった時には手足が震えてうまく立ち上がれませんでした。
一度登った斜面を登りなおして、念のためアイゼンを着け、再度トラバースにチャレンジ。
一度落ちているせいで恐怖心が刷り込まれており、先頭の先輩に合流するまで気が気ではありませんでした。
13時24分、初日は吹雪で視界が悪く、白馬大池にて行動停止。
ここから先の稜線は尾根が細く雪庇もある為、視界が悪い時は雪庇を踏み抜く危険があります。
それに、白馬大池を越えてしまうと、三国境を過ぎて鉢ヶ岳までいかないとテントが張れません。
安全のため、1日目は白馬大池までとし、ここでテントを設営。
風が強かったので、ブロックは念入りに立てました。設営に1時間かかりました。
南西の風が強かったので、西面と南面にブロックを積みました。
夕方、ラジオを聴きながら天気図を起こしてみると、高気圧が近づいていたので、
天候は回復傾向にあると判断しました。
この時、テント内の温度はマイナス0℃。
翌日の天候に期待し就寝。
夜中、テントの端に寝ていた自分は圧迫感を感じて目が覚めました。
不思議に思ってテントの壁に触れて見ると、雪が溜まってテント際の荷物に乗りかかっている…。
ぱっと見、20センチは積もっていました。
【27日(土)】
予定通り3時起床。テント内はマイナス3℃。
テントの外は横殴りの風雪。テントが歪む歪む。
5時前に外がうっすら明るくなったので窓から外を見てみると、完全なホワイトアウト。
仕方がないので6時ごろに二度寝。
8時、トイレに行きたくて外へ出ましたが、ズボンを下ろすのも一苦労。
おちおち用も足せません。
全身真っ白けになって逃げ込むようにテントへ帰りました。
西方向の風が強烈に吹いており、周りの景色は全く見えません。
8時15分、風が一時的に弱まった合間を見て、先輩の一人が除雪の為外へ。
ブロックを積んだ南面は比較的吹き溜まりは少なかったですが、
西面はブロックとテントの間に雪がかなり溜まっていて、
入口のある北面と私が陣取っていた東面は結構溜まっていました。
9時10分、ラジオの気象概要の放送時間です。
図面を起こしてみて、まず北海道の東にあった低気圧の勢力が強まっている事に気付きます。
その影響で、九州方面にあった高気圧のスピードが落ちており、
天候の回復に時間がかかっているようでした。
また、北アの天候を予測する時に「輪島」(能登半島先端の観測地点)の天候が参考になるそうなんですが、ここが雨。
すぐ近くの「相川」の風力が6とかなり強く、低気圧の影響が及んでいるラインの境目らしかったです。
確かに回復傾向なんだけど…なかなか回復してくれない…。
11時58分。ここで事件。
なんと南面のブロックが強風で全面崩壊!!ガチガチに凍ったブロックがテントを直撃。
寝袋を被って横になっていた先輩の頭部を直撃しました。
幸い、テント際にコッヘルやザックがあったので、ある程度ダメージは緩和されていたようです。
それでも、しばらく先輩が声を発さなかったので、テント内に一瞬戦慄が走りました…。
吹雪の中、全員でテントの外へ出て、急いでブロックの補修工事に当たります。
今度は倒れることがないよう、壁を厚めに作りました。
13時に補修完了。テント内はプラス12℃。吹雪の割には気温が高かったです。
※この日、白馬大雪渓で雪崩がありました。当然この時の我々はそんなことは知るよしもなく…。
そして、この日の停滞が決定し、今度の身の振り方についてみんなで話し合いました。
まだ白馬大池までしか進んでいなくて、あげく1日つぶれてしまい、
この先のルートの積雪量もかなりあることから、最終予備日の5月1日をもってしても親不知へ出られる公算は低そうです。
「翌日天候が回復したら、白馬岳へ出てそこで幕営、あさって大雪渓から猿倉へ降りようか」という事で一旦話がまとまりました。
ただ、白馬へ行くというサブルートについては計画書に記載をしなかったので、
計画外の行動を取る事について若干の不安も残りました。
16時、ラジオの気象概要の放送時間です。
北海道の低気圧は990を割り込み、九州の高気圧はますますスピードを落としていました。
気圧の情報が入り組んでいて等圧線がうまく引けず、
図面に穴が開くほど眺めてみましたが(笑)私にはまったく予想が立てられませんでした…。
16時55分、風がピタリと止み外が明るく感じられたので、
除雪もかねて外へ出る事に…。
すると、ずーっとホワイトアウトで全く周りの様子が分からなかったのが、
雲が晴れて風が収まり、まぶしい日差しと青空、そして大池周辺の景色が鮮明に見えるではありませんか!!
みんなテンションMAXでテントの外へ飛び出した!!
「そうか〜こんな景色が広がってたんだね〜」
「昨日はいったいどっちから来たんだっけ?あそこ通ったんだっけ?」
などと話しながら大はしゃぎ。
だってずっとテントに閉じ込められてたんだもんね、そりゃテンションも上がるよね!
17時40分、テント内は0℃まで下がりました。
やはり日が沈むとどんどん気温は下がります。
この日の夜は私はテントの中心に寝かせてもらったので、とても暖かく快適でした。
が、夜中は再度吹雪が起こり、端っこに寝ていた先輩はまたしても吹き溜まりの餌食となったのでした…。
【28日(日)】
いつも通り3時起床。テント内はマイナス6℃。寒い…。
先輩が除雪に出てくれました。
日の出を迎え、どうやら今日は天気が良さそうです。
ところが風が強い…。
小蓮華方面の稜線を見上げると、日本海側から吹き付ける強風で雪煙が巻き上がってる…。
先へ進めそうな気がしない…。
6時35分、みんなでワカンを履いて、とりあえず手前のピークへ偵察に行く事に。
池からは見えなかった、鉢ヶ岳方面の稜線が確認できました。
思った以上に雪がたくさん付いています。
夏道は、鉢ヶ岳は東側をトラバースするルートで、我々もそこを歩く予定でした。
が、結構傾斜のある斜面で、見るからに積雪量が多い上に気温が高いので、
あのトラバースは雪崩の危険があって通れないねという話に。
ていうかその前に今自分らの立ってる場所の風がとにかく強い…。
稜線に突っ込んでいくのはちょっと危険そうだったので、結局この日も縦走は諦めました。
7時25分、ヒマなので(笑)雪洞を掘って遊ぶ事に。
昨日まるまる1日停滞していたので、特にリーダーはエネルギーが有り余っているのか、
スコップを握り締めたまま離そうとする気配がない(笑)。
私は今回、記録係だったので、カメラを持って再度稜線へ上がってみることにしました。
さっきの偵察で見えていた鉢ヶ岳は、日本海側から飛んできた雲に山頂をすっかり覆われ、
その様子を確認することはできなくなっていました。
次のピークへの登り手前まで行ってみようかと歩を進めてはみたものの、どんどん風が強くなって…正直怖い…。
足元はワカンで不安定だったので、これ以上進むのは止めて引き返そう。
と思って180度方向転換したはいいのですが、本当に風が強くて足が前に出ない。
ヤバイヤバイと思いながら、時々立ち止まりつつ最後は走って斜面を転げるように帰りました。
9時10分、ラジオの気象概要の時間です。
個人的には、この時に起こした図面が一番キレイに書けました(笑)。
ようやく高気圧が日本列島を覆い、好天の気圧配置になりました。
しかしながら、その後ろから他の高気圧がやってくる気配は無く、中国大陸に低気圧が2つ。
好天はそう長くは続かないだろうと予想しました。
また、先輩からのアドバイスで、高気圧の前の方は空気が乾いていて好天だが、
後ろの方は上昇気流の影響で水蒸気を多分に含むので曇りになる傾向がある、とのこと。
ということで、好天は翌日の午前いっぱいまでもって、午後から曇るだろうと予想しました。
11時29分、風が止んだので、軽装で小蓮華岳に行ってみることにしました。
行動を開始したちょうどその時、乗鞍岳の向こうから1人、また1人と登山者がやってくるのが見えます。
時々振り返ると、その数はどんどん増えてゆく。スキーを履いた人たちもたくさんやってきます。
そうだよね、GWだもんね。それにこの晴天だもんね。
でも…みんな…昨日のあの吹雪を知らないんだな…。ちょっと羨ましく思いました。
2439mピークの辺りまで来て、驚いた事に、たくさんのスキーヤーがいました。
我々がテント場にいたときには、こんなにたくさんのスキーヤーが通っていくのを見かけなかったので、
一体彼らはどこから降って湧いたのだ?と思ったら、、
全然見当違いの尾根から続々と人が登ってくるのが見えるではありませんか!!
こんな傾斜がきつくて、上部に雪庇がある斜面、雪崩や雪庇の崩落の危険もあるのに、
怖くないんだろうか…普通ならこんなところ登らないと思うんだけどなぁ…。
このまま小蓮華へ向かうとなると、帰ってくる時にあの大量のスキーヤーとすれ違わなければならないのが
ちょっとだるかったので、結局ここで引き返す事にしました。
でも、風の穏やかな稜線はとっても気持ちがよく、遥か彼方に日本海が望め、
八方尾根や遠見尾根、その先には唐松、五竜、その向こうに鹿島槍の双耳峰と先日登った爺ヶ岳まで見えて、
いつまで眺めていてもまったく飽きることのない大パノラマを満喫することが出来ました。
テント場へ戻って行動食を食べてお昼とします。
13時17分、テントの外はプラス10度、テント内はなんと30℃!もはや蒸し風呂状態…。
行動食のブラックサンダーが溶けてベトベトに…(笑)。
昨日までの降雪に、今日のこの高気温。あの大量のスキーヤーたちは大丈夫だったかしらと少し心配になりました。
暖かいうちにみんなで宴会をしようという事で、外にベンチを作ってみんなで乾杯しました。
今回は縦走の予定だったので、軽量化のためアルコールは打ち合わせの時点で共同装備としました。
4人で4日間、焼酎とウィスキーを500mlずつです。これを多いと見るか少ないと見るか…(笑)。
16時、最後の気象概要を聞きます。
9時の放送の時より、確実に気圧が上がっていました。
ロープウェイの始発が確か9時だったので、それに合わせて明日はココを出ようという事に。
夕食の後、先輩2人はご夫婦そろって雪洞へ。私はもう一人の先輩とテントに残りました。
19時07分、テント内はちょうど0℃。雪洞はもっと暖かいのかな…?
【20日(月・祝)】
ちょっと遅めで4時半起床。テント内はマイナス4℃ or マイナス6℃。
目がしょぼしょぼして目盛りが読めませんでした(苦笑)。
やっぱりテント内の人数が2人減ったせいでしょうか、夜中寒くてよく眠れませんでした。
雪洞組もやはり寒かったようです。バーナーを1つ持たせてあげればよかったと後悔。
最終日の朝食は豪華にちらし寿司。予備日を消化しなかったので、晩ご飯の共同分が余っていたのでそれを食べました。
(我々のパーティーは朝食は個人装備なのです)
晴天と穏やかな風の中、7時前には大池を出発。
小蓮華方面の稜線を上がってゆく登山者の姿を羨ましく見ながら、彼らに背を向けて出発しました。
下山はサクサク。視界もよく、1日目には見られなかった景色を堪能しながらワイワイ楽しく帰りました。
というわけで、結局テントを張って定住しただけの4日間でしたが、
ホワイトアウト、停滞、気象予想、できれば経験したくはなかった滑落…
もりだくさんの山行でした。
「ただテント張っただけで何にもやってねーじゃん」という意見もあるかもしれませんが、
安全第一でこのような判断となり、またそれは、現地でその状況を見た我々にしかわからなかった判断だと思っています。
下山のロープウェイで、添乗員のお姉さんから「大雪渓で雪崩があって大きなニュースになっています」と聞いた時にはとにかく驚きました。
先輩が「今は大雪渓を通るのは危ない」と言っていた事を思い出しました。
春山の難しさ、危険さ、状況判断の大切さを学ぶことができた貴重な経験でした。
何の約にも立てなかったけど、こんなド新人をメンバーに加えて下さった先輩方には感謝の気持ちでいっぱいです。
chunkichiさん、こんにちは。
大池のテン場で、多分、お隣だったパーティの者です。
4/27は、栂池ゴンドラが朝一の数本だけで停止してしまい、入山できなかったのですが。スタッフの方の話によると、ゴンドラ上部の風速が30m/sに及んだそうです。大池のほうでも、想像するに余りあります。
4/28は打って変わって好天に恵まれ、お昼ごろに大池のテン場に到着した我々は、楽しいテント生活を送ることが出来ました。我々は、V8テント+ツェルトで、先着の2つのテントの真ん中で張りましたが、chunkichiさんらは、小屋寄りのテントでしたか?それとも小蓮華寄りのテントでしたでしょうか? しかし、そんなりっぱな雪洞があるのなら、私も見学に行きたかったです。
クマ
こんにちは!コメントありがとうございます♪
大勢でワイワイといらっしゃっていたパーティーですね!
夜、楽しそうな声が聞こえて「いいなぁ、混ぜてもらえないかなぁ…ビール持ってないかなぁ(笑)」と
みんなで話していました。
まさか27日はゴンドラが止まったんですね!
確かにあれでは入山しない方がよかったでしょう…そりゃもうヤバかったです。
私たちは、雪に埋まった小屋のすぐ横に張っていました。
ツェルトは、荷物置き場でした?それともあの中で寝たのでしょうか?
結構夜寒かったですが…ご無事でしたか?
先輩の作った雪洞は、一晩で終わりにしてしまうにはもったいない出来栄えでした。
今はもう屋根が沈んでなくなってしまったかしら…。
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