飯豊連峰 クサイグラ尾根→北股岳→石転び沢


- GPS
- --:--
- 距離
- 25.1km
- 登り
- 2,290m
- 下り
- 2,186m
コースタイム
05:00 梅花皮荘
06:00 飯豊山荘
06:10 温身平(クサイグラ尾根取り付き)
09:45 ならのき峰
10:30 P1110岩場
12:15 P1310雪稜の始まり
14:00 P1777細尾根
15:50 主稜線(クサイグラ尾根分岐)
16:00 鳥帽子岳
16:30 梅花皮小屋
【5月25日】
06:00 梅花皮小屋
06:30 北股岳
06:50 梅花皮小屋
08:00 石転び出合
08:30 梶川出合
09:45 温身平
10:10 飯豊山荘
天候 | 24日:晴れ 25日:晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
飯豊山荘へは車道を歩いて向かいましたが、翌日25日(土)には通行止めが解除され、 飯豊山荘まで車両通行可能になりました。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
○クサイグラ尾根 かつては登山道が通っていたそうですが、廃道となっており、尾根全域がヤブで覆われています。 ヤブはかなり密に生えており、無雪期は1日で登り切る事は不可能かと・・・ アップダウンもあり、体力的な困難さでは飯豊連峰でもトップクラスの難路だと思います。 標高1310m地点以降は尾根の傾斜が一気に上がりますが、そこからは雪稜になりヤブが隠れたので、 なんとか1日で登り切る事が出来ました。 登山道はありませんが、尾根の大部分は細尾根で地形がはっきりしており、 迷い易そうな場所は特に見られませんでした。 気になった難所としては、P1110岩場と、P1310以降の雪稜通過。 P1110岩場は、高さ3m程度の岩ですが、ほぼ垂直の岩登り。 フィックスロープはありますが、劣化が激しいので利用しない方が良さそうです。 それ程難しい岩では無いので(沢登り初級程度)、ロープに頼らずとも登れましたが、 もし下降する場合はロープが必要になるでしょう。 フィックスロープには頼れないので、撤退の可能性を考えるのであれば、ロープを持参した方が良いと思います。 P1310以降の雪稜では、急登や急斜面トラバースが続くので、10本爪以上のアイゼンとピッケルが必要です。 尚、独断と偏見で飯豊山荘からの他登山道と難易度比較すると、 【技術的難度】 ダイグラ尾根>クサイグラ尾根>石転び沢>梶川尾根=丸森尾根 【体力的難度】 クサイグラ尾根>>ダイグラ尾根>石転び沢=梶川尾根=丸森尾根 ・・・こんな感じかな? ダイグラ尾根より危険性は低いと思いますが、体力的にはかなり厳しいです。 想像してた以上の薮尾根で、もし無雪期にこの尾根を踏破出来るならば、 東北の殆どの薮山は行けるのではないでしょうか。 ○梅花皮小屋 積雪期は諸事情により利用出来ない状態だったそうですが、 現在は問題なく利用出来ます。 ※詳細については、飯豊朝日登山者情報を参照 http://www.ic-net.or.jp/home/iide/ 水場(治二清水)は利用可能。 水量豊富で、夏期と同じ場所で利用出来ました。 ○石転び沢 雪の状態は良好。 谷自体が大きく崩れる危険性は低そうに思えました。 但し、山側からのブロック落下や小規模な雪崩は起きるかもしれませんので、あまり山側には近づかない方が良いです。 草付き(中ノ島)は、まだ極一部しか出ておらず。 今回は下り利用だったので中ノ島が無くても影響はありませんでしたが、 登り利用の場合は貴重な休憩場所が無い状態ですので、辛いかと思います。 |
写真
感想
クサイグラ尾根は、温身平から鳥帽子岳へと続く長大な尾根。
登山道は無く、無雪期は尾根全体がヤブで覆われる為、利用する者は殆どおらず。
ヤブが雪で覆われた積雪期に、極僅かながら利用される尾根らしい。
先週、主稜線上からこの尾根を眺めた際、上部は雪で覆われており、今であれば踏破可能に思えた。
これまで幾度も飯豊連峰には訪れたが、まだクサイグラ尾根は未踏。
今がチャンスと思い立ち、今回、クサイグラ尾根からの主稜線到達を試みた。
【5月24日】
朝5時、梅花皮荘の駐車場から出発。
飯豊山荘への車道は、まだ冬季通行止めだったので、歩いて山荘へと向かった。
飯豊山荘を過ぎて、温身平の先にある橋を渡った先がクサイグラ尾根の取り付き。
取り付きの傾斜は緩く、藪はさほど濃くなかった。
かつての登山道の名残も所々に残っており、最初は楽な登りが続いた。
しかし、しばらく登ると藪の密度は増してゆき、登山道は消失。
尾根上に雪はもう残っておらず、藪が一面びっしりと尾根を覆っている。
背丈を越えるような草や潅木が行く手を阻み、尾根の傾斜は緩くても、ペースは全く捗らない。
噂通りの厳しい薮尾根になってきた。
やがて、P1110の岩場に到着。
高さ3m程の岩場で、フィックスロープが付いているが、ロープは長年残置されていたようで、劣化が激しい。
いつ切れてもおかしくない状態なので、ここはロープには頼らず、岩を直登して通過した。
岩の難易度としては、一般登山の範疇では難しい部類であるが、沢登りで言えば初級レベル。
ほぼ垂直の岩であるが、手がかり、足がかりはしっかりしているので、それ程難しくは無かった。
岩場通過後は、更に藪漕ぎが辛くなる。
一見、突破不可能に思える位に細い樹木が密集しており、ここの通過は特に苦労した。
手足や背中のザックに激しく枝は纏わりつき、なんとか通過するも、
樹木密集地帯を抜けた後で、水筒を落とした事に気がついた。
落としても大丈夫なように、コードを付けていたのだが切れており、その先にあるべき水筒は、もはや藪の中。
戻って探したところで見つかるはずは無く、諦めて先へと進む。
この辺から、次第に焦りが出てくる。
水筒を失った事で、残る水は極わずか。
日没までに梅花皮小屋まで到達出来るか怪しくなってきたが、
尾根上に水場は無く、雪がある場所まで到達できなければビバークすら危うい。
時々、視界が開けて、尾根の先には白い雪稜が見えるが・・・
まだそれは遠かった。
なるべく汗をかかないように心がけつつ、藪を漕ぎ続ける。
標高1310m頃から尾根は広尾根となり、ようやく雪稜となった。
雪稜からは、尾根の傾斜は一気に上がり、この先は急登が続いているのが見て判る。
藪漕ぎで疲弊させた後に、雪の急登で追い討ちをかけるとは・・・
クサイグラ尾根はかなりの鬼尾根である、と思わずにはいられないが、
水不足と藪漕ぎに苦しめられた今の状況からすれば、まるで楽園にでも到着したかのように嬉しい景色。
雪を頬張り水分補給後、アイゼンを付けて雪稜の登りに取り掛かった。
広尾根上は大部分が雪の斜面であるが、融雪が進んでおり、藪が出ている箇所が多い。
藪漕ぎを避ける為、最初のピークは梅花皮沢側の斜面を大きく巻いて通過。
そして、巻いた後は、広尾根を直登する。
この直登部は、この尾根で一番とも思える急登で、石転び沢にも匹敵しそうな急な登りがしばらく続いた。
この急登を登り切る事で一気に標高を稼ぎ、もうクサイグラ尾根の踏破は確実か、と思われたが・・・
登り切った先に広がったのは、藪の細尾根。
気分は暗転、また藪漕ぎだ・・・
梅花皮沢側は大きく藪が出ており、かなりの距離を下降しなければ藪を巻く事は出来ない。
反対の桧木沢側は、切れ落ちた斜面。とても巻けるような斜度ではない。
要は、細尾根上の藪の中しかルートは無い。
もう尾根の終盤に差し掛かり、疲れきったところで再び藪漕ぎを強いられるのは、精神的にもかなりのダメージである。
これが最後の藪漕ぎ、と割り切って尾根上を強行突破。
これまで以上に強固な藪に辟易しつつも、藪を掻き分け潜り抜け、細尾根を通過する。
その後は、桧山沢側の斜面をトラバースして藪を迂回し、目前に見える主稜線上を目指す。
これが最後の難所で、長い急斜面のトラバースが続き、今回の登山では最も緊張させられた箇所だった。
トラバース後は、緩い雪稜を登って、主稜線上のクサイグラ分岐に到着。
厳しかったクサイグラ尾根が、ようやく終った。
尾根の取り付きから、主稜線到達までに要した時間、約10時間。
とにかく疲れる尾根だった。
これまで様々な尾根を歩いたが、その中でも最も疲れる尾根だったかもしれない。
足も疲れたが、藪を漕ぎ続けた為、腕の疲労も相当だ。
明日は確実に筋肉痛だな、と思いつつ、今宵の宿、梅花皮小屋へと向かう。
梅花皮小屋へ続く主稜線上は、梅花皮岳への登りのみが雪道で、あとは夏道。
今日はずっと道無き尾根を歩き続けたので、夏道の有難さが身に染みた。
16時30分、梅花皮小屋に到着。
その日の梅花皮小屋の利用者は、5人パーティ一組と、単独登山者、の計6名。
小屋の水場(治二清水)はもう利用できる状態になっており、雪で水分補給してきた私にとっては非常に有難い。
治二清水は、今年も旨かった。
【5月25日】
翌日も快晴。
早朝、北股岳に登った後、梅花皮小屋に戻り、下山準備する。
折角の快晴、どうせなら地神山辺りまで稜線を歩いてから丸森尾根を下山したかったが・・・
この日は用事があり、夕方までに宮城に帰らなければならなかった。
稜線歩きは、次の機会にし、早めに山を降りる。
最も早く下山できる石転び沢を下って、10時には温身平に到着。
梅花皮小屋からの下山に要した時間は、3時間。
昨日は10時間かけて主稜線まで登ったが、下りは3時間で終ってしまい、少し勿体ない気がした。
林道を歩き、飯豊山荘方面へ進むと、林道入り口に多数の車が駐車してあった。
“あれ?飯豊山荘までは車両通行止めのはずでは???”
近くに居た方に話を聞いてみると、昨日の午後に飯豊山荘までの通行止めが解除されたとの事。
もう一日早く解除されていれば、ここまで楽だったのになぁ・・・、と思いつつ梅花皮荘への車道を歩く。
飯豊山荘から梅花皮荘までは、約1時間の道のり。
“歩きたくないなぁ、誰か車で送ってくれないかなぁ〜?”
等と甘えた事を考えながら歩いていたら、道の途中で小国山岳会の方に声を掛けて頂き、梅花皮荘まで車で送ってもらえた。
クサイグラ尾根は厳しかったが、飯豊の登山者は優しい。
ますます飯豊が好きになったよ。
コメント
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Luskeさん、こんばんは。
クサイグラ、先週のコメントで気になると書いた
ものの、まさかこんなにひどい?尾根だとは!!
ちょっと心が痛いです・・・。
トラバースすごいですね
滑ったら止まりませんよね。
自分の小朝日のトラバースとは難易度が全然
違いますね。
そんなきつい思いをして到達した稜線からの眺めは
いつもと違って格別だったと思います。
次週も飯豊でしょうか?
水筒の救出・・・これ以上は書くのやめておきますね。
先週飯豊を歩いた時、去年より雪が少なめだと感じたのでクサイグラはさすがにキツいだろうなと思っていましたが、Luskeさん歩いてしまいましたか
ハードな藪漕ぎに加えて、急斜面のトラバース有りですか‥
ダイグラ尾根の下りも相当ハードだと思いましたが、こちらクサイグラも要求される体力度では負けてなさそうですね
来年、僕も挑戦してみようと思います
石転びを下るのが最短だと言うのは先週、僕も歩いてみて納得です。
10時間に及ぶ薮との激闘お疲れさまでした
クサイグラ尾根、予想以上の薮尾根でした
雪稜までは眺望も開けず、ひたすら辛い薮漕ぎが続きましたが・・・
雪稜からは視界が開け、そこからの眺めは素晴らしいです。
特に、お隣のダイグラ尾根の眺めが良く、ダイグラ尾根の展望地としては、飯豊で一番だと思います。
これまでの苦労が報われる眺めだと思いました。
とは言っても、もう一度登る気には、なかなかなれそうにありませんが^^;
水筒、どうしましょうか・・・
救出に行きたいところですが、またあの尾根を登るのは辛すぎます><
来シーズン、もっと雪の多い時にでも行ってみますか…
来年、クサイグラを登りますか
薮慣れしたtooleさんの気力、体力があれば登る事は可能だと思います^^b
今回、私が登った日は、時期的に遅すぎた感がありましたので、
もし登るのでしたら、もっと雪が残る時期を薦めます。
今回、尾根上の薮を避ける為に急斜面のトラバースを行いましたが、もし薮が雪で覆われており、楽に歩ける状態であれば、尾根上を歩けば良いのでトラバースの必要はありません。
雪が付く事で、逆に危険は少なくなると思います。
但し、雪の多い場合は、P1777の細尾根が危険箇所になりそうです。
今回は細尾根上には雪が無く、薮が出ておりましたが、もし雪が多い場合は桧木沢側(ダイグラ側)に雪庇が張り出し、ナイフリッジ状になると思われます。
梅花皮沢側は傾斜が緩いので大丈夫だと思いますが、桧木沢側は切れ落ちているので、滑落が懸念されます。
また、P1110の岩場も、雪が残っていると難しい場所になると思います。
この2ヶ所には気を付けて、適期を見極めて登頂目指して下さい
Luskeさん、はじめまして。
gaiaと申します。
私は飯豊連峰に憧れていまして、
毎年『今年こそは…』と思い続けております。
2週連続のLuskeさんの美しいレコに、改めてその思いが強くなってしまいました。
飯豊のアーベントロート&モルゲンロートの美しさにはため息ばかりです。
とても感動しました。
これからもビューティフルなレコを期待しております。
御覧頂き、ありがとうございます
ぜひ、今年こそは飯豊にいらして下さいませ。
小生の拙い写真だけでは、とてもその素晴らしさをお伝えできません。
直に、その雄大な景色を御覧いただきたいと思います。
これからは雪は消え、花に溢れる季節。
そろそろ、ヒメサユリも咲きだす頃で、
残雪期とはまた違った魅力の山域になるかと思います。
gaiaさんが初めて飯豊連峰を訪れた暁には、快晴になるよう祈っております
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