ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

記録ID: 3467391
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
氷ノ山

氷ノ山〜鉢伏山周回☆天の川を眺めに秋風の吹く稜線に

2021年08月27日(金) 〜 2021年08月28日(土)
 - 拍手
体力度
4
1泊以上が適当
GPS
08:20
距離
19.5km
登り
1,360m
下り
1,373m
歩くペース
速い
0.70.8
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

1日目
山行
2:49
休憩
0:02
合計
2:51
14:29
26
15:03
15:04
25
15:29
15:29
32
16:01
16:01
46
16:47
16:47
33
17:20
2日目
山行
4:33
休憩
0:25
合計
4:58
5:22
11
5:33
5:35
5
5:40
5:40
5
5:45
5:45
31
6:16
6:16
20
6:36
6:36
10
6:46
6:46
20
7:06
7:06
8
7:14
7:21
11
7:32
7:32
15
7:47
7:48
6
7:54
7:54
42
8:36
8:46
4
8:50
8:50
13
9:11
9:15
13
9:28
9:28
27
9:55
9:55
25
10:20
10:20
0
10:20
ゴール地点
天候 晴れ
過去天気図(気象庁) 2021年08月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
福定の親水公園駐車場へ
二日目は朝10時の下山時点で第二駐車場まで満車
コース状況/
危険箇所等
良好に整備された一般登山道
特に危険箇所なし
その他周辺情報 下山後は万灯の湯に
http://www.mandonoyu.com

八鹿の道の駅に隣接して天女の湯もあり
http://www.togayama-tennyo.jp/onsen/
スキー場の民宿街を抜けると山間に美しい棚田が広がる
登山口となる親水公園はさらにその奥に
2021年08月27日 14:15撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
6
8/27 14:15
スキー場の民宿街を抜けると山間に美しい棚田が広がる
登山口となる親水公園はさらにその奥に
2021年08月27日 14:14撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
3
8/27 14:14
スキー場から正面に眺める鉢伏山
2021年08月27日 14:59撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
1
8/27 14:59
スキー場から正面に眺める鉢伏山
登山道に入るとトリカブト
2021年08月27日 15:09撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
5
8/27 15:09
登山道に入るとトリカブト
ヤマジノホトトギス
2021年08月27日 15:11撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
4
8/27 15:11
ヤマジノホトトギス
東尾根に乗ると自然林の尾根に
2021年08月27日 15:41撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
2
8/27 15:41
東尾根に乗ると自然林の尾根に
ブナの繊細な根
2021年08月27日 15:48撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
3
8/27 15:48
ブナの繊細な根
ブナの大樹が次々と現れる
2021年08月27日 15:55撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
2
8/27 15:55
ブナの大樹が次々と現れる
連理の樹(樹が成長過程で癒合したもの)
2021年08月27日 15:57撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
7
8/27 15:57
連理の樹(樹が成長過程で癒合したもの)
2021年08月27日 16:04撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
8/27 16:04
一ノ谷の水場のブナの大樹
2021年08月27日 16:16撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
4
8/27 16:16
一ノ谷の水場のブナの大樹
人面岩・・・確かに人の顔のようにも見える
2021年08月27日 16:23撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
8
8/27 16:23
人面岩・・・確かに人の顔のようにも見える
気の早いナナカマドの紅葉
2021年08月27日 16:55撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
2
8/27 16:55
気の早いナナカマドの紅葉
千本杉・・・らしい
2021年08月27日 16:58撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
2
8/27 16:58
千本杉・・・らしい
なだらかな木道には
2021年08月27日 16:59撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
8/27 16:59
なだらかな木道には
アキアカネが数多く
2021年08月27日 16:59撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
2
8/27 16:59
アキアカネが数多く
もうすぐ山頂
2021年08月27日 17:16撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
1
8/27 17:16
もうすぐ山頂
登山道周囲の熊笹越しに北に鉢伏山
2021年08月27日 17:16撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
4
8/27 17:16
登山道周囲の熊笹越しに北に鉢伏山
古生沼に沼はなく湿地となっている
湿地の草には秋の気配
2021年08月27日 17:17撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
2
8/27 17:17
古生沼に沼はなく湿地となっている
湿地の草には秋の気配
日が陰った湿地
2021年08月27日 17:18撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
1
8/27 17:18
日が陰った湿地
山頂から鉢伏山を望んで
2021年08月27日 17:26撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
3
8/27 17:26
山頂から鉢伏山を望んで
西の空は雲が多い
雲の隙間から溢れる薄明光線
2021年08月27日 17:27撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
8
8/27 17:27
西の空は雲が多い
雲の隙間から溢れる薄明光線
2021年08月27日 17:30撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
1
8/27 17:30
南には三の丸からの笹原の稜線
2021年08月27日 17:32撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
3
8/27 17:32
南には三の丸からの笹原の稜線
小屋に入ってまずは乾杯
2021年08月27日 17:44撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
11
8/27 17:44
小屋に入ってまずは乾杯
最初の一品、ゆず山椒を和えたすずこの水煮と地元の八鹿豚の燻製ハムの味噌漬け
2021年08月27日 17:57撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
15
8/27 17:57
最初の一品、ゆず山椒を和えたすずこの水煮と地元の八鹿豚の燻製ハムの味噌漬け
2021年08月27日 18:16撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
1
8/27 18:16
西の空が明るく輝き、因備国境の山々が薄明光線に浮かび上がる
2021年08月27日 18:17撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
12
8/27 18:17
西の空が明るく輝き、因備国境の山々が薄明光線に浮かび上がる
万願寺唐辛子とベーコン・しめじの蒸し焼き
2021年08月27日 18:30撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
5
8/27 18:30
万願寺唐辛子とベーコン・しめじの蒸し焼き
雲の下から夕日が一瞬だけ顔を出すが・・・
2021年08月27日 18:34撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
8
8/27 18:34
雲の下から夕日が一瞬だけ顔を出すが・・・
すぐにも太陽は西の雲に沈んでゆく
2021年08月27日 18:37撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
5
8/27 18:37
すぐにも太陽は西の雲に沈んでゆく
バターでキノコと鴨肉を炒めてリゾットに
2021年08月27日 19:24撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
10
8/27 19:24
バターでキノコと鴨肉を炒めてリゾットに
最後はパブリカとしめじ・ソーセージの蒸し焼き
2021年08月27日 20:04撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
8
8/27 20:04
最後はパブリカとしめじ・ソーセージの蒸し焼き
月の出
2021年08月27日 21:31撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
12
8/27 21:31
月の出
朝のブルーアワー
2021年08月28日 04:53撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
10
8/28 4:53
朝のブルーアワー
朝の避難小屋
この直後、雲が上ってきてあたり一帯はガスの中に
2021年08月28日 05:24撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
3
8/28 5:24
朝の避難小屋
この直後、雲が上ってきてあたり一帯はガスの中に
ガスが晴れて
朝陽を浴びる鉢伏山への縦走路
2021年08月28日 05:38撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
3
8/28 5:38
ガスが晴れて
朝陽を浴びる鉢伏山への縦走路
氷ノ山の肩から昇る朝日
2021年08月28日 05:47撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
6
8/28 5:47
氷ノ山の肩から昇る朝日
氷ノ山を振り返るとすっかり晴れている
2021年08月28日 05:48撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
5
8/28 5:48
氷ノ山を振り返るとすっかり晴れている
ブナの大樹の立ち並ぶ尾根に
2021年08月28日 06:03撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
2
8/28 6:03
ブナの大樹の立ち並ぶ尾根に
朝陽を浴びるブナの樹々
2021年08月28日 06:09撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
3
8/28 6:09
朝陽を浴びるブナの樹々
氷ノ山越のお地蔵様
2021年08月28日 06:18撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
3
8/28 6:18
氷ノ山越のお地蔵様
赤倉頭から氷ノ山を振り返る
2021年08月28日 06:23撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
1
8/28 6:23
赤倉頭から氷ノ山を振り返る
クワガタムシ
2021年08月28日 06:31撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
8
8/28 6:31
クワガタムシ
鉢伏山はまだ遠い
2021年08月28日 06:40撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
3
8/28 6:40
鉢伏山はまだ遠い
ブナの大樹を見上げて
2021年08月28日 06:53撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
3
8/28 6:53
ブナの大樹を見上げて
2021年08月28日 07:10撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
8/28 7:10
大平頭への広々とした樹林
2021年08月28日 07:13撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
3
8/28 7:13
大平頭への広々とした樹林
突然視界が広がり
緑のベルベットのような鉢伏山への稜線
2021年08月28日 07:31撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
14
8/28 7:31
突然視界が広がり
緑のベルベットのような鉢伏山への稜線
秋風に揺れるススキ
2021年08月28日 07:31撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
6
8/28 7:31
秋風に揺れるススキ
2021年08月28日 07:34撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
4
8/28 7:34
ススキの稜線を辿る
2021年08月28日 07:43撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
4
8/28 7:43
ススキの稜線を辿る
稜線を振り返って
2021年08月28日 08:16撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
2
8/28 8:16
稜線を振り返って
鉢伏山山頂へ
2021年08月28日 08:38撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
2
8/28 8:38
鉢伏山山頂へ
山頂
2021年08月28日 08:39撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
6
8/28 8:39
山頂
北東に妙見山(右)と蘇武岳(左)
2021年08月28日 08:40撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
3
8/28 8:40
北東に妙見山(右)と蘇武岳(左)
北に瀬川山
2021年08月28日 08:40撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
1
8/28 8:40
北に瀬川山
北に小代方面を望んで
2021年08月28日 08:40撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
8/28 8:40
北に小代方面を望んで
南東の方向
2021年08月28日 08:41撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
8/28 8:41
南東の方向
再びスキー場の向こうに氷ノ山を望んで
2021年08月28日 08:50撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
3
8/28 8:50
再びスキー場の向こうに氷ノ山を望んで
氷ノ山から辿ってきた稜線
2021年08月28日 08:53撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
3
8/28 8:53
氷ノ山から辿ってきた稜線
ゲレンデを下る
2021年08月28日 09:23撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
1
8/28 9:23
ゲレンデを下る
季節外れの紫陽花か
2021年08月28日 09:43撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
4
8/28 9:43
季節外れの紫陽花か
美しい色合いの秋紫陽花
2021年08月28日 09:49撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
3
8/28 9:49
美しい色合いの秋紫陽花
最後に天の川
2021年08月27日 20:35撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
16
8/27 20:35
最後に天の川
2021年08月27日 20:51撮影 by  E-PL6 , OLYMPUS IMAGING CORP.
15
8/27 20:51

感想

この週末は本来であれば群馬への出張の予定だったので、出張のついでに久しぶりに谷川連峰に出かけることを楽しみにしていたのだが、群馬県も緊急事態宣言の対象地域に含まれることになり、出張は直前でキャンセルとなる。代わりに泊まりがけでの山行を考える。家内が爽快な草稜を歩きたいと云うので氷ノ山から鉢伏山への周回を計画することにした。

扇ノ山の山頂の避難小屋も非常に魅力的なのだが、登山口までの運転が長いという理由で家内から反対される。

春日JCTで北近畿自動車道に入り損ねたため、福知山から9号線を西進することとなり、予定よりも時間がかかって八鹿に到着する。道の駅に到着すると平日であるにも関わらず駐車場には以外と車が多い。

道の駅でゆっくりとランチをとったあとで、土産物の売り場を覗くと、最後の一つのすずこの水煮があったので迷わず買い物籠に入れる。ここは朝倉山椒と呼ばれる山椒が特産品らしく、山椒を使ったものがいろいろとある。すずこに合わせるべく、ゆず胡椒ならぬ山椒も入手する。

国道9号線からハチ高原のスキー場に向かう県道に入り、道の両側に山が迫るようになると山間の道の両側には昭和の雰囲気の漂う民宿街が忽然と現れる。次々と現れる民宿街を過ぎて、左側の氷ノ山国際スキー場に向かうリフトと広大な駐車場が現れると、スキー場に向かう林道となり谷奥には整然とした棚田が目に入る。

それまではかなり気温が高かったが、登山口となる福定の親水公園にたどり着くと谷間のせいだろうか、少し涼しさが感じられる。驚いたことに駐車場は満車に近いほどに車が停められており、他府県ナンバーの車も多い。

林道を歩き始めると、続々と上から降ってこられる登山者の方々とすれ違う。スキー場にたどり着くと、自動販売機には有難いことに電源が入っている。持参した水分の量に不安があったので早速、爽健美茶を一本購入する。ジュース類は売れ切れのものが多いのは登山者が購入するからだろう。自動販売機の裏にある温度計は27℃を表示していた。

登山道に入ると最初は植林の斜面を登ってゆく。東尾根に合流すると小さな避難小屋がある。
東尾根からは自然林となり、樹林の中に広々とした登山道が続く。稜線の上から差し込む斜陽がブナの樹林を黄金色の透明な光で満たしてゆく。

緩やかな尾根を登ってゆくと、女性四人のパーティーにすれ違う。下山の時間が遅いように思われたが、十分に明るいうちに登山口にたどり着くことは出来るだろう。すれ違いざまに「テン泊ですか?」と聞かれたので「山頂の小屋で」とお答えする。


登山道が尾根道から斜面をトラバースするようになると、沢音が聞こてくるようになり、一ノ谷の水場が現れるので、小滝の下で水を汲む。水場を見下ろすようにブナの大樹が聳えていた。斜面をトラバースする登山道沿いには緑の地衣類を纏った見事なブナの大樹が次々と現れる。ブナの木々の枝ぶりが均整のとれた佇まいに感嘆することになる。

笹原の中を流れる水の音が聞こえると、まもなく二つ目の水場が現れる。岩の下から滾々と湧き出す水は非常に冷たく、美味しく感じられる。先ほどの水場で汲んだ水を捨てて新たに水を汲みなおす。笹原の広がる尾根をトラバース気味に進むと小さな沢を通過したところで、三つ目の水場があり、ここでも湧き水が斜面から流れ出していたが、ここは通過することになる。

神大ヒュッテを通り過ぎると尾根には樹木は少なくなり、一面に熊笹が広がる草原を進むようになる。道の両側には背丈を越えるような熊笹が密生するようになるが、登山道の周囲は広く刈払いがされている。日中は真上から照りつけられとかなり暑そうだが、有難いことに山の陰だ。山の陰のせいだろうか、笹原の上を通り過ぎる風がますます涼しく感じられる。

所々に杉の木立があるが、勿論、植林されたものではなく、もともと生えていた杉なのだろう。杉の樹林の中で紅い葉が目立つ。気の早いナナカマドの葉が紅葉しているようだ。

山頂が近づくにつれ、空気はますます透明感を増してゆく。あたりには蜻蛉が多く見られるようになる。慌ただしく飛び交うアキアカネが過ぎ行く夏への哀切を物語っているようだ。

山頂の手前では地図では古生沼と記されているが、おそらく沼は干上がってしまったのだろう。沼地の代わりに湿地が広がっている。西日本で唯一の高原性湿地らしい。湿地に生える草に混じるベージュ色が秋の気配を感じさせる。

山頂にたどり着くとテントが二つ張られており、若い男性がおられた。避難小屋の中には誰もおらず我々で独占させて頂く。小屋の中に入るとむっとした空気が籠っている。小屋の温度計は23℃を表示していたが、小屋の窓を開けて換気をするうちにすぐにも21℃まで気温は低下する。

この氷ノ山は鳥取県側の若桜から三ノ丸を経由して登った時以来なのだが、その時は雨に濡れたサンカヨウが目的だったので、この好展望の山頂はガスの中であった。しかし肝心の雨は降らずに下山路で出遭ったサンカヨウの花びらは白いままであった。ちなみにサンカヨウの花びらは雨が降り始めてすぐに半透明になるわけではないらしい。

この日は文句なしの360度の好展望が広がっている。西の空には雲が広がっている。どうやら夕陽を眺めることは期待できなさそうだ。まずはビールで乾杯すると、早速、夕食に取り掛かる。最初はすずこにゆず山椒と同じく道の駅で手に入れてきた八鹿豚の燻製ハムの味噌漬けを合わせる。このハムも美味であった。次いで、万願寺唐辛子と舞茸、ベーコンをオリーブオイルで蒸し焼きに料理する。

西の空に広がる雲の下がオレンジ色に明るく輝いている。雲の下から溢れる薄明光線が西の山を
やがて雲の下から夕日が顔を出し、窓から差し込む夕陽が小屋の中を明るく照らす。しかし、夕日はすぐにも西の空にかかる雲の彼方へと沈んでゆく。残照を眺めうちに鴨肉とキノコのバター・リゾットが出来あがり、赤ワインを合わせる。

食事を終えると小屋の外は急速に暗くなっていく。先ほどまで上空を広く覆っていた雲が消え、満天の星空が広がっている。頭上にわずかに雲が残っているのかと思ったが、夜空に目を凝らすとそれは天の川であることに気がついた。前回、白山の小桜平でも綺麗な天の川が見えていたのだが、家内は天の川を見そびれたので、今回は天の川を見ることが出来るのを楽しみにしていたのだった。空気の透明感のせいもあるのかもしれないが、標高1500mの高さでも白山に十分に匹敵する美しい夜空が見えるのだった。

夜中にふと目が醒めると東の空から赤い月が昇ってくるところだった。早速、月の出の写真を撮ろうとカメラを取り出すが、カードが書き込み禁止の状態になっている。おそらく昨日に撮った天の川の写真のうちいずれかのファイルに破損が生じたのだろう。今回はこういう事態が生じる可能性が脳裏をかすめ、出発間際にもう一枚、予備のSDカードを持ってきたお陰で写真を撮ることが出来る。

月の出を眺める機会は少なく、最近の記憶を思い返してみると、霊仙山や南アルプスの茶臼小屋など、専ら山の上に泊まる時だ。日の出と同じように昇ったばかりの月は赤く見えるということを再認識する。月が出たあとは夜空の星々は急に数が少なくなり、天の川も見えなくなっていた。

夜中に風の音で再び目が醒める。外はかなりの強風が吹いているようだ。窓の外をみるといつしか空には広く雲が広がっていた。

4時半に起床し、窓を開けるとまもなく東の空がオレンジ色に染まってゆく。上空の天気の移り変わりは目まぐるしい。夜半に広がっていた雲はすっかりなくなり、快晴の空が広がっているようだ。

出発の準備を整えて小屋の外に出る。テントの方も。「風は大丈夫でしたか?」と聞くと「風が強くて、夜はほとんど眠れませんでした」とのことであり、なんともお気の毒だ。とはいえ、小屋の中に寝ていた家内も風の音であまり眠れなかったらしい。

テントの男性と話しているうちに鳥取県側から霧が昇ってきたかと思うと、瞬く間に山頂一帯はガスに包まれる。山頂でのご来光は諦めて、テントの男性にご挨拶して出発する。

こしき岩と呼ばれる大きな岩を巻くと、尾根からは急に霧が晴れて、あたりの展望が広がる。振り返ると山頂の上の方はすっかり晴れて、山頂の避難小屋がいるではないか。もう少し辛抱強くご来光のタイミングまで待っておけば良かったと思うが後の祭りである。

尾根の先ではこれから向かう稜線が朝陽を浴びて黄金色に輝いている。稜線を先に進むととすぐにも氷ノ山の肩から眩い光を放つ朝陽が視界に入る。
トレラン・スタイルの男性と出遭うので「どちらからですか?」とお伺いすると、なんとハチ北高原を朝の4時40分に出発されたとのこと。

登山路は氷ノ山越にかけての樹林の中へと入ってゆく。山の陰のせいでまだ朝陽の届かない樹林の中はなんとも清々しい空気が漂っている。次々とブナの大樹が現れ、美しい樹林の中を歩く悦びを再認識させてくれる。

赤倉頭にかけてわずかに登り返すと、尾根筋には笹原が広がるようになり、背後に再び大きく氷ノ山のシルエットが広がる。朝陽を浴びる笹原から東側に好展望を眺めながら、なだらかな稜線を進む。

大平頭(おおなるがしら)から樹林の中を下降してゆくと後ろから熊鈴の音が聞こえ、トレランの単独行の男性が追い抜いていった。

やがて忽然と視界が開けると、鉢伏山にかけて緑のベルベットのようなススキの原が広がっているのが目に入る。陽射しを浴びるススキの穂がそよ風に揺られてはキラキラと柔らかなベージュ色の輝きを放っている。

ススキの原を歩き始めると強い陽射しを受けることになるが、なだらかな稜線には涼しいそよ風が吹いているのが有難い。この稜線は日中は暑さが心配されるので、なるべく朝の早いうちに鉢伏山までたどり着きたい思っていたのだった。そよ風に感じる透明感は紛れもなく秋のものだろう。

小代越の鞍部にかけて稜線を緩やかに下ってゆくと小さな子供を背負った母親を含む家族連れとすれ違う。子供が父親に「どこまで行くの?」と聞く無邪気な声が背後から風に乗って聞こえてきた。

スキー場を通過すると再び樹林の中に入ると、やはり木陰の涼しさが嬉しい。わずかな登りで鉢伏山の山頂にたどり着く。山頂には氷ノ山の避難小屋に似た小屋があるが、こちらはスキー場関連のものらしい。山頂はハチ高原からだけでなく、ハチ北側からもリフトが上ってきており、リフトが物物しい雰囲気ではあるが、ひと気のない山頂で涼風に吹かれながらしばしば360度の好展望を楽しむ。

鉢伏山から東尾根を下ると、気がつくと薄い色合いのヒョウモンチョウが飛んでいる。鉢伏山に生息するというウスイロヒョウモンチョウモドキだろうか。望遠レンズを装着すれば写真を撮る機会もあったのかもしれないが、残念ながら広角の単焦点レンズでは蝶の写真を撮るべくもなかった。

尾根道はすぐにも舗装林道と合流する。舗装路を降り始めると氷ノ山越の手前で出遭ったトレランの男性が坂道を登ってくる。まもなく右手に分岐するゲレンデへの林道があるので、林道を歩いてゲレンデに入ると、ゲレンデを下降する。ゲレンデの中には所々に浅い溝があり、気がつかずに溝に足が嵌ってしまうと足を取られて転びそうになるので要注意だ。

ゲレンデの下部の民宿街からは鉢伏に再び舗装路を下るつもりでいたが、樹林の中を通る近道があることに気がつく。案内標も何もないのでこの道を下る人はあまりいないのだろうか。植林の中を下るとすぐにも広い林道に出る。

林道の脇では季節外れの紫陽花が青い花を咲かせていたが、美しい色合いの秋紫陽花も数多く見られる。以前、花屋から高原の寒暖の差が大きいところでは美しい秋紫陽花の花が出来るという話を聞いたことをふと思い出す。

鉢伏の旅館街に下ると古い旅館の一つで解体工事が行われていた。ここもかつては相当な賑わいを見せていたのだろうが、今や客足も少ないのだろう。旅館を解体する作業員以外には人の気配の感じられない旅館街から階段を降りて大きな体育館に至ると「魚つかみ」の案内板に導かれて八木川沿いの林道に降り立つ。

対岸には行きに眺めた棚田が再び目に入る。あとは親水公園まではわずかに600mほどの登りだ。しかしアスファルトから立ち昇る熱のせいか、急に暑く感じられるようになる。まだこの時間だから暑さはマシなのだろうが、午後は相当に暑くなりそうだ。

親水公園の駐車場に戻ると満車状態であり、林道を挟んだ第二駐車場も満車であった。流石に人気の山だ。わずかに空きがあるのは既に下山された方がおられるからだろう。

下山後は万灯の湯に立ち寄るが、11時に開いたばかりであり、広々とした浴場には他には一人の入浴客がいるばかりであった。温泉から外に出ると空には雲が広がっており、蒸し暑く感じられる。季節が急に夏に舞い戻った感じだった。

お気に入りした人
拍手で応援
拍手した人
拍手
訪問者数:370人

コメント

こんばんは やまねこさん やまいずさん

もう秋の気配が感じられますね

天の川 何年も見ていません😢

夕食がおいしそうです
2021/9/1 21:52
道の駅で最後の一つのすずこを入手することが出来たのが望外でした。私は東北への出張で何度か口にしたことがあるのですが、関西で手に入るとは思っておりませんでした。

京都でも空気の澄んだ秋の夜には天の川は見ることが出来るのではないかと思うのですが、そのうちtryしてみたいと思います。
2021/9/1 23:28
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

コメントを書く

ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。
ヤマレコにユーザ登録する

この記録に関連する登山ルート

ハイキング 氷ノ山 [日帰り]
技術レベル
2/5
体力レベル
3/5

この記録で登った山/行った場所

関連する山の用語

この記録は登山者向けのシステム ヤマレコ の記録です。
どなたでも、記録を簡単に残して整理できます。ぜひご利用ください!
詳しくはこちら