烏川本沢〜常念沢(敗退)〜蝶ヶ岳ピストン


- GPS
- 32:00
- 距離
- 16.6km
- 登り
- 1,915m
- 下り
- 1,911m
コースタイム
天候 | 9/20 快晴 9/21 晴れのち曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2021年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
烏川本沢:滝無し。水量多めで渡渉が連続する。岩はヌメっており神経を使う。 常念沢:標高1820m付近から滝場が連続するようになると思われるが詳細不明。 三股〜蝶ヶ岳:ほぼ樹林帯。木の階段が随所に出てくる。 |
予約できる山小屋 |
蝶ヶ岳ヒュッテ
|
写真
感想
常念岳に南東よりダイレクトに突き上げるこの沢の記録は、ネットでは皆無に等しい(というか見つけられていない)。しかし、Googleマップの衛星画像で見ると、少なくとも上部には複数の滝と思しき地形が認められる。
沢としてはかなりアプローチが良く、なおかつ名峰常念岳に突き上げているにも関わらず記録がほぼ無いのは、見どころが無いからなのか、それとも突破困難な滝が出てくるからなのか…?
もしすんなりと遡行できたとすれば、常念岳〜蝶ヶ岳を縦走している妻と稜線上で合流し、蝶ヶ岳でテン泊、翌日三股へ下山というシナリオを描いていたが…
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9月19日(日)
久々の沢装備(自分のみ)で妻とともに三股より出発。まだ薄暗い左手の烏川本沢からは、轟轟と沢音だけが聞こえて来る。
三股で連絡先と登山計画書の提出先サイト名のみ用紙に記入して提出。この先で、右手の登山道から常念岳に向かう妻を見送り、烏川本沢に沿って進む。
ほどなく吊り橋が現れ、ここから入渓。
すぐ後ろに複数の登山者がいたので、突如一般登山道を外れてどこに行くのかと驚かせたかも…
烏川本沢は水量が多い。
昨日の台風による雨はさほどではなかったはずだが、多少は影響はあるかもしれない。初っ端から渡渉を繰り返して進んでいく。
東面の沢なので、最初は薄暗かったものの、すぐに朝日に照らされるようになる。奔流から湧き立つ霧粒に太陽光が乱反射し美しい。
特に困難な箇所が出てくる気配はなく、淡々と遡行を続ける。
それにしても、この沢の岩は何故だか悉くヌメっていて、気が抜けない。
ちなみに、Google Mapの衛星画像だと烏川本沢にもいくつか水流が白っぽくなっている箇所があり、地理院地図の「それらしくない」地形とは裏腹に何かあるのではないかと期待半分不安半分だったが、どうやら滝ではなく水の滾りが白っぽく写ったのが正体だったようだ。
何ということはなく、常念沢に到達。
もしかしたらこのまま何もなく終わるのかと思いつつ、烏川本沢に比べ水量を減じた常念沢を引き続き遡行していく。
標高1680mで初めてちょっとした滝が出てきくるが、これは右手からやり過ごせる。
標高1820mあたりから左岸から枝沢が滝となって流入し、本流にも小滝が出てきてやっと良い雰囲気になってきた…と思った途端、標高1845mで右上にCSのある6メートル滝が出現。
まず左壁は傾斜がキツく、単独では一見して不可。
流芯右側は中段テラスまでは登れそうだが、その先CSに阻まれそう。ただし、CSの手前から右上に抜けられる可能性があるほか、CS下の暗がりに奥から光が差し込んでいるのが見え、もしかしたら胎内潜りのように突破できる可能性がある。
右から小さく巻ける可能性もあるが、手がかりに乏しそうに見え、上部はどうなっているかわからない。単独ではあまりやりたくない感じ。
高巻きをするなら左岸だが、藪が濃く傾斜も強そう…
ということで、まずは流芯右側の壁から取り付く。ヌメって微妙な感じなので、念の為ザック引き上げを念頭におき、末端にザックを結びつけたザイルを引きつつ中段まで登る。中段のテラスに移るところの一歩があんまり良くない感じ。
中段に移ったのは良いが、結局CS裏側の穴は小さく、抜けられなさそう。
CS手前から右上に抜けるのもリードが無いとやっぱきつそう。
結局このルートは諦めざるを得ないことになったが、中段から右壁に引き返す一歩がフリーでは嫌な感じで、考えた末安全を期してハーケンを2本打ち、流動分散でザイルの支点を作り、ザイルを手がかりにして降りることにした。
(結局この時利用したハーケン、スリング及びビナは残置しました。すみません。。)
次に右から小さく巻くルートをちょっと見るが、取り付きが不安定な泥壁でやっぱり単独だと少し怖く、あまり真面目に見ずに終了して右の高巻きにかかる。
少々手前戻って何となく尾根状になった部分から取り付くが、ネマガリタケが急斜に密生したタチの悪い藪で、1分間に2メートルくらいしか進まない燦々たる状況…
何とか滝より少し先に進んだものの、藪の傾斜が一向に緩まず下降点も見出せず腕力だけ消耗する状況となり、遂に撤退決定。
(この藪漕ぎの間にハンマーをハーネスに連結していた細引きが切断し、ハンマーまで失ったことが後から判明…かなりの損害である。。)
標高1820mの枝沢から抜けられないかと一瞬目論んだものの、この分だと何が出てくるか分からず、素直に本流を下降することにする。
高揚感が無くなったせいか、下降のほうが長く感じる。
ヌメった岩で滑らないよう細心の注意を払いながら下降し、ようやく吊り橋に到着。
登山道脇の木に沢関係の装備をデポし、一般登山道から蝶ヶ岳を目指すことにする。
時刻は14時をまわっており、幕営予定の蝶ヶ岳ヒュッテへの到着は日の入りギリギリになりそうだ。
吊り橋では電波が無かったが、少し登って傾斜が緩んだあたりから断続的に電波が入るようになり、妻に行動予定変更についてLINEを入れる。
登山道の途中で常念沢を正面から望むことができた。
沢の上部は結構立っている様子が窺える。そして、下流部の様相とは打って変わり、複数の顕著な滝が連瀑を形成していることが認められる。
登山道上部では時折常念岳が望めるものの、基本的には単調な樹林帯で淡々と登っていく。木段が随所に出てくるが、歩幅が強制的に決められるせいか地味にしんどい。
それでも、尾根上部では黄色く色づいた木々や真っ赤に種子を実らせたナナカマド、独特の形をしたヒロツリバナなどが目を楽しませてくれる。
結局妻より少し早めにヒュッテ着。(地震の発生とはほぼ同時)
メジャーな山域にはあまり来ないが、テントの数を見て連休の北ア人気を改めて実感。
その後無事合流し、妻の持ってきてくれたテントを、ギリギリ見つけられた平坦な空きスペースに設営。自分は極力荷物を軽くするためペラペラの夏用シュラフを持ってきたが、最低限の睡眠はとることができた。まあ最低限だが…
9月20日(月)
今日は下山だけなのでお気楽モード。
のんびりモルゲンロートを鑑賞したのち、小屋前のベンチで安曇野の平野を一望しながら優雅にレモンスカッシュをいただく。
昨日よりは大気が不安定な感じで、早々に雲が湧き始め、ガスった森の中を下っていく。脚だけでなく昨日の藪漕ぎでネマガリダケを必死につかんでいた腕も筋肉痛気味。。
なんだが登る時よりも道程が長く感じるのはいつものことだ。
登る時には見落としていたお決まり(?)のゴジくんを今度はちゃんと写真に収め、吊橋のところにデポした沢装備もザックに収め、最後はだらだらと林道を歩いて駐車場に帰還した。
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常念沢は消化不良もよいところですが、とりあえず記録を見ない(見つけられていない?)沢の様相が少しでも分かったのは良かったと思っています。
記録を見ていない沢に行くというのは実は初めてですが、単独という事に加え、未知であるということで、かなり行動が慎重になっていた気がします。
今回は6mCSで引き返してしまっいましたが、ちゃんと技術のある人が行けばおそらくあまり苦労せずに(CS手前or右からの小さめの巻きで)登れるのではという感じだったので、あの滝の先にどのような世界が広がっているのか誰か教えてくれないだろうか…と思いつつ、今回のレコを書くのはここでおしまいにします。
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