和賀山塊 錫杖の森・秋の喜左衛門長根を行く


- GPS
- --:--
- 距離
- 16.3km
- 登り
- 1,530m
- 下り
- 1,530m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
*秋田県側から和賀岳へ登る場合、通常は真木林道奥の甘露水からですが、もう一つ、白岩岳を経由するルートがあります。白岩岳から小杉山へ至る全長約5kmにも及ぶ長い尾根は、喜左衛門長根と呼ばれています。途中に「錫杖の森」という難所があり、初心者の方にはお勧めできません。 *白岩岳登山口への入角沢林道約5.5Kmは、和賀岳登山口への真木林道よりも荒れています。普通車でやや強引に登山口駐車場まで進みました。駐車場には7・8台程度駐車可能で、いっぱいになることは、まずありません。 *白岩岳への登山道は、刈払いされたしっかりした道ですが、林業関係の道と交る部分もあり、下山時は注意が必要です。 *白岩岳山頂は、展望はありません。少し手前の行太展望地で北〜西の展望を楽しむか、南へ15分ほど灌木の中を進んだ先にある白岩薬師で楽しむのがお奨めです。白岩薬師からは、和賀岳や羽後朝日岳を始め、仙北平野など雄大な景色を楽しむことができます。 *白岩岳から兎森(1078m)、さらに錫杖の森手前にかけては、ブナの美しい、ゆったりとしたアップダウンの尾根道が続きます。道はしっかりしています。 *錫杖の森はこのコース唯一の難所、急に切れ落ちたキレットになっています。岩はもろく、補助ロープはありますが滑りやすく、さらに灌木の中、若干のルートファインディングも要求されます。ほんの3mほどですが、両側が切れ落ちた岩場もあります。 *錫杖の森からP986mにかけては、藪がかなりうるさくなりました。下山に使う際は、迷う心配が出てきた感じもします。深い森の登りから解放された後、お奨めの展望地から小杉分岐にかけては、広く十分に刈払いがされていました。 *私は今回、和賀岳山頂までは登っておりませんが、登頂してきた同行者のお話では、きれいに刈払いがされていたとのこと。ただ、わざとなのか、20mほど笹薮に覆われた部分が残されていたとのことです。 |
写真
感想
和賀岳に登る人の多くは、秋田側の甘露水からのピストンで歩かれるが、天気が良くて時間に余裕があるなら、ぜひお奨めしたい展望スポットがある。薬師岳に上がってから和賀岳に向かう際、途中の小杉分岐で東へ向きを変えるが、この分岐から北西の白岩岳方面へ5分ほど下った地点である。遥か足元には堀内沢水系八滝沢が沢音を響かせ、緑濃い原生林が目の前に広がり、長く延びる支稜線の先には羽後朝日岳が女王と形容したいほどの美しい姿を見せている。
2年前の秋に初めてこの地点に立った時、足場があまり良くないにもかかわらず、しばらく立ち去ることができなかった。白岩岳を越え、難所・錫杖の森を通過し、深い森を一人延々と登り歩いた末に突然目の前に広がった美しい光景。しばらくはまぶたに焼き付いて消えることがなかった。
ところで、ご縁というのは不思議なものである。9月に新潟の山々へ出かけた際、出会った多くの人の中で私はお一人にだけ、自分がヤマレコユーザーである旨を話した。その方が秋田のカマダムというユーザー名を覚えていてくれて、ご自分でもユーザー登録をされ、メツセージをくださったのだ。Kさんとおっしゃるこの方は、なんでも300名山を目標にしていて既に250ほど登り、残りは東北が多いとのこと。ちょうどこの3連休に秋田駒〜乳頭の縦走を計画しているとのことで、情報提供のご依頼だった。
秋田駒八合目から乳頭縦走ならば、お住いの首都圏からでも2日間あれば十分、せっかく新幹線で遠路いらっしゃるのだからもう一山、岩手山は登られているとのことなら和賀岳がお勧めだろう。越後の山で私はKさんにサラッと追い抜かれた。その健脚ぶりは後ろから見ていてすぐにわかった。この方には甘露水からのピストンより、和賀岳からの帰路は喜左衛門長根、白岩岳経由のルートがお奨めだ。途中の難所・錫杖の森も、北アの岩場ルートをこなしているKさんには楽しいアクセントになるに違いない・・
14日早朝、宿泊先の中里温泉へお迎えに上がる。前日に強風の中にもかかわらず秋田駒〜乳頭縦走を昼までに終えたというKさんは、疲れが残っている様子も無い。東の方角には和賀山塊の黒い稜線がくっきりと夜明けの空に浮かび上がっている。最高の登山日和になりそうだ。
真木林道へ車を走らせ、和賀岳入山口でKさんを降ろし、私は白岩岳登山口へ車を回す。6時43分登山開始、間もなく単独男性二人に追い抜かれた。うちお一人は私より年配に見えたがとても軽やかな足取り、100名山のうち80ほど登っていて、今日は白岩岳の後、真昼岳へ向かうという。私が途中で落としたボールペンを見つけて、車の窓に置いておいてくださった。この場を借りて感謝したい。
さて、過去に一度歩いた道は不安なく、青空が広がる中、左手に時折秋田駒や羽後朝日岳の姿を垣間見ながら進む。錫杖の森を過ぎてからは藪がうるさくなった。やはり二年前より伸びている。喜左衛門長根のちょうど最低鞍部で、Kさんから和賀岳に着いたというメールが入る。まだ9時半、和賀岳へ3時間強で登ってしまっている。
和賀岳山頂でのんびりしていただいたKさんとは、私が小杉山下の展望地から出発したところで落ち合った。Kさんには展望地で待っていただくことにし、小杉分岐まで登る。新雪をまとった鳥海山の姿、緑がまぶしく光る県境稜線を拝むことができて幸いだった。
帰路はKさんと先頭を交代しながら歩く。錫杖の森にさしかかると、Kさんはストックを仕舞い水分補給、私もそれに倣う。Kさんは岩場の通過も軽やか、私のデジカメで一枚も撮らなかったのが失敗だ。
兎森付近では、美しいブナ林を足早に通過してしまうのがもったいなく思えて、先行するKさんにお願いして、倒木に腰かけて休憩をとった。お昼を過ぎたやわらかい光が、ブナの黄葉を通して降り注ぐ。まるで自分の呼吸と自然が同化するようなひとときである。長い、長い沈黙の時間が流れた。呆けた横顔のオヤジを慮り、静かでかけがえのない時間を提供してくれたKさんに感謝したい。
予想通り、白岩岳までは誰にもお会いすることはなかった。Kさんからは、地元のベテランしか歩けないようなコースを案内してくれたと感謝された。私はベテランではないが、このコースを歩いた人は極めて少ないのは事実、私などよりずっと経験豊富で健脚のKさんにこのコースをお奨めし、満足していただけたことは素直にうれしく思う。Kさんが登られた多くの山々の中で、東北の和賀山塊が「いい山、心に残る山」リストの一つとしてあり続けるなら、尚うれしいことだなと思う。
Kさんを送り届けた田沢湖駅からは、正面に大きく羽後朝日岳が見え、またしばらく立ち去り難かった。
追記:Kさんがレコをアップしてくださったので紹介します
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-359951.html
コメント
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北東北が晴れた日はkamadamデイですね。
寡作ですが、レコはどれも素晴らしい
白岩岳からの和賀、いつか歩いてみたいです。kさんへのご推薦コース、以前tooleさんにも歩いてもらった道でしたね。錫杖の森、kさんの華麗なステップを撮らなかったのはkamadamさん、きっとずっと後悔するでしょう、っていうか私が見てみたいだけ
この日、小又山頂から和賀も見えていたのですが、済みません、岩手山に気を取られて写真撮れませんでした。小又の写真ありがとうございます
14日は本当に素晴らしい天気でしたね。月山まで見えたのにはビックリでした
錫杖の森ではKさんのスマホで撮っていて、自分のデジカメ撮影を忘れてましたよ
いつも晴れた日にだけ出かけるせいもあるでしょう、でもいいコースです。次はkiyoshiさんもぜひご一緒に
山歩きしていると、思わぬ出合いってありますよね。
僕も数年前、八ヶ岳を歩いていてお会いした方のすすめでこのヤマレコを始めたのでした
このコースは単独だと普通はピストンになりますからね。kamadamさんのようなやさしいお方の援助がないと歩けないルートですね
でもアルプスや甲信越の険しい山々を歩いたことがある方であれば、おそらくあっさりのコースだと思います。
僕は小杉山から白岩岳にかけてのあまり手入れされていないブナの深い森の稜線が好きですね。他県の方に自慢しても良い場所だと個人的には思います
私よりもずっと他県の山を歩いているtooleさんに、「自慢しても良い場所」だと太鼓判を押してもらえると私もうれしいというか、ホッとしますよ
人の手の入らない深い原生林、言葉ではうまく言えませんが、身体やスピリチュアルな面では、きっと癒しがあるのでしょう。大切にしたいルートですね
こんばんは
白岩岳から錫杖の森を経て小杉山、そして和賀岳へは・・・未踏でして・・・いつか行ってみたいと思っていました。
和賀岳には年に1度は登ってますが・・・小杉の分岐から先には足を踏み入れたことがなく・・・いつも眺めて終わっていました。
やはり予想通りの良いコースですね。錫杖の森・・・挑戦してみたいです。
ブナの森は・・・そうですね・・・とても癒されます。いつまでも大切にしたいものですね。
kさんも大満足されたことでしょう。
お疲れさまでした。
甘露水口からと白岩岳からのルート。
この二つのアプローチでようやく和賀岳に近づいた〜という気がします。
和賀岳登頂してもいろんなルートを歩いてこそ!ですからね
白岩岳からいつか歩いてみたいですが
錫条の森という修験道の世界のような場所にまだ気持ちが強くなれず〜の状態。
しかし
kさんの健脚ぶり、素晴らしいです
kamadamさんがご案内するにはぴったしの方でしたね
本当の意味で「地元のベテラン」750RSさんでも、このコースは未踏でしたか
キノコもありそうですよ
羽後朝日が見える好天の日がお勧めです
山慣れたmeikenさんにはお勧めですよ〜!機会があればご案内いたします
樹林帯の中を歩く距離が長いので、女神山のような足元が隠れて歩き辛い大変さは、あまりありません。ただ、登りでは顔に灌木や笹があたってうるさいかも
Kさんには、ついていくのが大変でした。かろうじて、下り気味トラバースで、スパ長靴の威力で「速い」と言われました
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