【白山】「四塚山の池」 探訪記


- GPS
- --:--
- 距離
- 22.0km
- 登り
- 2,238m
- 下り
- 2,228m
コースタイム
天候 | 曇りのち雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
※ 山行ジャンルを「無雪期ピークハント」としましたが,四塚山の池までの最後のアプローチ区間で沢登りの装備(最低限,沢足袋or沢靴)が必要です。 【四塚山の池】 ・ 地形図上で,四塚山の西尾根の標高2130m付近に描かれている小さな池。登山道はなく,完全な藪尾根の中にある。 ・ 今回はアプローチとして,加賀禅定道の油池から南に降りる枝谷を下降し,目附谷支流の小又を300mほど遡行して,四塚山の西尾根に突き上げる小さな枝谷を登るルートを取った。 ・ 油池から南に降りる枝谷は,源頭部が水場となっており,道標及び踏み跡があって容易に入り込むことができる。小又まで下降する途中に最大3mほどの小滝がいくつか出てくる。いずれも比較的容易にクライムダウン可能だが,ぬめるので注意。 ・ 小又(目附谷支流)は意外なほど小滝が多く,今回は300mほどの区間を歩いただけにもかかわらず沢登り的にも結構楽しめる谷と感じた。いずれも直登可能。気温が低いため濡れるのを嫌って高巻いた滝もあったが,両岸が草付きのV字谷のため高巻き時は注意。 ・ 小又から四塚山西尾根に上がる枝谷は悪場はなく問題なし。 ・ 西尾根は胸丈ほどの笹とハイマツの藪に覆われている。池までは薄い獣道があるため,それをうまく辿れば藪漕ぎ5分でたどり着くことができる。 ※ なお,今回訪れた池のすぐ東側に,もう一つ小さな池が描かれているが,深い藪漕ぎによる時間的制約と,池の規模の小ささから,そちらの訪問は割愛しました。 |
写真
装備
備考 | ・ラバーソールの沢靴使用(登山道歩きが長いので,いつものフェルトでなくラバーを選択)。沢パートは若干ぬめりがあるので注意。 ・ロープなど沢登りの装備は念のため携行したが,使う場面はなかった。 |
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感想
地形図を眺めていて,道もない山奥にぽつんと池の記号を見つけると,何となくそこに行ってみたくなるのはなぜだろう。
白山・四塚山の西尾根の真ん中に小さな池記号があることは,ずいぶん以前から気がついていた。しかし,こういう小さな池記号は,実際に現地に行ってみると,がっかりさせられることが少なくない。水が干上がって池自体が消滅していたり,あったとしても池というよりは湿地のようになっていることが多々あるのだ。
しかし,最近になって,ネットで地理院地図の航空写真を眺めていて,たまたま四塚山の例の池の箇所に,紛うかたなき黒々とした水面が写り込んでいるのを見つけた。池は確かに存在しているのだ。しかも思ったより大きい。俄然,どんな池なのか見てみたくなった。
四塚山の西尾根の深い笹薮をかき分けていくと,突然ぽっかりと空が明るく開けて,そこに池があった。大きさは天池より一回り大きく,一周50mくらいだろうか。水は澄んでいて,水底には周囲のオオシラビソの木立が黒々とした影を落としている。
池の背後には四塚山が堂々とした大きな姿で聳えていて,その屏風のような岩壁に,目附谷左俣の源頭が厳しく食い込みながら,いくつかの高い滝を落としているのが眺められる。もし快晴ならば,この池を中心に素晴らしい山岳風景が展開したことだろうが,今日の四塚山は残念ながら山頂部に暗い雲をかぶっている。長年隠し続けてきた秘密の池のほとりに見慣れない人間が立っているので,山は機嫌を損ねているのかもしれない。
とにかく静かだ。その静けさの中で,潮騒のような音がどこか遠くでずっと鳴り続けている。眼下を流れる目附谷の瀬音のようにも聞こえるし,一面の笹藪が風にざわめく音のようにも聞こえる。耳を澄ませれば澄ませるほど,そのどちらなのか余計に分からなくなっていく。
空は一瞬だけ晴れたり,すぐに曇ったりする。池も明るくなり,また暗くなる。四塚山から吹き下ろす風が,水面に何枚もの波紋の扇を様々な角度で投げかけながら通り過ぎていく。
ここに来ることは,もう二度とないかもしれない。その思いが,余計にこの池のほとりから立ち去りがたくさせている。テルモスに入れてきた熱い紅茶をすすり,チョコレートをなめながら,笹藪の間に座り込んで,長いこと池が波紋を広げたり,また鏡のようになったりするのを眺めていた。ホシガラスが飛んできて,池畔のオオシラビソのまつぼっくりをコツコツとつつく乾いた音が,池の上に響いていた。
ふと気が付くと,池の水面に水の輪がひとつ,ふたつと広がって,その数は見る間に増えていった。一日中ぐずつき続けた空から,ついに雨が降り出したのだ。そこでようやく重い腰を上げた。最後に池を振り返ると,池は無数に重なり合った雨粒の輪で暗く埋め尽くされて,もう風に波立つこともなかった。
もうすぐこの池の黒い水面にも,白い雪片が消え入るように舞い込んで,やがて深い根雪に埋もれていくのだろう。これまで何万年も,人知れず繰り返されてきたように。そして私という一人の人間がそのほとりに佇んでいたある秋の一日など,まるで始めから存在しなかったかのように,山は吹雪に覆われて,この池の在り処さえ誰にも分からなくなってしまうだろう。
コメント
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池マーク清浄ヶ原にもありますね(笑)
行ってみました! 清浄ヶ原の池も惹かれますよね。ネットに実際行かれた方の記録が上がってましたが、そこを目指す気持ちはすごく共感します。加賀禅定道から眺めると、清浄ヶ原の周辺には地形図にない位置に池らしきものがいくつか遠望でき、興味深いところです。
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