吾妻山☆霧氷の美林から白銀の頂きへ
- GPS
- 03:02
- 距離
- 5.2km
- 登り
- 628m
- 下り
- 609m
コースタイム
天候 | 曇りのち晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
登り下りの尾根はいずれもバリエーション・ルート 無雪期は通行が困難な可能性があり |
その他周辺情報 | 佐白温泉 長者の湯 http://www.chojyanoyu.jp |
写真
感想
以前、比婆山に登った時のこと、その西側に鞍部から山頂に至るまで雪原の広がる吾妻山を眺めつつ、時間が既に遅かったので登頂を断念したのがなんとも無念であった。今回の島根への出張では最終日となる日曜日は好天の予報であり、この吾妻山にと心に決めていた。
未明に松江を出発する。徐々に周囲が明るくなるにつれて周囲は一面の雪景色が広がっていることに気が付く。前日の夜は松江では雪がちらついていたが、夜のうちにそれなりの雪が降ったのだろう。
出雲三成を過ぎると吾妻山から流れ出る大馬木川に沿って県道を南下する。正面に大きな山が見えるが山の上の方は完全に雲の中だ。この日は天気は快復傾向なので、稜線にたどり着く頃には雲も上がってくれることを期待したいところだ。
大峠の集落を過ぎると道路には車の轍はなく、積雪により道路は真っ白である。道路が林に入るところで雪が深くなりこれ以上は到底進めないと思われたので、道路余地に車を停めて出発する。下山後に気がつくことになるのだが、その手前には広い駐車場があったのだった。
歩き始めるとすぐにも除雪終了地点となる。積雪した林道には数日前のものと思われる数名分のトレースがついている。林道を少し歩いたところでスノーシューを装着する。出発して30分ほどで無雪期の駐車場と記されている場所に至るが、駐車場と思しき道路余地はあまりないように思われた。
本来の登山道はここから谷沿いを進んでゆくが、ここから南に向かって直線的に稜線に向かう尾根に取り付く。コースの短縮が目的ではない。吾妻山の東尾根の北側に広がる緩斜面の樹林を歩いてみたかったのだ。
植林の急登が続くが、あまり管理されていないのだろう。下生の低木が多いが、通行が困難となるほどの藪はない。登るにつれて細尾根となるが・・・
Ca990mの小ピークに登り詰めると植林は終わり、景色は一変する。霧氷を纏った自然林が広がっていた。折しも雲の合間から朝日が顔を覗かせ、樹々の霧氷を輝かせる。足元には降り積もったばかりの新雪が心地よい感触をもたらしてくれる。
わずかに尾根を進み広々とした緩斜面に入るとあたり一面はブナの純林が広がるようになる。斜面を緩やかに登るとブナ林は唐突に落葉松の樹林となり林相が一変する。落葉松林はそして樹林に差し込む朝陽が落葉松の霧氷を明るく輝かせる様はなんとも美しい。緩斜面にこのような魅力的な樹林が広がっているとは思わず、この樹林の中を歩けるだけでも急登の続くヴァリエーション・ルートを辿ってきた甲斐があったというものだ。
落葉松の林は長くは続かず、林縁にたどり着くと目の前には広々とした雪原と共に稜線の南側の眺望が一気に広がった。左手に視線を移すと一面に白銀の霧氷を纏う吾妻山が視界に飛び込んでくる。山に見惚れていると上からスキーで滑ってくる男性がおられる。先方もまさかここに登山者がいるとは思わなかったのだろう。通過と同時に我々に気がついたようだ。
ここからは吾妻山のピークを目指して樹木のない雪原を登ってゆく。両側には霧氷のついた樹林が陽光に照らされて白銀に輝いている。登るにつれて背後に霧氷の樹林の展望が広がっていく。
背後の比婆山には笠雲がかかっているが吾妻山の山頂部はすっかり晴れている。山頂にたどり着くと360度の好展望が広がる。南側には休暇村の建物とその周辺に雪原が広がっているのが見える。ここは是非、訪れたいところではあったが、惜しくも数年前に廃業している。
背後の比婆山からもついに雲が取れたようだ。この山頂からは比婆山に登ってから下山したいと思っていたが、家内が比婆山に登り返すのは嫌だという。山頂から北に伸びてゆく尾根には霧氷の樹林が続いているのが目に入る。尾根の下の方まで自然林が広がっていることが予想されるのでそれほど下降は難しくないだろう。下山は躊躇なくこの尾根を辿ることにする。
最初は緩く雪庇の張り出した広い雪稜を下る。雪稜を振り返ると吾妻山は東側斜面から眺めた時とは全く印象の異なる山容を見せていた。吾妻山の展望とお別れして樹林の中に入ると、霧氷を纏ったブナの壮麗な樹林が広がっていた。主尾根は北西に進んでゆくが、出発地に戻るには北東の急斜面を下降する必要がある。
斜面を下るうちに急速に樹々の霧氷は薄くなってゆく。広い斜面は急速に細尾根に収束してゆくが、尾根上にはブナが続いているのが嬉しい。ca900mあたりからは植林の急下降となる。登りの尾根に比べれば斜度も緩いと思っていたが、ここもそれなりの急斜面であったが、100mほど下ると尾根下部の緩斜面となる。
緩斜面の大部分は杉の幼木の植林帯となっているので、右手の広々とした植林の中を通るとまもなく林道に着地する。あとはわずかな下りで出発地に戻ることが出来る。林道には真新しいツボ足のトレースがあった。出発地のすぐ下の広い駐車場には一台の車が停めてあったので、この車の主だろう。
車に乗り込んで大峠の集落に出ると周囲の山肌からはすっかり雪が消えていた。振り返ると谷の彼方に白銀の輝く吾妻山が見えた。大雪原に美しいブナや落葉松の樹林、そして霧氷に大展望と短時間ながらも今回の山陰旅行の最後を締めくくるに相応しい充実した山行であった。機会があれば是非とも無雪期のこの山の表情も見てみたいものだ。
コメント
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登下降路がちょっと変わっていたので、拝見させてもらいました。
吾妻山に落葉松の植林帯があるのは意外でした。
写真の撮影位置がわかると、なお良かったのですが…
(なお、写真の11・18枚目、大膳原や吾妻山の南のほうに写っている山は、井西山と福田頭かと思います。)
感想の文章も面白く拝読させていただきました。
元休暇村一帯もとても良い所ですので、機会があれば、ぜひ訪れてみてください。(3月半ば以降は広島県側から車でも上がれるかと思います。)
ご教示ありがとうございます。
写真を地図に配置致しました。
思い切ってヴァリエーション・ルートを歩きましたが、通常のルートを歩いていれば、美しい落葉松の林に足を踏み入れることはなかったかな・・・と思うので、このルートを歩いて良かったと思います。また短い区間ではありましたが、北尾根も実に魅力的でした。
紅葉の季節も美しいでしょうね。是非、広島県側からも比婆山にかけて縦走したいものだと思いました。
吾妻山の北尾根は、私も6年前(2017年)の3月後半に山頂から県境に沿って標高1100m辺りまで往復したことがあり、開けた雪面もあって素敵な場所だというのは知っていましたが、島根県側への北東尾根をトレースしたことはなく、参考になりました。
吾妻山や比婆山は、10月末頃の紅葉シーズンにはとても人気の所です。
広島の山も訪れる度に関西とは違った雰囲気が斬新な感じが致します。特に島根との県境のあたりは静寂と奥深さがいいですね。
広島の山を訪れる際にはにっしーさんのレコを参考にさせて頂きます。
こちらこそ、いろいろとご教示有難うございました。
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