乗鞍岳プチ散策:お花を見ながら肩の小屋まで


- GPS
- 04:10
- 距離
- 9.2km
- 登り
- 168m
- 下り
- 517m
コースタイム
- 山行
- 2:35
- 休憩
- 1:09
- 合計
- 3:44
天候 | 晴ときどき曇 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
整備が行き届いて危険個所なし。 |
写真
感想
◎3000M級の山の魅力と高山病リスク
3000M級で90分ほどで登頂できる日本で唯一の山として知られるのが、乗鞍岳です。松本から国道158号を使って安房トンネルを抜けて飛騨高山に入る道を、これまで何度も通ってきました。ほぼ深夜か早朝に走っているので、乗鞍高原と上高地を「いつかは行ってみたい」と横目で見ながら……。
上高地を初めて訪れたのは2年前の秋でした。かっぱ橋までの散策でしたが、人気があることがイヤというほど分かりました。ぜひ何度でも足を運びたいすばらしい自然には、感動するばかりです。
そして今回、猛暑の最中、また上高地へ行こうかとも思いましたが、もう一つ、どうしても乗鞍岳が気になって、3000M級の高所を体験したくなり、上高地と同様に、上さんを誘いました。私は基本的に、ソロ登山が好きなのですが、上高地などの圧倒的な自然を独りだけ味わうのはちょっと気が引けるので、ぜひ、上さんにも体験させたかったからです。
ただし上さんは、山を登れるほどの体力はありません。70歳超えの高齢者でもあり、大病も患った経緯もあるので、無理はさせられません。しかし、乗鞍岳の剣が峰は、ド初心者でも登れる山とあるので、何とかなることを期待しました。
結果、一つ、大きな問題がありました。
この山の高度、3000Mの気圧の問題です。上さんは、20年以上も前ですが、いっしょに富士山に登ったことがあります。その時たいへんだったのが、高山病です。標高2500Mを超えると、だんだんと高山病のリスクが出てきます。上さんは、数年前にペルーの3000M超のマチュピチュ遺跡で高山病的症状に悩まされたと言っていました。
乗鞍岳の剣ヶ峰へのルートで、それはすぐに現れました。
「呼吸が苦しい」
◎2023年8月、乗鞍スカイライン崩落で不通の情報
乗鞍岳を気軽に登るには、どうしたらいいか、まず事前に調べました。
するとすぐに、高山市・丹生川町の「ほおのき平バスターミナル」の情報が検索でヒットしました。このサイトを見る限りは、松本から安房トンネルを抜けた平湯まで行かなければなりません。安曇野側からのアクセスについては、まったく出ていないのです。「ちょっとおかしいな?」と思いました。あるYouTubeでは、158号を上高地のずっと手前で左に入ったところから、シャトルバスとあった記憶があります。それで調べると、やっと乗鞍観光センター駐車場からのシャトルバス情報が出てきました。正直、ウェブ検索の順番からして、違和感を感じました。
現地に入ったのは、明け方の6時過ぎでした。すでに200台キャパの無料駐車場の半分くらいが埋まっていました。登山姿の人たちがごちゃっと溢れて、バスのチケット売り場やバス停留所に並んでいました。空には雲がほとんどなく、朝日に煌々と照らされた西方の山々が艶やかに輝いて見えます。
「あの、一番高い三角の尖りが剣ヶ峰ですか?」
みなさん写真を撮っていましたが、明解なお返事がありませんでした。が、間違いはないでしょう。シャトルバスは1時間に1本くらいの間隔です。すでにこの日は、バスが3台ほど必要でした。
「どちらから来られましたか?」と近くの方に尋ねました。
岐阜から来られたというお返事。
「ええっ、だったら高山側の、ほおのき平から乘ったほうが近いのではないですか?」
「いや、昨年スカイラインが崩落して、今は動いてないんです。畳平に行くシャトルバスは、今はここだけなんですよ」
そういえば、乗鞍スカイラインが崩落したことは耳にしたことがありましたが、まだ開通してはいないという情報は、ウェブで直接確認できませんでした。どうして私が検索して最初に出てきたサイトに、「今は運休」という情報がなかったのでしょうか? 不親切というか不誠実なウェブサイト、問題ありです(2023年8月)。Google検索に問題があるかもしれません。私は最新のYouTubeやヤマレコで、安曇野側からのシャトルバスを知っていたので、それを目安に確認できましたが、長野県と岐阜県の違いか、バス運行会社の都合かで、アクセス方法が一つしか示されていないというのは、不親切極まりない問題です。ほうのき平からシャトルバスを運行している濃飛バスのホームページでは、シャトルバスの時刻表を開くまで、運休情報がわかりません。時刻表を開くと、やっと「2023年度は乗鞍スカイライン災害通行止めのため、年度内全便を運休いたします」という運休情報が示されていました。しかし、乗鞍岳に行きたい人のために、安曇野側からのアルピコ交通のシャトルバスについての情報は、私は確認できませんでした。こういう情報の出し方は、民間会社とはいえ、消費者へのサービス精神が欠落しています。その被害者の一人が私です。
●シャトルバスは1200メートルも高度を上げる登山バス
乗鞍観光センターからのシャトルバスは、片道3400円。標高約1500Mのセンターバスターミナルから畳平の標高約2700Mまでを1時間で達します。恐らく道程は20キロ以上を時速ほぼ20キロ前後で右に左に細かく回転しながら登ります。普通車でも狭くすれ違いがむずかしい山道です。ときどき大型バス同士がすれ違うこともありますが、たいへんな斜度と距離がある道です。自転車で登っている人もたくさんみかけました。自転車では2時間くらいかかる道程です。この道程で高度を1200Mも上げるのです。ここを歩いて登ったら、早くても半日はかかるでしょう。
この登山自動車道ができ、高山から畳平まで登山バスが運行されたのが、昭和23年だそうです。戦後早々に開通したわけです。どういう理由で道路を開通させたのか、それは大東亜戦争中での昭和17年(1942)のこと、旧陸軍が畳平に飛行機のエンジンの研究を行う航空研究所を建設するために、軍用道路を開設したからでした。
軍用とはいえ、人間のすることはすごいです。こんな高所まで車が通れる道を敷くとは。おかげで、いまでは老弱男女が3000M級の山のすばらしさを体験できることにつながりました。
◎山岳信仰を受け継いだ、乗鞍本宮中之社
早朝の畳平バスターミナルはガランとしていました。運動会ができそうな広い舗装された広場の北側に、モダンな案内所、バスターミナル待機所があり、そこから南方向に、黒い山が聳えています。整備された階段があって、15分という案内がありました。魔王岳です。まずは少し登ってみようと,ふと左を見て、神社があることに気づきました。
乗鞍本宮、中之社です。本社は剣ヶ峰頂上に、そして里宮は高山市にあって、四神が祭られています。
天照皇大御神(あまてらすすめおおみかみ):日の神
五十猛大神(いそたけるのおおかみ):木の神
於加美大神(おかみのおおかみ):水の神
大山津見大神(おおやまつみのおおかみ):山の神
この神社自体は昭和25年に設けられたとあり、古いものではないようですが、そもそも開山の歴史は、平安時代に遡ります。征夷大将軍として東国を制圧した坂上田村麿呂が、乗鞍三座の神に祈願をして開山したのが807年とあります(『乗鞍山縁起』)。それ以来、山岳信仰の山として畏怖されてきたことは、山の名前を見れば明白です。
乗鞍岳というのは、剣ヶ峰を主峰とする23の峰の総称だと知りました。この中に、3000Mに迫る山がいくつかあります。乗鞍23座を、標高順に並べてみました。
【剣ヶ峰(けんがみね):標高3,026m】
【大日岳(だいにち):標高3,014m】
【蚕玉岳(こだま):標高2,979m】
【朝日岳(あさひ):標高2,975m】
【屏風岳(びょうぶ):標高2,968m】
【薬師岳(やくし):標高2,950m】
【水分岳(みくまり):標高2,896m】
【雪山岳(ゆきやま):標高2,890m】
【摩利支天岳(まりしてん):標高2,873m】
【不動岳(ふどう):標高2,871m】
【恵比須岳(えびす):標高2,831m】
【高天ヶ原(たかまがはら):標高2,829m】
【里見岳(さとみ):標高2,824m】
【富士見岳(ふじみ):標高2,817m】
【大黒岳(だいこく):標高2,772m】
【魔王岳(まおう):標高2,764m】
【四ツ岳(よつ):標高2,751m】
【大丹生岳(おおにゅう):標高2,698m】
【烏帽子岳(えぼし):標高2,692m】
【猫岳(ねこ):標高2,581m】
【硫黄岳(いおう):標高2,554m】
【十石岳(じゅっこく):標高2,525m】
【大崩山(おおくずれやま):標高2,523m】
大日岳、薬師岳、摩利支天岳、不動岳、恵比須岳、大黒岳、魔王岳などの山名は、古来から山岳信仰があったからこそです。
畳平に社を構えている乗鞍本宮、中之社は、歴史と山岳信仰の伝統を受け継いだ神性をたたえたすばらしい氣エネルギーが渦巻いていました。
◎剣ヶ峰はあきらめ、とにかく肩の小屋まで
魔王岳への階段を少しだけ登ってみました。階段のところに、いろいろな種類のお花が咲いていました。ふつうのお花の名前を、私はほとんど知りません。高山植物となると、まったく知らないのです。それで予め、スマホに花の名を教えてくれるアプリをセットし、今回はじめて利用してみました。
すると、下山したころにいくつか教えてくれるメッセージがありました。
イワギキョウ、モミジカラマツ、ヨツバシオガマ、メイゲツソウ、ハクサンボウフウ、ミヤマキンポウゲ、オンタデ……などです。
途中で、お花の名前にめちゃ詳しい方がいらっしゃって、一つずつ丁寧に教えていただきました。
そんなふうに、高山植物の小さなお花を楽しみながら、一路、まずは肩の小屋を目指して歩きました。お花畑の方向に一度下るルートは、やがて階段の登りになります。ここで上さんが「苦しい」と言い出しました。2700mはすでに高山病が始まる高度だったのです。とにかくなんとか、通常の勾配が緩く歩きやすいルートに出て、ここで引き返すかどうか聞いてみると、なんとか行ってみるというので、とても歩きやすいルートですが、それでも勾配がある道を、20歩あるいては5秒休む……の繰返しで、上さんにつき添い、肩の小屋を目指しました。少し歩いてはちょこっと休むを繰り返せば、何とか山も登れることを確認しました。しかし、呼吸で苦しむ上さんをみかね、リュックを前掛けにしてもってやることにしました。軽いリュックだったので、私はほとんど負担を感じることがありませんでしたが、前後にリュックを背負うのは、かっこがよくはないですね。
そんな訳で、今回は一つもピークを踏んでいませんが、剣ヶ峰へのルートには、いくつか富士見岳のピークを経由したり、お花畑を経由したりなどのバリエーションがあり、ゆとりがあれば、魔王岳(歩15分程度)とか、大黒岳などへのピストンもできる、なかなか眺めもいい山だとわかりました。
ただし、恵比須岳や不動岳などなど、登山できない山もたくさんあり、火山の険しい山容にも驚かされました。
◎ヤマレコの下山終了処理ミス
ところでヤマレコの記録は、下山してみるとバスの発車ぎりぎりでそのまま乗り込んでしまい、登山終了の処理をするのが遅れ、地図にはバスで途中までくだった軌跡が残ってしまい、時間や数値の表示には問題があります。うまく補正できないので、ご了承ください。
なお、畳平の気温は13度で、快適に登山できる温度でした。残念ながら、すこしずつ雲が湧いてきて、青空はときどきという程度。上さんといっしょに歩いたので、ピークを一つも踏むことなく、ほとんど汗もかかず、お花を探してゆっくりと散策するハイキングとなりました。
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