幻の百四丈滝に虹がかかる・16時間の激しい山行
- GPS
- 16:10
- 距離
- 22.9km
- 登り
- 2,402m
- 下り
- 2,386m
コースタイム
- 山行
- 15:54
- 休憩
- 0:17
- 合計
- 16:11
天候 | 曇りのち晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
雪は多いですが随所で割れており、思うように進むことができません。山スキー不向きのルートです。 |
写真
感想
百四丈滝の氷壺を見に行ってきました。正直なところ、このルートなめてました。
計画では下記のようなペース配分を考えていました。
5:30一里野スキー場ボトム登山開始 - 6:30ゲレンデトップ - 7:15檜倉 - 8:30シカリ場分岐 - 10:00口長倉 - 11:00奥長倉 - 12:00美女坂の頭 - 12:30滝見台 - 百四丈滝13:00 - 13:30滝見台 - 14:00口長倉 - 15:00檜倉 - 15:30ゲレンデボトム
まずはゲレンデトップまでのルート、尾根沿いの登山道を行ってみたのですが、やはりこの時期の尾根沿いは雪が割れたりなくなっている部分があり、また急登でもあり出だしから遅れて汗だくになってしまいました。
風があまりなく、しばらくはアンダー1枚のみで歩きましたが、最初の汗だくは後々に影響してきました。
稜線上もやはり雪の割れ、スキーでは登れない急登、巻けない小ピークなど苦労は絶えませんでした。それでも口長倉まではマシで、ペースを巻き返していたのですが、ここから先はさらに厳しく、古いトレースもなく多くの人がこの辺りで諦めていたことを示しています。
奥長倉から先にある美女坂の頭への急登はスキーでは無理と判断し、アイゼン履いてピッケルとピックストックでスキー背負って四つん這い登攀でクリアしましたが、この時点で体力をほぼ全て消費しており、少しの登りで息が上がります。
美女坂の頭からは緩やかで素晴らしい眺めの稜線でスキーの足も軽くなりますが、逆に強風が襲ってきます。この風、朝一に欲しかったと思わせるもの(笑)
さて百四丈滝はすぐには見えてきません。標高2000mを超えてしばらくすると雪庇の張り出したところから見えるようになってきます。見えた瞬間はかなり感動的で、体力ないのにアドレナリンだけで滝壺まで行くと決まってしまいました。
滝壺へは最短距離で行きたいところですが、手前側は大きな雪庇と崖に阻まれて入ることができません。標高2050mあたりから雪庇が小さく滝壺への斜面も少し緩くなるので、1mくらいの雪庇の上から斜面に飛び込みました。歩きの場合はスコップで雪庇を崩して階段を作るといいでしょう。これもその時の状態によりますから、必ずしも行けるとは限りませんが・・・。
斜面は急ですがスキーで滑るには適当な感じ。ただ途中で転倒するとそのままボトムまで滑り落ちるかも知れません。滝壺まではかなり下ることになり、この時点で登り返しが大変なことになると予想がつきますが、目の前の滝壺には磁石に吸い寄せられるかのように滑り降りていきました。
ちょうど、滝壺付近に陽射しが当たる時間帯、およそ13時から14時くらいまでの狭い時間帯でしょうか、滝に虹がかかり始めました。この滝と氷壺だけでも圧巻なのに、虹のおまけまでついて、もう「は〜」と感心しきり。このままずっとここに居たくなります。
滝壺のすぐそばに行って、裏見滝の裏から見た眺めを撮ろうと思ったのですが、少し風向きが変わると大雨!一瞬で全身ずぶ濡れになりました。裏見の写真は諦めざるを得ません。
滝壺には15分弱居ましたが、さすがにもう帰る予定の時刻です。滝に「また来るよ」と挨拶して登り返しが始まります・・・これがやっぱりきつかった。しかもものすごい強風。巨大な雪の斜面、もし雪庇が崩壊して上から落ちてきたり雪崩が発生したらひとたまりもありません。今日は幸い雪が安定していましたが、なかなかリスキーな場所でもあります。
この登り返しの最後は、雪庇の突破です。結局滑り降りたポイントが一番まともだったので、最後はスキー板を外し、ピックストックとツボ足で攀じ登りました。スキー板はぎりぎり稜線側から手が届く場所に突き刺して、上から引っ張り上げました。
ここでスキー板を落としてまた滝壺のあるボトムまで取りに行くことになったらもう終わる、ということでかなりドキドキものでした。雪庇が崩壊して丸ごと落ちるという可能性もありますし。
結局登り返しには予定の3倍の1時間半もかかりました。ここから計画との差が大きくなってきます。
登りに苦労した美女坂を滑るのはスキーなら一瞬です。しかしものすごい急斜面ですから、転倒やスキー板を外すようなことはあってはなりません。全く計画外の谷筋に落ちてしまいます。この辺りがゲレンデスキーと山スキーの大きな違いの一つで、山スキーでは、板を外したら谷筋の奥深くまで片足スキーで取りに行かなくてはならなくなり、その登り返しで体力を奪われます。また谷筋に滝や登り返しできない壁があればもう終わり、スキーを諦めツボ足で帰ることになります。パウダーを楽しみに行ったはずが、板を外してツボ足になるも腰まで潜り、身動き取れなくて遭難するという可能性が十分あります。
奥長倉避難小屋では16時になりました。当初計画から2時間以上の遅れ、体力も残ってないので通常なら避難小屋に泊まるのが適切でしょう。今回はビバークする準備もしていましたが、明日は雨、夜間登山は何度も経験済み・・・ということで頑張って下山することにしました。それでも何とか日没の18:30くらいには下山できたら、とまだ甘い考えがありました。
奥長倉〜檜倉までのルートは、スキーで滑って、小ピークは巻いて・・・という計画でしたが、それは役に立ちませんでした。巻くルートは急斜面で薮も多く、時に雪がなくなってたりしますので、何度か巻いてみましたが結局登り返しする羽目になり、素直に稜線を登り返したほうがまだマシだったと気づきます。
細かなアップダウンが多いのでシールをつけたまま滑ったり、シールの脱着をこまめにやりましたが、ついにシールがびしょ濡れで張り付きが極端に悪くなりました。これでトラバースをするとシールがずれてシールが効かなくなりますから、シールでのトラバースはかえって危険なものになり、また時間を費やしてしまいました。
また体力が残ってないので、シールを脱着する時にスキー板の上に座って毎回休憩するようになりましたから、もうあとはゆっくり安全に下山するだけ、という目標に切り替えました。
18:40くらいから本格的に暗くなり、いよいよヘッデンをつけての山スキーの開始です。さすがにヘッデン山スキーの経験はありませんから少々不安でしたが、この時点でしかり場分岐を過ぎてましたから口長倉から先のような嫌らしいルートはあと一箇所だけと、普通に薮を避けながら滑るだけなので楽でした。
檜倉あたりで雪が崩壊してツボ足でルートを探さないといけない厄介な場所がありましたが、ヘッデンで探しながら何とかクリアしました。
とにかくルートミスで登り返しだけはしたくありませんでしたから、超こまめにGPSを見てルートを確認します。GPSの電池は都合3回交換しました。こんな時に予備電池が足りない、なんてヘマも絶対できません。
さてようやく一里野ゲレンデトップに到着、ここからは稜線沿いの登山道を下るのですが、ここも実は雪がなくなってる部分があり結構嫌らしかったです。最後の最後の試練、ここも下手に支尾根に迷い込まないようGPSをチェックします。
そしてようやく駐車地に帰還、時刻は21:20と行動時間は16時間を超えてしまいました。滝壺からは7時間40分、帰りも登りと同じくらいの時間を要しました。
途中でビバークすることも考えてみましたが、雪洞を掘るか、木の根元に空間ができるのでそれを利用して横になるか、と思ってました。雪山で道迷いで歩き通し、体力を失った場合は木の根元に入り込んでそのまま低体温症になることも考えられます。そうなると雪が完全になくなるまでは遭難者を見つけることができませんし、わざわざ見つかりにくいところに入り込んでいますから、相当困難な捜索になりそうです。
今回、水は2.3L持参しましたが、登りの途中で不足感が明白で、雪を継ぎ足しては飲んでましたが、もうそれも終わり最後は雪を掻き出して直接口に入れてしのぎました。一体どれだけの水が必要だったのでしょうね。4Lかな?
帰路の車内でも500mLのペットボトルを4本飲みましたから、相当な乾きようです。
自宅を出てから帰宅するまで24時間を超えており、26時間寝ないで行動してたことになります(笑)
それにしても、さすがこれだけ苦労して辿り着いた甲斐はあったと思います。写真でなく本物をこの目で見る素晴らしさ、これは何物にも代えがたいことだと思いますが、ではこの感動を誰かと分かち合えるか・・・と考えるとNOでしょうね。
あまりにもハード過ぎる行程、これが人を寄せ付けない氷壺の百四丈滝の所以なのでしょう。
コメント
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はじめまして、momochannさん
いつもヤマレコ楽しく拝見させていただいてます。
無尽蔵とも思える程のバイタリティを、羨ましく、感心しておりました。
ただ今回は、かなりピンチな山行になったのが文面から強く伝わってきました。
GPS電池交換三回、ビバークする際の低体温症、捜索への配慮、水分不足・・・
自分、GPSの予備電池、早速ザックに追加しました。
momochannさん程のご経験技量体力があっても、こんなピンチな状態になることもあるのかと、考えさせられました。
でも、26時間寝ないでの行動、流石です。
--smile--さん、コメントありがとうございます。
体力使い切った経験は21時間鈴鹿縦走の時以来だったと思います
山スキーの場合、雪の状態がいいととてもスピーディなのですが、雪が割れてそのまま登れない(滑れない)場合や、かなりの急登などでは逆に歩きの方が速いくらいになります。今回はそれでした。
避難小屋泊まりやビバークする可能性もあったので、山岳会には「下山の連絡がなかっても翌朝下山する予定だからすぐに捜索しないで」とお願いしてました。
多少無理してもピークを踏みたいように、多少無理しても滝壺まで降りて眺めたい、という欲張りな気持ちがあったことが下山遅れにつながったのだと思っています。
momochannさん、はじめまして。
Neuronと申します。
百四丈の滝、お疲れ様です。
虹の氷の滝壺、素晴らしいですね。
以前ゴールデンウイークの加賀禅定道ではスキーの着脱にうんざりさせられましたが、4月初めでも結構夏道が出ているんですね。
滝壺往復だけだったらスキーじゃない方が早いでしょうか?
Neuronさん、コメントありがとうございます。
雪融け、というか割れ?の速さは予想以上でした。3月下旬くらいの方がいいかもしれませんね。
滝壺往復だけというか、このルートはスキーより歩きの方が早いと思います。
新雪が積もった直後なら別ですが・・・私の太くて重いスキー板にびっしょり濡れたシールもプラスされてものすごい重量になってました
自分にはとても無理、いいもの見れましたね。
そして、いいもの見させていただきました。
木の根っこ付近は、暖かい夜でもやっぱり冷えますね。
予備電池一組でしたが、これ参考に複数にいたします
ko- さんコメントありがとうございます。
今年の残雪期は予想以上に雪の割れが進行しているようで、本当に苦労しました。
GPSって夜になってバックライトつけてこまめに見ると電池の減りが早かったです。
夜に地図広げてコンパス見て現在地確認・・・なんてやっている余裕ないですから、GPSさまさまでした
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