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記録ID: 6312928
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積雪期ピークハント/縦走
白山

【白山】マイナーピーク探訪「猿ヶ浄土」

2023年12月28日(木) [日帰り]
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GPS
--:--
距離
14.2km
登り
1,190m
下り
1,317m

コースタイム

日帰り
山行
11:30
休憩
0:30
合計
12:00
7:00
60
駐車地
8:00
8:00
270
途中谷左岸尾根の取り付き
12:30
12:30
30
13:00
13:30
210
冬瓜平をお散歩
17:00
17:00
120
19:00
国道に出る
天候 晴れのち小雪
過去天気図(気象庁) 2023年12月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
石川県道53号線(岩間一里野線)と白山白川郷ホワイトロードの起点付近にあるスペースに駐車。除雪の状況にもよるが数台は駐車できる。
コース状況/
危険箇所等
【白山白川郷ホワイトロード(アプローチ)】
・ もちろん現在は冬季閉鎖中。今回歩いた中宮温泉までの区間であれば、数か所雪崩による片斜面になっている箇所があるくらいで特に問題なく通過できる(中宮温泉より奥は地形が険しくなり雪崩斜面の連続となるため危険度が格段に増す)。なお、ホワイトロードの開通期間中は歩行者進入禁止なので注意。

【猿ヶ浄土(P1402m。猿ヶ浄土山とも)】
・ 猿ヶ浄土の南面は帯状の岩壁に幾重にも取り巻かれた急傾斜地で、ルート選択は慎重に行う必要がある。今回登路とした途中谷の左岸尾根は、ホワイトロードから簡単に取り付けるものの、地形図で等高線が狭まり岩記号が食い込むあたりで断続的に小規模な岩場や雪壁区間が出てきて、若干登攀的な要素が交じる。ノーロープで登れる程度なのでそれほど難しくはないが、アイゼンとピッケルは必須(同ルート下降する場合はロープ必須)。雪の付き方によってはやや難渋するかもしれない。なお、登りながら観察した印象では、他の尾根は岩壁帯にまともに突き当たっており、上部に抜けるのが難しそうに見えた。
・ スノーシューで常時スネから膝程度のラッセルあり。雪が腐っていて非常に重く、疲労度大。

【その他】
・ 下山路とした山毛欅尾山経由のルートは残雪期の笈ヶ岳の一般ルートなので説明は割愛するが、注意点として、下降の場合(特に今回のようにトレースがない場合)は山毛欅尾山からの下りで尾根を外しやすいことと、尾添川にかかる中宮発電所の吊り橋は数年前に壊れてから復旧されておらず使用できないことが挙げられる。近年では旧吊り橋から少し上流側にある堰堤が代替ルートとなっているが、この時期は堰堤上に雪が乗っていてやや危険が伴う。堰堤からわずかに下流側に灌木頼りに川床に降りられる箇所があるので、そこから尾添川を渡渉したほうがやりやすいと思う。
石川県道53号と白山白川郷ホワイトロードの起点にあるいつものスペースに駐車して出発。冬季でもしっかり除雪されている。
石川県道53号と白山白川郷ホワイトロードの起点にあるいつものスペースに駐車して出発。冬季でもしっかり除雪されている。
ホワイトロードの冬季閉鎖ゲート。あれ? ゲートの向こう側も何故か除雪されてる…。これはラッキー。
ホワイトロードの冬季閉鎖ゲート。あれ? ゲートの向こう側も何故か除雪されてる…。これはラッキー。
しかし、除雪は最初のスノーシェッドで早々に途切れ、スノーシューを履く。道路上の雪は締まっており沈み込みはほとんどないのが救い。
しかし、除雪は最初のスノーシェッドで早々に途切れ、スノーシューを履く。道路上の雪は締まっており沈み込みはほとんどないのが救い。
何箇所か雪崩デブリによる片斜面が出てくるが、容易に通過。中宮温泉までであれば、それほど難しさはない(それより奥は雪崩の巣でヤバいことになっているが…)。
何箇所か雪崩デブリによる片斜面が出てくるが、容易に通過。中宮温泉までであれば、それほど難しさはない(それより奥は雪崩の巣でヤバいことになっているが…)。
猿ヶ浄土への登路として選んだ途中谷の左岸尾根の末端。ちょっと急なものの簡単に取り付ける。
猿ヶ浄土への登路として選んだ途中谷の左岸尾根の末端。ちょっと急なものの簡単に取り付ける。
急ではあるものの、しばらく穏やかな尾根が続く。大きなブナやヒノキも時々見受けられる。
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急ではあるものの、しばらく穏やかな尾根が続く。大きなブナやヒノキも時々見受けられる。
しかし、そのうち急激に傾斜が増してくる。既にスリップしたら下まで滑落しかねない斜度。スノーシューを蹴り込み、ピッケルを深く差し込みながら喘ぎ登っていく。
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しかし、そのうち急激に傾斜が増してくる。既にスリップしたら下まで滑落しかねない斜度。スノーシューを蹴り込み、ピッケルを深く差し込みながら喘ぎ登っていく。
時折、階段の踊り場のように短い緩傾斜帯が現れ、そこでやっと息をつける。一気に高度が上がってきたなぁ。
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時折、階段の踊り場のように短い緩傾斜帯が現れ、そこでやっと息をつける。一気に高度が上がってきたなぁ。
振り返るたび、朝日を浴びた白山の姿が次第にせり上がってくる。
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振り返るたび、朝日を浴びた白山の姿が次第にせり上がってくる。
足元の蛇谷の狭い谷間には、雪に埋もれた中宮温泉(くろゆり荘)の姿も。
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足元の蛇谷の狭い谷間には、雪に埋もれた中宮温泉(くろゆり荘)の姿も。
尾根は次第に両側が切れ落ちたヤセ尾根状に。その中に小さな雪壁が現れるため、乗り越えるたびにバランスに気を遣わされる。
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尾根は次第に両側が切れ落ちたヤセ尾根状に。その中に小さな雪壁が現れるため、乗り越えるたびにバランスに気を遣わされる。
そしてついに、地形図にも記されている大規模な岩壁帯が前方に迫ってくる(ヤブで見にくくてすみません)。まさに「猿ヶ浄土南壁」といった風情。さて、無事に通過できるだろうか…
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そしてついに、地形図にも記されている大規模な岩壁帯が前方に迫ってくる(ヤブで見にくくてすみません)。まさに「猿ヶ浄土南壁」といった風情。さて、無事に通過できるだろうか…
岩壁帯の出現と呼応するように、尾根はさらに急峻さを増す。
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岩壁帯の出現と呼応するように、尾根はさらに急峻さを増す。
岩が出てきたが、雪も付いてるし、この程度なら全然いけるな。
岩が出てきたが、雪も付いてるし、この程度なら全然いけるな。
といっても、写真では分かりにくいが、かなりの斜度の雪壁も出現。ここでアイゼンに切り替え、薄い積雪の下の岩やヤブにスタンスを探りながら慎重に登っていく。
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といっても、写真では分かりにくいが、かなりの斜度の雪壁も出現。ここでアイゼンに切り替え、薄い積雪の下の岩やヤブにスタンスを探りながら慎重に登っていく。
先程見た岩壁帯は、幸運なことにこの尾根では若干張り出しが緩んでいるようで、なんとか雪のつながった箇所をつなぎながら岩場を乗り越えていける。
先程見た岩壁帯は、幸運なことにこの尾根では若干張り出しが緩んでいるようで、なんとか雪のつながった箇所をつなぎながら岩場を乗り越えていける。
恐らく、雪の下はヤブの生えた岩稜が続いているのだろう。雪が切れると難渋するかもしれない。ときおり岩塔がにょっきり生えていて驚くが、いずれもその脇を通してもらえる。
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恐らく、雪の下はヤブの生えた岩稜が続いているのだろう。雪が切れると難渋するかもしれない。ときおり岩塔がにょっきり生えていて驚くが、いずれもその脇を通してもらえる。
そしてようやく急峻なヤセ尾根区間を抜け、安心感のあるおおらかな斜面に。猿ヶ浄土の頂上も近いはずだが、新雪をあっためたようなネットリした重い雪質で、膝丈のラッセルが非常に苦しい。すぐそこの山頂台地がなかなか近づいてこない。
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そしてようやく急峻なヤセ尾根区間を抜け、安心感のあるおおらかな斜面に。猿ヶ浄土の頂上も近いはずだが、新雪をあっためたようなネットリした重い雪質で、膝丈のラッセルが非常に苦しい。すぐそこの山頂台地がなかなか近づいてこない。
粘着質の重たいラッセルを乗り越え、ようやく山頂台地に。すると、立派なブナがどかどかと。
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粘着質の重たいラッセルを乗り越え、ようやく山頂台地に。すると、立派なブナがどかどかと。
さすが猿ヶ浄土。これならお猿さんも大満足のブナ大木の森だ。
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さすが猿ヶ浄土。これならお猿さんも大満足のブナ大木の森だ。
このブナ立派。
ここまでの斜面も立派な木をちらほら見たけど、この山頂は明らかに雰囲気が違うなぁ。来てよかった。
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ここまでの斜面も立派な木をちらほら見たけど、この山頂は明らかに雰囲気が違うなぁ。来てよかった。
白山も素晴らしい展望である。
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白山も素晴らしい展望である。
冬瓜平が目と鼻の先なので、冬瓜平にも寄り道。残雪期には笈ヶ岳登山で束の間賑わうこの平も、今はウサギの足跡のみの静寂境だ。
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冬瓜平が目と鼻の先なので、冬瓜平にも寄り道。残雪期には笈ヶ岳登山で束の間賑わうこの平も、今はウサギの足跡のみの静寂境だ。
霧氷が青空に映えてきれいねー
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霧氷が青空に映えてきれいねー
冬瓜平のブナもなかなかのもの
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冬瓜平のブナもなかなかのもの
そして忘れちゃいけない厳冬期オイズルの眺め。また行きたいなぁ
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そして忘れちゃいけない厳冬期オイズルの眺め。また行きたいなぁ
もちろん大笠山もね
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もちろん大笠山もね
帰りは猿ヶ浄土南壁の下降を避けて、山毛欅尾山経由の一般(?)ルートへ。これまた泥濘のような腐った新雪ラッセルが続き、下山した頃には日が暮れていた。
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帰りは猿ヶ浄土南壁の下降を避けて、山毛欅尾山経由の一般(?)ルートへ。これまた泥濘のような腐った新雪ラッセルが続き、下山した頃には日が暮れていた。

装備

備考 ・ スノーシュー使用。
・ 猿ヶ浄土への登りでは、雪壁部分でアイゼン・ピッケル使用。ロープ(40m)は携行したが使用せず。

感想

 「猿ヶ浄土」といっても、どこそれ? という方がほとんどだろう。白山白川郷ホワイトロードの白山自然保護センター中宮展示館の真裏にそびえる山で、山毛欅尾山と冬瓜山の間の稜線から少し南に逸れたところにあるP1402m峰である。山というよりは、この急峻な山域全体の呼称と言ったほうがいいのかもしれない。「猿ヶ浄土山」と呼ばれることもあるらしいが、この場合は同ピークを直接指す呼称と考えていいのだろう。
 どうしてこの山に登ったのかというと、まずはその珍妙な山名が気になった、という安直な理由です…すみません。藩政時代に「おとめ山」として立ち入りが禁じられており、それで猿を始めとした獣たちの楽園となったのでこの名が付いたという。ということは、伐採も入っていないだろうし、良い森が残っているのではないか。ひとつ如何ほどのおサルさんの楽園なのか見てこよう、というのももう一つの理由。
 このピークに登るだけなら、山毛欅尾山伝いの稜線から回り込むのが最も簡便(といっても、それとて十分ロングルートだが)ではあるのだが、やはりこの山の魅力は何と言ってもその急峻な南斜面である。帯状の岩壁が幾重にも露出しているのが眺められ、本当はサルくらいしか登れない峻険な山なので猿ヶ浄土というのでは、と思いたくなるくらいだ。せっかく猿ヶ浄土に登るなら、この「猿ヶ浄土南壁」から突き上げておサル浄土に至りたい。ということで、少しでも岩の張り出しがマシそうな途中谷の左岸尾根をルートに選び、今回の山行となった。
 猿ヶ浄土の南面はやはり急峻で、雰囲気としては昨年登った岩底谷の左岸尾根の下部に似ており、小規模な岩場と雪壁の連続といった感じ。アイゼンを雪の下の岩に引っ掛けながら、雪ヤブを掴んでグイグイと高度を上げていくのが楽しい。ノーロープで登れる程度なので、笈ヶ岳方面を目指す際の手頃な冬季バリエーションとしてもいいかもしれない。
 猿ヶ浄土の山頂は、そこだけブナの大木が立ち並んでおり明らかにそれまでの斜面と雰囲気が違った。これならおサルさんも大喜びだろう。南方には堂々たる白山、そして冬瓜山の鋭鋒の向こうには純白の笈ヶ岳。今年最後の山行はよく晴れた素敵なマイナーピークで締めくくりとなった。

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