ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

記録ID: 7645011
全員に公開
アルパインクライミング
甲斐駒・北岳

南アルプス 冬季甲斐駒ヶ岳 赤石沢/坊主尾根から

2024年12月29日(日) 〜 2024年12月31日(火)
 - 拍手
ymoon その他1人

コースタイム

29日:坊主尾根取り付き[6:00]→ヤニクボの頭[11:35]→2100mコル[13:30]
30日:2100mコル[3:20]→[4:00]赤石沢大滝[5:45]→赤石沢奥壁第一バンド[10:10]→甲斐駒ヶ岳山頂[17:00]→2100mコル[21:30]
31日:2100mコル[8:30]→ヤニクボの頭[10:20]→坊主尾根取り付き[13:45]
天候 29日 曇り、風強い
30日 快晴
31日 吹雪
過去天気図(気象庁) 2024年12月の天気図
コース状況/
危険箇所等
一般登山道ではありません
本山行の概念図
坊主尾根→赤石沢とつないで、甲斐駒ヶ岳に登頂しました。
本山行の概念図
坊主尾根→赤石沢とつないで、甲斐駒ヶ岳に登頂しました。
坊主尾根の取り付きを夜明け前に出発
2024年12月29日 06:05撮影 by  FinePix XP140 XP141 XP145, FUJIFILM
12/29 6:05
坊主尾根の取り付きを夜明け前に出発
厄介なギャップを越えつつ、
2024年12月29日 08:24撮影 by  FinePix XP140 XP141 XP145, FUJIFILM
12/29 8:24
厄介なギャップを越えつつ、
ヤニクボの頭目指して登りました。
風は強いものの、この辺りまでは順調でしたが…
2024年12月29日 10:18撮影 by  FinePix XP140 XP141 XP145, FUJIFILM
12/29 10:18
ヤニクボの頭目指して登りました。
風は強いものの、この辺りまでは順調でしたが…
徐々に険しさを増す坊主尾根。
悪い岩場を下るためにザックを放り投げたら、そのまま斜面を転がってしまい、回収に向かうymoon
しょーもないミスで敗退にならなくて良かった…
2024年12月29日 12:12撮影 by  SOV40, Sony
12/29 12:12
徐々に険しさを増す坊主尾根。
悪い岩場を下るためにザックを放り投げたら、そのまま斜面を転がってしまい、回収に向かうymoon
しょーもないミスで敗退にならなくて良かった…
その後も険しい地形と、
2024年12月29日 12:37撮影 by  FinePix XP140 XP141 XP145, FUJIFILM
12/29 12:37
その後も険しい地形と、
藪も大変でしたが、
2024年12月29日 12:49撮影 by  FinePix XP140 XP141 XP145, FUJIFILM
12/29 12:49
藪も大変でしたが、
どうにか14時前に本日の幕営地、2100mのコルに到着しました。
2024年12月29日 13:43撮影 by  SOV40, Sony
12/29 13:43
どうにか14時前に本日の幕営地、2100mのコルに到着しました。
その後はまだまだ元気なMDTさんが赤石沢の偵察。
明日、暗いうちに登攀する赤石沢大滝を写真に納め、水を4L汲み上げてくれました。
2024年12月29日 14:21撮影 by  SOV40, Sony
12/29 14:21
その後はまだまだ元気なMDTさんが赤石沢の偵察。
明日、暗いうちに登攀する赤石沢大滝を写真に納め、水を4L汲み上げてくれました。
ymoonはテン場の整備。
水作りも無いので、長い一日になるであろう明日に備えて早めに就寝しました。
2024年12月29日 15:34撮影 by  SOV40, Sony
12/29 15:34
ymoonはテン場の整備。
水作りも無いので、長い一日になるであろう明日に備えて早めに就寝しました。
翌朝は3:20出発。
まずは赤石沢に向けて、沢地形を下降。
2024年12月30日 03:37撮影 by  SO-41B, Sony
12/30 3:37
翌朝は3:20出発。
まずは赤石沢に向けて、沢地形を下降。
前日の偵察のおかげで、迷うことなく赤石沢大滝に到着。
1P目はMDTさんが登りますが、50m近くロープを伸ばしても滝の上に抜けられず(デカい…)
2024年12月30日 04:16撮影 by  SO-41B, Sony
12/30 4:16
前日の偵察のおかげで、迷うことなく赤石沢大滝に到着。
1P目はMDTさんが登りますが、50m近くロープを伸ばしても滝の上に抜けられず(デカい…)
暗闇の中フォローするymoon
2024年12月30日 04:48撮影 by  SOV40, Sony
12/30 4:48
暗闇の中フォローするymoon
2P目はymoonリード
登山体系には50mと書いてあったので、すぐに落ち口かと思いましたが、、
2024年12月30日 04:56撮影 by  SOV40, Sony
12/30 4:56
2P目はymoonリード
登山体系には50mと書いてあったので、すぐに落ち口かと思いましたが、、
たった3本のスクリューで、ほとんど50mいっぱいにロープを伸ばす羽目に…
落ちれば事故、震える足を押さえながら慎重に登りました。
氷柱を支点にMDTさんをビレイ。
2024年12月30日 05:36撮影 by  SO-41B, Sony
12/30 5:36
たった3本のスクリューで、ほとんど50mいっぱいにロープを伸ばす羽目に…
落ちれば事故、震える足を押さえながら慎重に登りました。
氷柱を支点にMDTさんをビレイ。
3P目はすぐに傾斜が緩み、ロープを片付けました。
暗くて良く分かりませんでしたが、100mクラスの滝だったのでは??
2024年12月30日 05:36撮影 by  SO-41B, Sony
12/30 5:36
3P目はすぐに傾斜が緩み、ロープを片付けました。
暗くて良く分かりませんでしたが、100mクラスの滝だったのでは??
滝を越えてさらに進むと、うっすら明るく。
2024年12月30日 06:26撮影 by  SOV40, Sony
12/30 6:26
滝を越えてさらに進むと、うっすら明るく。
快適にアイスクライミングしながら進みました。
2024年12月30日 06:31撮影 by  SO-41B, Sony
12/30 6:31
快適にアイスクライミングしながら進みました。
朝日に照らされる奥壁。
神々しい瞬間でした。
2024年12月30日 06:54撮影 by  SO-41B, Sony
12/30 6:54
朝日に照らされる奥壁。
神々しい瞬間でした。
Aフランケ全容
2024年12月30日 07:02撮影 by  SO-41B, Sony
12/30 7:02
Aフランケ全容
周囲の岩場に圧倒されつつ、しばらくはラッセルで快調に進みましたが、
2024年12月30日 07:23撮影 by  SOV40, Sony
12/30 7:23
周囲の岩場に圧倒されつつ、しばらくはラッセルで快調に進みましたが、
徐々に沢幅が狭まり、急峻なルンゼに。
MDTさんにお助けロープを出してもらい、さらに登ると、
2024年12月30日 08:42撮影 by  SOV40, Sony
12/30 8:42
徐々に沢幅が狭まり、急峻なルンゼに。
MDTさんにお助けロープを出してもらい、さらに登ると、
明らかに手強そうなCS滝
MDTさんでもフリーでは越えられず、残置スリングに頼って何とか突破(ymoonはフォローでも落ちました)
2024年12月30日 08:55撮影 by  SO-41B, Sony
12/30 8:55
明らかに手強そうなCS滝
MDTさんでもフリーでは越えられず、残置スリングに頼って何とか突破(ymoonはフォローでも落ちました)
これを越えると奥壁の第一バンド。
2024年12月30日 09:50撮影 by  SOV40, Sony
12/30 9:50
これを越えると奥壁の第一バンド。
見上げれば、奥壁が日本離れした威圧感。
しかし、取り付くには少し時間が遅いような。
2024年12月30日 10:10撮影 by  SO-41B, Sony
12/30 10:10
見上げれば、奥壁が日本離れした威圧感。
しかし、取り付くには少し時間が遅いような。
作戦会議の末、そのまま第一バンドをラッセルし、山頂を目指すことに。
2024年12月30日 10:37撮影 by  SOV40, Sony
12/30 10:37
作戦会議の末、そのまま第一バンドをラッセルし、山頂を目指すことに。
ラッセルが厳しく、丸2時間頑張っても大して進まず…
岩の基部という特殊な地形もあって、かなり雪が溜まるよう。
2024年12月30日 12:33撮影 by  SO-41B, Sony
12/30 12:33
ラッセルが厳しく、丸2時間頑張っても大して進まず…
岩の基部という特殊な地形もあって、かなり雪が溜まるよう。
突然「ズザッ」という音がしたと思ったら、自分の1m横を雪崩がかすめました。
2024年12月30日 12:35撮影 by  SOV40, Sony
12/30 12:35
突然「ズザッ」という音がしたと思ったら、自分の1m横を雪崩がかすめました。
雪崩の断面。
実は雪面に不自然なクラックがあったり、足元でビシッという音がしたりと、雪崩の兆候はここまでありました。
警戒してブッシュ寄りを歩いていたおかげで命拾いしました。
2024年12月30日 12:36撮影 by  SO-41B, Sony
12/30 12:36
雪崩の断面。
実は雪面に不自然なクラックがあったり、足元でビシッという音がしたりと、雪崩の兆候はここまでありました。
警戒してブッシュ寄りを歩いていたおかげで命拾いしました。
バンド上は雪崩が危険な上、ラッセルにも疲れたので、ロープを出して急なブッシュ帯を登攀することに。
2024年12月30日 14:03撮影 by  SOV40, Sony
12/30 14:03
バンド上は雪崩が危険な上、ラッセルにも疲れたので、ロープを出して急なブッシュ帯を登攀することに。
2P目をフォローするymoon
MDTさんは「ブッシュでプロテクションも取れて快適」と、楽しそうにリードしてましたが、自分には難しく、リードは任せきりでした。
2024年12月30日 14:57撮影 by  SOV40, Sony
12/30 14:57
2P目をフォローするymoon
MDTさんは「ブッシュでプロテクションも取れて快適」と、楽しそうにリードしてましたが、自分には難しく、リードは任せきりでした。
3ピッチ登るとようやく傾斜も緩み。
2024年12月30日 15:47撮影 by  SOV40, Sony
12/30 15:47
3ピッチ登るとようやく傾斜も緩み。
4P目
ymoon「雪崩起きないよね?」
MDTさん「そうそう起こるもんじゃないでしょ」
と言った直後、再び「ズシャッ」と足元で雪崩が…
2024年12月30日 15:52撮影 by  SOV40, Sony
12/30 15:52
4P目
ymoon「雪崩起きないよね?」
MDTさん「そうそう起こるもんじゃないでしょ」
と言った直後、再び「ズシャッ」と足元で雪崩が…
よほど雪崩やすいコンデションなので、傾斜が落ちた後も警戒して、コンテで進みました。
2024年12月30日 16:26撮影 by  SO-41B, Sony
12/30 16:26
よほど雪崩やすいコンデションなので、傾斜が落ちた後も警戒して、コンテで進みました。
最後の斜面も念のため確保。
大分開けてきて稜線も近そう。
2024年12月30日 16:40撮影 by  SO-41B, Sony
12/30 16:40
最後の斜面も念のため確保。
大分開けてきて稜線も近そう。
これを登りきると稜線。
登山道は藪もラッセルもなく、高速道路のようでした。
2024年12月30日 16:50撮影 by  SOV40, Sony
12/30 16:50
これを登りきると稜線。
登山道は藪もラッセルもなく、高速道路のようでした。
ギリギリ明るいうちに甲斐駒ヶ岳に登頂!
ここまで藪漕ぎに悪い岩場、氷瀑にラッセル、雪崩にも緊張し、苦労の連続でした。
安堵と達成感からなんだか涙腺が緩んでしまいました…
2024年12月30日 17:02撮影 by  SOV40, Sony
12/30 17:02
ギリギリ明るいうちに甲斐駒ヶ岳に登頂!
ここまで藪漕ぎに悪い岩場、氷瀑にラッセル、雪崩にも緊張し、苦労の連続でした。
安堵と達成感からなんだか涙腺が緩んでしまいました…
甲府の夜景を眺めながら、登山道を快適に8合目まで下降。
2024年12月30日 17:31撮影 by  SO-41B, Sony
12/30 17:31
甲府の夜景を眺めながら、登山道を快適に8合目まで下降。
しかしこの日はこれで終わりません。
さらに坊主尾根を550m下降しないとテントに帰れないのです。
暗いのでGPSを頼りに進みましたが…
2024年12月30日 18:49撮影 by  SO-41B, Sony
12/30 18:49
しかしこの日はこれで終わりません。
さらに坊主尾根を550m下降しないとテントに帰れないのです。
暗いのでGPSを頼りに進みましたが…
ただでさえ急傾斜で藪漕ぎも激しいうえ、すぐに露岩にぶつかってしまい、一筋縄では行かず…
地図には無いルンゼに迷い込んだ場面もありました。
2024年12月30日 19:46撮影 by  SO-41B, Sony
12/30 19:46
ただでさえ急傾斜で藪漕ぎも激しいうえ、すぐに露岩にぶつかってしまい、一筋縄では行かず…
地図には無いルンゼに迷い込んだ場面もありました。
安全に下降できるルートを探す、ダメなら戻って別のルートを検討、GPSで現在地を確認する
早くテントに帰りたい気持ちをグッとこらえ、愚直にこれを繰り返すこと4時間近く…
2024年12月30日 20:45撮影 by  SOV40, Sony
12/30 20:45
安全に下降できるルートを探す、ダメなら戻って別のルートを検討、GPSで現在地を確認する
早くテントに帰りたい気持ちをグッとこらえ、愚直にこれを繰り返すこと4時間近く…
21:30にようやくテントに生還!
テントに抱きついて喜ぶymoon(笑)
2024年12月30日 21:30撮影 by  SOV40, Sony
12/30 21:30
21:30にようやくテントに生還!
テントに抱きついて喜ぶymoon(笑)
もう22時過ぎですが、水を作って夕食の準備。
2024年12月30日 22:07撮影 by  SOV40, Sony
12/30 22:07
もう22時過ぎですが、水を作って夕食の準備。
MDTさんとお酒を飲みながら、登頂の喜びと安堵を分かち合いました。
2024年12月30日 23:16撮影 by  SOV40, Sony
12/30 23:16
MDTさんとお酒を飲みながら、登頂の喜びと安堵を分かち合いました。
翌朝。
早朝から荒れてきて、風の音で目が覚めました。
昨日は良い日にアタックしてきたものです。
2024年12月31日 06:34撮影 by  SO-41B, Sony
12/31 6:34
翌朝。
早朝から荒れてきて、風の音で目が覚めました。
昨日は良い日にアタックしてきたものです。
前日の疲労もあり、のんびり8:30出発。
疲れた体に鞭打って、坊主尾根の難所を処理していきました。
2024年12月31日 09:22撮影 by  FinePix XP140 XP141 XP145, FUJIFILM
12/31 9:22
前日の疲労もあり、のんびり8:30出発。
疲れた体に鞭打って、坊主尾根の難所を処理していきました。
どうにか無事下山。
命の危険を感じる場面も多かったですが、無事に行ってこられて良かった…MDTさんありがとうございました!
2024年12月31日 13:44撮影 by  SOV40, Sony
12/31 13:44
どうにか無事下山。
命の危険を感じる場面も多かったですが、無事に行ってこられて良かった…MDTさんありがとうございました!

感想

●山行概要
坊主尾根〜大武川支流の赤石沢とつないで、冬季の甲斐駒ヶ岳に登頂した記録

●感想
毎年恒例のMDTさんとの年末山行。
今年は甲斐駒ヶ岳の赤石沢から奥壁へ継続する、スケールの大きな冬季登攀に挑戦してきました。最初は奥壁の名クラシック・左ルンゼを登る予定でしたが、坊主尾根から入山し、赤石沢から継続できそう?と提案したところ、MDTさんも「大変そうだけど面白いアイデア!」と賛成し決定。山行直前はあまりの行程の長さ、未知の要素の多さから、余計な提案しなきゃ良かったかな、と少しナイーブになったり…
結果としては、左ルンゼの登攀は叶いませんでしたが、登山道や既存ルートにほとんど触れることなく甲斐駒に登頂し、なんだか格調高い登山になったと思います。
特に2日目は赤石沢の氷瀑や、奥壁基部のラッセル、坊主尾根の下降に想定以上に苦しめられ、18時間という長時間行動時間でどうにかテントに生還。登攀あり、ラッセルあり、ヤブ漕ぎ読図ありの大充実(やり過ぎ?)の一日でした。結果的には成功して一安心ですが、危険を感じる場面も多かったので、下記に記しておきます。

・替えの手袋
ラッセルで手袋を濡らしてしまい、凍傷になりかけました。インナーは替えを持っていましたが、アウターがテムレスで保水してしまうため、あまり意味がなく…
幸い穏やかな日だったので大丈夫でしたが、凡ミスで指を失うところでした。

・赤石沢大滝の登攀
登山体系には50mと書いてある滝ですが、実際は50mロープで丸々2ピッチ以上あり、100mクラスだったと思われます。当初はMDTさんがスクリュー6本で処理する予定でした。
しかし、暗い中取り付いてみると、ロープが足りず、滝の上部からビレイ解除のコール。トポより少し大きいようなので滝の上まで頼む、と2ピッチ目を自分が担当。支点用を差し引いて、3本のスクリュー(あれ、少ない?)を握りしめて登り始めました。後で分かったことですが、1本は登攀中に落とし、もう1本はザックの中に紛れ込んでおり、結果的に4本のスクリューでした。すぐに落ち口だろうと思われた赤石沢大滝は、登っても登っても傾斜が緩まず、結果的に3本のスクリューで50m近くロープを伸ばしました。暗闇なので高度感はありませんでしたが、落ちていたらと思うと本当にゾッとします。自分は登攀がヘタなので、その可能性は大いにありました。このような危険な状況に陥った原因として、時間的な焦りが挙げられます。
赤石沢大滝は、長い行程の最初にある登攀対象であり、夜明け前になるべく素早く処理する必要がありました。まず、暗闇がスクリューを落とし、それにビレイヤーが気付かないという凡ミスを生みました。スクリュー数や滝の全容の把握も、明るければ簡単でした。次に、時間的な焦りが、なるべくロープを伸ばし、少ないピッチで滝を処理をしなくてはという、リスクの高い行動に駆り立てました。スクリューが少ないのならピッチを細かく切れば良かった話です。そして、本の事前情報から、「あと少し登れば滝は終わるはずだ」という、楽観的な考えを生み、ズルズルとロープを伸ばしてしまったのだと思います。

・赤石沢奥壁基部での雪崩
まず、奥壁の第一バンドで、雪面に走った不自然な亀裂を2か所確認しました。その後、緩傾斜部に沿ってラッセルしている際、「ビシッ」と雪面に亀裂が入る音を2回聞きました。さらにラッセルを続けると、自分の1m横を雪崩がかすめました。そして、ついには自分の足元で小規模な雪崩が発生し、バランスを崩す体験をしました。山行中は「雪崩に好かれてるみたいです」とか、「あっぶねー」とか明るく振る舞っていましたが、自分のすぐ横をかすめた雪崩が、岩壁を流れ落ち、奥壁にこだましたあの轟音は今も耳から離れません。一歩間違えば自分がああなっていたのだという、確かな事実を脳に植え付けられたようでした。


反省点を書きましたが、このクラスの山行を実行する人が、いまさら何を言っているのか、と思われるでしょう。冒険のために、ある程度命を危険にさらすことは、アルパインクライマーなら常識だからです。しかし、この「ある程度」というのが罠であるように思います。身体能力や登攀技術に優れていれば、「ある程度」のレベルは上がります。普通では考えられないような登山を計画し、遂行できるようになります。山を自由に動き回れる爽快感、周囲の人には出来ない冒険をする優越感、何より死に直結するようなピンチを日々の努力で克服する命の躍動感は、麻薬のような快楽を脳に与えます。しかし、どれだけ優れたクライマーであっても、人体が脆いことに変わりはありません。

少しずつ、私の山登りに対するモチベーションは下がっています。それは、単に飽きたというだけではなく、今以上の努力や経験値を蓄積して、自分の本能が設定した”一線”を踏み越えることに対する嫌悪感から来ているのだと自覚しました。これ以上、命を危険にさらすような遊びはするべきではない、と本能的に思っているのです。もちろん、自分なんかより遥かに高いレベルで挑戦している人はいくらでも居ます。今回の山行だってMDTさんに付いて行っただけと言った方が正しいでしょう。
しかし、自分にはこの辺りが引き際でないか、とどうしても思ってしまうのです。

本山行が成功したことは自分にとって嬉しい限りですし、パートナーのMDTさんにも、これ以上ないくらい感謝しています。しかし、これからの山登りとの向き合い方は、よく考えなくてはいけないと思いました。

お気に入りした人
拍手で応援
拍手した人
拍手
訪問者数:231人

コメント

まだコメントはありません
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

コメントを書く

ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。
ヤマレコにユーザ登録する

関連する山の用語

この記録は登山者向けのシステム ヤマレコ の記録です。
どなたでも、記録を簡単に残して整理できます。ぜひご利用ください!
詳しくはこちら