霧氷の御池岳を縦断(鞍掛橋〜鈴北岳〜土倉岳〜君ヶ畑)


- GPS
- 05:27
- 距離
- 14.2km
- 登り
- 1,052m
- 下り
- 1,040m
コースタイム
過去天気図(気象庁) | 2025年03月の天気図 |
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アクセス |
写真
感想
先週末は全国的にかなり温暖な日が続いていたが、今週は木曜日は冬型となり、金曜日にかけては関西の高い山では霧氷が期待されるところだ。野坂山地、湖北、大峰方面も候補に考えたが、鈴鹿では天候の回復が早そうだったので、御池岳を山行先に選ぶことにした。
近江タクシーに電話をして、南彦根から大君ヶ畑(おじがはた)への愛のりタクシーを予約する。これは時刻の決まっている定額タクシーであり、料金は\800である。前日の夜9時まで予約を受け付けてくれるのが有難い。
朝、家の外に出ると小雪が降っていたが、地下鉄で京都駅まで移動すると上空はすっかり晴れていた。琵琶湖線に乗り込み東に向かう。野洲川にさしかかるあたりで、雲の上から朝陽が顔を出す。車窓から眺める三上山や天山は山頂のあたりが雪で白くなっている。
南彦根の駅前のコンビニで食料を調達し、予約していたタクシーに乗ると、やはり御池岳に向かうという女性の登山者が既に車に乗り込んで出発を待っていた。大君ヶ畑からさらにその先の鞍掛橋までタクシーで入る予定だという。大君ヶ畑からは茶野と鈴ヶ岳を越えて御池岳に向かうつもりであったが、そのような方法があることを全く認識していなかった。折角の機会なので便乗させて頂くことにする。
大君ヶ畑の集落の先では通行止めのバリケードが設置されているが、運転手はバリケードを動かして先に入っていく。道路の先には見える県境稜線には霧氷がしっかりと付いているのが目に入る。鞍掛橋まではわずかに2〜3分の距離ではあるが、メーターは\1300であった。積雪した林道には先週末のものと思われる数名分の足跡が残っている。この数日の間に新たな積雪はないようだ。新雪のラッセルを覚悟していたが、どうやらその必要性はなさそうだ。ということは御池岳への山頂には想定よりもかなり早く到着することになりそうだ。
先に出発された女性の後を追って林道を進む。女性はスキーのシュプールの上を歩いて行かれるが、同様にその足跡を辿ろうとすると踏み抜きが頻発する。体重の違いのせいなのだろう。ツボ足のトレースに歩幅を合わせて進む。
御池谷(黒川谷)の右岸尾根を登るつもりであったが、登山口を通り過ぎて林道を奥に進みすぎてしまっていた。林道の雪の上にはトレースが続いている。その先の送電線鉄塔のある尾根を辿ることにする。植林の斜面に入ると途端に積雪がなくなるが、送電線巡視路と思われる明瞭な道がある。
左手の国道からは間断なく工事の音が聞こえてくる。一基目の送電線鉄塔から国道を眺めると大きな重機が国道を上ってゆくのが見える。タクシーの運転手がこの国道は地質が脆く、頻繁に法面が崩壊しては通行止めになると話していいたことを思い出す。
二基目の送電線鉄塔を過ぎると尾根の斜度も緩やかになる。植林を抜けるとすぐに県境尾根に飛び出した。尾根からは彼方に朝日を反射する伊勢湾が目に入る。鈴北岳や御池岳は未だに雲の中であるが、斜面の樹々には霧氷が発達している。
尾根の雪は十分に締まっており、スノーシューを履くまでもない。高度が上がるにつれ、尾根上の樹々の霧氷は急速に発達していくようだ。
稜線を登るにつれて雲も徐々に上がっていく。広々とした雪稜を登り詰めて鈴北岳の山頂に至るとあたかも緞帳が上がったかのように一気に視界が晴れて、360度の展望が広がった。それまでとは明るさがまるで違うので、リュックからサングラスとウールの帽子を取り出す。
眼下に広がるジオラマの様な日本庭園を眺めているうちに、その左手から御池岳の山頂の丸岳も雲の中から姿を現わす。上空では雲が高速に流れているのだろう、雲の合間から差し込む光がサーチライトのように高速で移動しては霧氷の樹林を明滅させる。
当然ながらここは風の通り道であり、風が非常に強い。日本庭園に降ると風が幾分マシになる。日本庭園では霧氷を纏う孤樹に陽光が当たると白い花を咲かせた樹の様に華やいだ雰囲気となる。樹の周囲に無造作に突き出した石灰岩が確かに日本庭園の趣を漂わせる。
まずは丸岳の山頂に向かう。日本庭園を東に進むと雲の合間から蒼空が顔を覗かせる。樹林の間にはところどころに雪原が広がっており、気ままに雪原を闊歩する。霧氷を纏う叢林を抜けて山頂に至ると、真新しい山名標が雪の上に突き出していた。北側の霊仙山、伊吹山もすっかり雲のヴェールを脱いでいる。
山頂の南側に出ると北部鈴鹿の山々が一望のもとだ。藤原岳や竜ヶ岳にはほとんど雪がないが、彼方の雨乞岳と綿向山はの山頂部が白く輝いているのが見える。これらの山々にも霧氷がついているのだろう。
ボタンプチから奥の平に向かう。広々とした雪原にはところどころ数日前のものと思われるトレースが散見する。流石にこの日はまだ登山者の姿は見当たらない。上空では青い空がますます広がってゆく。
青のドリーネを通り過ぎて、土倉岳への下降点に至るとようやく風の陰に入ることが出来る。温かい日差しを浴びながらコーヒーで一服する。日当たりが良いせいか、下降点のあたりだけ雪が消えて、カレンフェルトの石灰岩が露出している。あたかもこの場所だけ一足早く春が訪れているかのようだ。いや、御池岳のこのテーブル・ランドだけ冬景色が残っているととも云えるだろう。
時間は11時前、下山は茶野を経て大君ヶ畑に戻るか、ここから尾根を南下し、ノタノ坂から君ヶ畑に降ろうかと考えていたが、この分では君ヶ畑から15時過ぎのバスに十分に間に合うだろう。このルートを選択することにする。
土倉岳への下降はかなりの急下降だ。雪の上には数日前のものと思われるワカンのトレースが所々に残っている。雪が締まっているとアイゼンが必要なところであるが、程よく雪が緩み始めているお陰でツボ足で快適に下降することが出来る。
以前に君ヶ畑から丁字尾根を登り、この土倉岳へのルートを下降して周回したのは6年前の1月のことだった。その時には土倉岳のピークの上も霧氷の樹々で真っ白であったが、山頂に吹き付ける雪雲の方向にもよるのだろう。この日は土倉岳はおろか御池岳の南西斜面にも霧氷はほとんど見られない。
土倉岳からの尾根では踏み抜きが多くなってきたので、ここでスノーシューを装着する。しかし、尾根が南向きになった途端に雪が切れて、すぐにもスノーシューを外す羽目に陥るのであった。。尾根上には夏道が現れるが、尾根が植林の中に入ってゆくと道は西側斜面をトラバースする箇所が多い。西側斜面は残雪により片斜面となっている箇所が多く、尾根筋を辿った方が良いと判断する。
ノタノ坂からは再び雪の斜面を谷筋に向かって急下降してゆく。ここでも雪の上には数日前のワカンの微かな痕跡が残っているのでルート・ファインディングには苦慮しない。谷の右岸を下降することになるが、一箇所、急峻な斜面のトラバースがあり、緊張を強いられる。
堰堤の前の小さな鉄橋を渡り、対岸の林道に合流する。まもなく林道が小又谷の川を横断することになる。靴を脱いで川を渡渉することも考えたが、スノーシューを履いたまま川を渡ると辛うじて靴の中に水が入ること免れることが出来るのだった。
御池林道に出ると午前中のものと思われるスノーシューのトレースがある。おそらくはトレースの主は丁字尾根に向かったのであろう。トレースのお陰で楽に林道を歩くことが出来る。天狗堂の登山口となる岩尾谷との合流点に至ると驚いたことに林道の上に真新しい重機の轍が現れる。重機の轍は天狗堂の斜面に入ってゆく。果たしてこの時期にいかなる作業の必要があるのだろうか。
スノーシューを外して重機の轍を辿ると、普通の林道を歩くのとほぼ変わらない歩行速度となるのであった。君ヶ畑の集落には想定よりもかなり早い時間に到着する。バスの時間まで1時間40分ほど待つことになるのだが、風を避ける場所がある訳でもない。ちらほらと白いものが漂い始めたと思いきや、まもなく吹雪となるのであった。バス停の背後にある除雪車の車庫の扉が空いていたので、車庫の中でバスを待たせてもらう。
バスが来るまでには雪も止んでくれる。バスがR421に入り、永源寺ダムの湖畔を通過する様になると、上空はすっかり晴空が広がっている。このバスは東近江市が運営しているもので、名称はちょこっとバスでも永源寺車庫までおよそ1時間の距離であるが、運賃は\200である。車庫を過ぎて山上のバス停で乗り換えた方が近江鉄道バスの運賃が少し安くなることを運転手が教えてくれる。
近江鉄道バスは八日市の駅まではわずかに30分ほどであるが、こちらは\600である。八日市から近江鉄道に乗り、近江八幡に向かうと車窓からは背後の鈴鹿の山並みの上にで御池岳が夕陽を浴びて橙色に輝いているのだった。
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