釈迦ヶ岳

天候 | 西、風力3/快晴/10℃ |
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過去天気図(気象庁) | 2025年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
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感想
山行記録690 令和7年3月23日 (日)
山 ざわめく 〜釈迦ヶ岳
単独 地図:御在所山
三寒四温と言われる春先。3月に入ると週替わりで寒暖を繰り返すようになった。ただ、その寒暖の差が大きく、寒は真冬の寒さ、暖は夏日に迫る暑さになる傾向。真ん中の「春」はどこへ行った?。
気候変動で暖気が強くなって対流が強くなってきているのかもしれない。そんなことを思う今日この頃である。
忙しい年度末、「山」というエサを目の前にぶら下げてモチベーションを保とうと目論んでいて、「日曜日、雨降るなよ〜」と天気予報を気にしているわけで…。
23日。南海上に高気圧が帯状に伸びてくる予想で天気予報も晴れベースである。
今年は、武平峠の向こうに雨乞岳が白い姿をのぞかせている。久しぶりに見る春の山の正常な色合い。つまり、山には大なり小なり雪が残っている。今月初めにコクイ谷出合まで遊びに行った時は平気で1m積もっていた。それから3週間、暑いぐらいの日もあったし雨も降った。確実に雪は減ったと思うが、どのぐらい減ったかというと実際のところはわからない。
どこの山に登ろうか…。七人山あたりへ行きたいところではあるが、雪解けの増水でコクイ谷出合を渡れるか、不安がある。それならこの冬、まだ登っていない釈迦へ行ってみようか。ピッケルとアイゼンは持って行くことにしよう。まあ、アイゼンの出番はないと思うが…。
いつの間にか春の彼岸。夜よりも昼の時間が長くなった。日の出も6時で、朝明の駐車場に入った時にはすでに灯りが要らない。強くはないが西風が吹いているが、冬の冷たさはなく心地よいぐらいである。
そそくさと足ごしらえをして、5:56出発する。
庵座谷のキャンプ場に向かう道に入る。そろそろ日の出。春らしく、鳥のさえずりがそこかしこから聞こえる。中尾根の登り口、6:06通過。入りはユックリ。果たしてどこで雪が出始めるか?。ザックにピッケルをくくりつけていると重心が後ろに行って重く感じるから、ザックの下で組む手にピッケルを持って登る。
尾根に登りつくと正面から太陽が顔を出す。オレンジ色のそれほどまぶしくない太陽。すでに冬の透明度はなく、春の空気に入れ替わったようである。
風は心地よい冷たさ。気温はすでに7℃もある。昨日の朝9時の850hPaの気温が6℃だった。風があるということは、空気は上空の風の支配下にあり、気温もそれに近いといえよう。風にざわめく森に包まれた尾根を登る。
640m独標を通過。ルートがハッキリしていると現在位置の確認がおろそかになりがちである。まだ距離感がつかめるまでには至っていない尾根だから、この辺で地図を開いておこう。なかなか名前を覚えられないから滝見台と呼んでいる庵座の滝の真横のピーク状までは、地図にはっきりと表れないぐらいの50m程度の段が3段。最後にグイッと上る感じである。
樹冠をざわめかす程度の風が吹く中、気が付けばシジュウカラの声。ヒガラも混じっているかな。目を地面に落せば、尾根に乗ってからずっと、イノシシがエサをほじくった痕が、続いては途切れ、続いては途切れ・・・。山の住人達は忙しそうである。
キツツキのドラミングも時々聞こえる。尾根近くの高い樹のてっぺんの方で「ココココココココココココ……」と、比較的乾いた堅い音。驚かさないようにソ〜っと登り、立ち止まっては音のする樹をソ〜っと見あげて見たり。しかし鳥たちの方がはるかに敏感なので、こちらの様子をうかがっているのか?、それとも飛び去ったのか?。歩き出すと、しばらくして再び「ココココココココココココ……」。音はすれども姿は見えず。「もう少し観察力があったらな〜」。
その次は、「ピ〜〜〜〜」とひと声ずつ鳴く声。声色は発情期のシカにも似ているが、長さがシカの半分ぐらいで語尾が下がる。何より声の移動が早いので鳥だと思う。「タカやろか?」。そう思って歩いていると、背後で声がして、振り向くと20mぐらい向こうを波状に飛ぶ姿。色はグレーっぽく、ハトぐらいの大きさかな。他の場所からも声が聞こえる。「2羽…、ちがう、3羽おるな〜」。尾根の両側と、少し離れた谷の奥。鳴き交わしているのだろうか。「あなたはだあれ」などと口走りながら尾根を登る。
咲き始めたアセビに道草しながら、7:16鳴滝コバ到着。ザックを下ろし、黄色く着飾ったマンサク越しに、白さが目立つ雨乞岳を眺めながらヨウカンをついばむ。
地図を開いてルートを確認。2段目を登ると小ピークで、その先に庵座谷連絡路がある。まだ慣れていないルート、こうやって距離感をモノにしていくわけである。
ハッキリした風が樹冠を揺らし続けている。稜線に上がったら果たしてどのぐらいの風が吹いているんだろう。気温は8℃ぐらいで安定している。少なくとも寒さはなく、登っていると汗ばむぐらいである。
ルートが開かれたばかりの頃は丸太で階段が組まれていた急登にかかる。そろそろ朽ちる時期に来たようで、転がったり無くなったり大きな段差になったり。一度人が手を加えれば、その先ずっと手を加え続けなければ荒れてしまう運命である。
その急登の最上部は、ルートが開かれる前に藪漕ぎをしたとき、シカと正面衝突しかけた場所。ササが減ってすっかり様子が変わってしまったから「ここやったかな〜」みたいな状態になりつつある。
やがて傾斜が緩み、いつの間にか庵座谷との連絡路の道標が現れる。すでに900m近いというのにまだ雪が出てこない。見上げる猫岳の北面には残雪が見えているし、根ノ平峠から続く県境稜線の北側斜面には白いところも目立つから、ピッケルの出番はあるだろう。しかし、こうもキレイに融けるとは…。もしかすると、南面の雪はほとんど消えているのかな。そんなことをぼんやり考えながら小休止したら、白毫までの詰めに取りかかる。
ここから上は尾根のような斜面のような急登が続く。庵座谷道の詰めの取っかかりを思わせるようなザレを登り、尾根を巻くように斜面を登ると、その先に「迂回路」の道標。右か直進か、相変わらずどっちが迂回路なのかわからない道標であるが、前回登ったとき、水平ルートをとるのが正解だと確認できている。
ガレの斜面を横切り、カーブを描くようにして直登にかかる。文字通りの直登なので、年月が経つと庵座谷道の詰めのような険しいルートにもなっていくのかもしれない。いずれにしても、岩が折り重なる斜面だから、落石注意。気を抜くことはできない。
急登が一段落した後は東斜面を巻くように斜面を登る。ソコソコ急登なので焦らずに行こう。
8:27松尾尾根に合流する。尾根の北斜面は、根開きが進んで地肌が見える部分も多いものの、まだまだ多くの残雪が残っている。ルート上にも少しだけ雪が融け残っている。
白毫のピークまで進んで足を止める。ここは南の見晴らしがいい。つまり、見渡せる雨乞や御在所などの北面が見えているわけで、まだまだ残雪で白い。猫岳はと見ると、登路はシッカリ雪が残っているようである。対して見上げる松尾尾根の頭への詰めには雪のかけらもないような…。結局、てっぺんまではピッケルの出番はないらしい。ウムム。
大蔭のガレ縁の鞍部を渡る。やはり尾根に乗ってから風が強くなった。あおられるような強さでもないが、念のため心して通過する。
松尾尾根の頭への詰めの急登にかかる。樹の枝が散らかって、まるで台風が通過した直後のようである。たぶん直近まで多量の雪に埋もれて折れた枝が、雪融けとともに出てきたものと思われる。枝に足を取られないようにしながら急登を登り、8:43松尾尾根の頭に到着。
そのまま三角点まで移動する。尾根の東側にはお辞儀をした雪庇の残骸がうずたかく積もっている。この量の残雪を見るのは何年ぶりだろう。
8:52三角点に到着すると、三角点の脇にこんもりと雪の山。お辞儀した雪庇か、吹き溜まりの雪なのか、山となって残っている。妙に明るくなっているのは、その雪で樹が倒されたか、まだ雪の下で押さえつけられて顔を出せないでいるのか。振り返ると、尾根の東側に切り立った雪の壁。雪庇がお辞儀したものだと思うが、一部が崩落したのか、それとも雪庇の形を保っているのか。いずれにしても、やはりこの冬、特に2月の雪の多さを物語っている。
靴ヒモを締め直してスパッツを着けて、9:00羽鳥峰に向かう。
縦走路に入ると残雪の道となる。もちろん夏道が出ている所も多いが、やっとピッケルの出番、少々緩いザラメ雪の感触を楽しみながら歩く。赤坂谷源頭の谷筋に残る雪に映し出される森の影を楽しみながら、釈迦西峰の登りにかかる。てっぺんに到達するまで、冬山と変わらないような白さに少しばかりビックリしながら、タップリの残雪を踏んで登る。ただ、ここでガツガツ登ると猫岳の登りがキツくなるので、例によって鼻で息ができる程度のペースを守る。
下りに移ると南斜面になるので雪が消えた所も出てくる。しかし、ただでさえササが消えたために表土の流出で荒れ気味のルート、雪の上から夏道に乗り移る場所を選ばないと、足場が悪かったり、霜柱で緩んだ所は表土を荒らしてしまうことにもなる。雪融け水で多少ぬかるんでいても、すでによく踏まれている場所を選ぶようにして行く。
猫岳の登りは1/4ほど登ったところから残雪の上となり、キックステップを効かせて登る。9:43猫岳到着。
いつものようにここで昼メシにする。彼岸の陽射しはさすがに熱い。風の弱いところに陣取っているから暑さが気になってきた。ハラの虫も落ち着いたのでサッサと出発する。
猫岳の下りには、かなり消えたとは言え残雪がソコソコ残っている。どうやら1000mを超える山の上は、陽当たりのいい南面から順番に雪が消えている最中のようである。
小鞍部が見渡せる場所に出ると、一瞬で目を引く光景が広がった。尾根の東側のなだらかな斜面が吹き溜まりになっていたようで、縦走路の線から東側に雪がコンモリと広がっている。昔のように、ここがイブキザサの海だったとしても、ササが雪に埋め尽くされて同じような景色が広がっていたんだろう。
その向こうには、御在所〜雨乞〜イブネ・クラシ・銚子が並び、一番奥の雨乞の白さが際立つ。
雪を踏んで小ピークに上がると、雪の上の踏跡が迷い尾根にまっすぐ伸びている。夏道がハッキリしているだけに、かえって現在位置の確認を怠りがちな縦走路。雪が積もってルートが隠れてしまうと藪漕ぎと何ら変わらない。地図読みの目が試される。もちろん夏道をシッカリ把握していることも重要である。こんなところで雪山への備えの一面を思い出させてくれた。
南下するにつれて高度も徐々に落ち、900mを上下するようになると残雪がめっきり少なくなる。ほとんど夏道と変わらないから普段の調子でノン気に歩く。908mの屈曲点ピークが近づいてきた。
「また来ました〜、お久しぶりです〜」。ピークの北側にこぢんまりと佇むブナの森で足を止めて、少しだけ残る雪を眺める。西風に樹冠がざわめいている。
ピークを過ぎて急降下。白滝谷ルートを分けるとやがて羽鳥峰である。砂山の脇に出ると遮るもののない陽射しがいきなりキツい。風が冷たいので、それだけが救いである。10:53羽鳥峰到着。
もう雪はないので、ピッケルをザックにくくりつけて下山にかかる。急降下して堰堤に下りる。谷に入って風が弱まった途端に体が火照って暑いから、雪融けの沢水をついばんでいると、目の前を蝶が飛び去った。「春やな〜」。
一段下の堰堤に下りると、また目の前を蝶が横切る。「さっきのヤツと同じみたいやな〜」。タテハチョウ科のようである。少し先の岩に留まった。「あなたはだあれ?」。ソーッと近づいて写真を一枚。
帰って調べてみると、テングチョウ。「こんな早い時期にも居るんやな〜」。というわけでさらに調べてみる。成虫は年に1回か2回発生して成虫で越冬するという。つまりこの子は冬を超して来たヤツである。
ざわめく森にまぶしい陽射し。その暑さと風の冷たさがちょうどいい具合に混じり合う。沢音を聞きながら山道を下りきり、林道に出る。
ここからがいつも長く感じる。下界に戻ると風も弱まってきて、陽射しの暑さが勝ってしまう。日陰を選びながらゆっくり歩いて行くとしよう。11:45朝明駐車場に帰還。
冬が来る度に、「一応は」積雪期に7Mtを登ってみたいという目標を立ててみるが、かなり昔に1回しか達成しただけである。今年も結局未達成。とは言え、年末には初日の出山行の偵察で、インフルエンザの余韻を引きずったまま御在所裏道7合目まで登り、今月初めにはコクイ谷出合まで入ったから、とりあえず、7座に向かってはみている(怪しいけど)。
まあこんなもんか。次を期待しよう。今日は午後もええ天気である。
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