【白山】マイナーピーク探訪「三等・大壁」 (中ノ川ゴルジュ直上、孤立した三角点)


- GPS
- --:--
- 距離
- 27.1km
- 登り
- 2,058m
- 下り
- 2,058m
コースタイム
- 山行
- 12:00
- 休憩
- 0:30
- 合計
- 12:30
天候 | 曇り時々晴れ(14時ごろから雨) 標高1500mは風強し |
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過去天気図(気象庁) | 2025年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・ 新岩間温泉(楽々新道登山口)に通じる県道岩間一里野線は冬期閉鎖中だが、除雪自体は進んでおり、雪崩斜面など危険個所は解消されていて、自転車で新岩間温泉までアプローチ可能。ただし落石が多いため注意。 ・ 楽々新道は標高1300mくらいから残雪がつながる。よく締まっておりツボ足で行動可能。 ・ 今回の山行では、岩間道の上部を少しだけ歩いた。岩間道は長期間にわたり閉鎖されており、残雪が切れた箇所はごくわずかに踏み跡が残っている程度で、藪がひどい。(そもそも、三等・大壁ピークへ行くには、岩間道が最も近道なのだが、林道が路盤崩壊で寸断されており、岩間道自体も久しく閉鎖中なので、楽々新道からアプローチした経緯あり) ・ 岩間道の標高点1701mから北東に分岐する三等・大壁(△1478.3m)に通じる尾根は、完全な藪尾根。今回は6割ほど残雪が残っていたので助かったが、雪が切れた箇所は濃い灌木の藪で、無雪期に三等・大壁ピークまで行くのはかなり苦労すると思われる。特に東側(中ノ川側)が切れ落ちているので滑落注意。 |
写真
装備
備考 | ワカン・ピッケル・アイゼン携行。ワカンは雪がよく締まっていたので使用しなかった。岩間道の標高点1701mから三等・大壁ピークに向かう尾根に入ってからは、左右の急斜面に残る残雪を利して前進したため、アイゼン・ピッケルを使用。 |
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感想
三等三角点「大壁」は、北部白山の岩間噴泉塔の南東、中ノ川に急峻に落ち込む尾根の先端の小ピーク(△1478.3m)に、ぽつんと設置された三角点である。
この三角点ピーク、個人的に長いこと気になっていた。中ノ川は上流の地獄谷や仙人谷を登るために沢登りで何度か訪れているが、その度に中ノ川中流の妙に目立つ位置に孤立したこの三角点を地形図上で目にすることになった。さらに、この三角点が設置されたピークは、岩間噴泉塔の上流側に存在する大ゴルジュ帯(写真欄の冒頭に写真を掲載しています)の真上に存在しており、あのゴルジュにそそり立つ大岩壁のまさに頂点にあるこのピークは、一体どんな場所なのだろうと純粋に興味をそそられた。
そもそも、この三角点の「大壁」という点名も、どうやらこの大ゴルジュの岩壁に由来しているらしい。点の記を調べると、俗称として「コリクラノ〇イカベ」(〇は判読できず)と記されているが、これは大ゴルジュ帯の左岸側の岩壁の地元地名である「コレクラ壁」のことを指していると思われる。
山行に先立って、このピークを訪れた先行記録がないか調べてみたが、見つけることができなかった。まあ、それも当然で、こんな一見何の変哲もない藪尾根の小ピークをわざわざ訪問してみようという登山者は、コアな三角点ハンターの方々以外は皆無だろう。それも、最寄りの岩間道が現役だったころはまだいいとして、現在ではその岩間道も閉鎖されて久しい。
訪問時期としては、尾根の藪がかろうじて残雪に隠れ、なおかつ山頂部は雪が解けて三角点が露出している可能性があるこの時期がベストだろう。不安だったのは、このピークに通じる尾根がもしかしたらかなり険しいのでは、ということだった。何せ、あの峻険な大ゴルジュ帯の真上にあるピークである。それに、北部白山の藪尾根は、途中谷左岸尾根しかり、行者尾根(仮称)しかり、霧晴尾根しかり、地形図上では普通に見えても、現地に行ってみると岩が出ていたりして、意外に難儀することが多い。
実際に訪れた三等・大壁ピークは、懸念していたほどの険しさはなく助かった。しかしそれでも、東側は中ノ川の谷底に向けて削ぎ落されたような岩壁が露出しており、「大壁」という点名にふさわしい姿だった。ピークも小さいながら三角形に尖って、なかなか格好が良い。
残念だったのは、山頂で三角点を発見できなかったことだった。私は特に三角点ハンターというわけではないが、それでもやはりその三角点が行き着き難い場所にあればあるほど、できることなら標石に直に接して、そのような僻地に苦心のすえ三角点を設置した明治時代の測量官たちの足跡に思いを馳せたいと願うのである。しかし人の訪れの少ない藪山では、時間の経過とともに三角点が土に埋もれてしまったりして、時々こういうことが起こる。私自身、野伏ヶ岳の北にある薙刀山では三角点を発見できなかったし、南白山の東にある三等・海上谷では土中に埋まっていた三角点を文字通り「発掘」したことさえある。
明治年間の造標以来、一体何人の人がこのピークを訪れたのだろう? 三角点が発見できなかったということ自体が、百数十年に渡る永い時間の重みとともに、このピークが人跡稀な秘境であるという事実を、物語っているように感じられた。
ところで、話は分かったけど、こんな何の変哲もない、重箱の隅のような小ピークに10時間もかけて行って、結局何がオモシロいのか? おそらく、多くの人にはこう聞かれてしまうだろう。
でも、面白い。誤解を恐れずに言えば、御前峰やら富士山やら登るより下手したら面白い。事前情報がないという、ただそれだけで山頂に着くまでのワクワクがたまらない。そんな山頂で、びっくりするような巨木だの、誰も知らなかった大展望だの、そんなものとの出会いをちょっぴり期待しながら、私は私のささやかな山登りを続けている。
もちろん、期待が裏切られることのほうがはるかに多いので、期待はほんのちょっぴりだけにしておくのが、ミソである。
※ 帰宅してからもう少し調べてみたところ、komaQ-kakoさんが13年前の2012年10月に三等・大壁を訪問されていることが判明! 三等・霧晴のときもこの方の記録がほぼ唯一の先行記録だったし、この方はすごいなぁ。当時は現役だった岩間道から登られていますが、無雪期に訪問されていることに頭が下がります。13年前の当時でさえ三角点はやはり発見できなかったとのこと。やはり埋まってしまったのでしょうか…。
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