2025年夏 - 奥多摩・丹波川ムジナ沢トノ沢


- GPS
- 04:59
- 距離
- 11.4km
- 登り
- 518m
- 下り
- 542m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
写真
感想
参加者 中山(単独)
参考文献
奥多摩渓谷調査団「奥多摩大菩薩高尾の谷123ルート」山と渓谷社,1996
2024年夏 - 奥多摩・丹波川貝沢川 https://yamap.com/activities/32939828
2024年冬 - 奥多摩・サカリ山〜三条新橋の水源巡視路 https://yamap.com/activities/36446480
2024年冬 - 奥多摩・芦沢山 https://yamap.com/activities/36795953
はじめに
去年、夏に丹波川貝沢川やマリコ川を遡行し、冬にサカリ山〜三条新橋の水源巡視路や芦沢山を縦走した。芦沢山周辺は登山道がなく目立った山もなく記録も少ない山で探検するには面白い山域だ。舟越金山という金山があったというのも興味を惹かれる。
12月に芦沢山から砥沢山へ縦走したとき、芦沢山と砥沢山の鞍部から西側のトノ沢が近く見えた。「奥多摩大菩薩高尾の谷123ルート」を見ると本流のムジナ沢に1ページを割いているが、支流のトノ沢は12mの滝を見て引き返している。ムジナ沢もトノ沢もオンラインで検索しても記録が見当たらないのも心が躍る。
芦沢山と砥沢山の鞍部は低く、トノ沢から貝沢川へつなげる計画を思いついた。貝沢川は去年歩いて大きな滝がないことを知っているし、貝沢川を下って丹波川に出るところは丹波山村役場バス停なので帰りも楽だ。
そして「奥多摩大菩薩高尾の谷123ルート」に記載がないもののトノ沢が歩けそうだという直感はあった。
貝沢川には貝沢集落があり、ムジナ沢の左岸には舟越金山がある。いずれにも人がいたならば往来する人がいて、丹波川の青梅街道を迂回するのではなく、直線状にトノ沢伝いに歩いたのではないか。また、トノ沢から砥沢山1458m標高点の名前が付けられていると想像できるが、そのためにはムジナ沢からトノ沢を遡行して砥沢山に至ることがわかっていなければならない。ということはトノ沢を遡行した人がいるだろう。
そんな直感から「123ルート」のとおりムジナ沢を途中まで遡行して戻り、トノ沢を遡行して貝沢川を下る計画を立てた。しかし、その直感は意外な形で裏切られることになった。
丹波山村役場バス停まで
今日は鴨沢西行きの臨時バスが2便出た。3便目の奥多摩駅8:35発丹波山村役場行きのバスに乗る。ボーイスカウトたちが終点まで乗っており、立ち客が出るくらい混雑していた。
丹波山村役場から羽根戸橋まで
9:30終点丹波山村役場で下車。青梅街道を塩山方面へ歩く。日差しに焼かれるかと思ったが比較的日陰があり、暑くない。余慶橋を渡り、丹波川南岸を歩く。山梨以外のナンバーの車が多い。10:06羽根戸橋に着く。羽根戸トンネルに入らず旧道を行く。
羽根戸橋のたもとには擁壁の上に登るハシゴと小さな社があった。ヤマレコのみんなの足あとをみると羽根戸橋から芦沢山に登る軌跡があるのでこの尾根を登る人がいるようだ。
羽根戸橋から丹波川入渓点まで
旧道をしばらく歩くと建設会社の仮設小屋があり、丹波川側が行き違いのためか広くなっている。白と茶色のガードレールの境目から踏み跡を下り、10:15丹波川に降り着いた。サンダルから沢たびに履き替えヘルメットをかぶる。10:22発。
丹波川入渓点からムジナ沢出合まで
丹波川は濁っていた。登るムジナ沢は対岸の南岸なので渡ってみるが水流が強くて河原沿いに歩けずまた北岸に戻る。岩の上で休んでいたヘビに不意に近づき、頭部を8の字に引っ込めて臨戦態勢を取らせてしまう。ごめんね、襲わないでねと遠回りに高巻く。
対岸の黒い岩から水が流れ出している。「123ルート」の「対岸にF1(5m)」のようだ。その上にはトタンの小屋が見える。
河原の浅い澱みには金色に光る粒々が見えたが、土砂の表面に見えるということは比重の重い金ではなく黄鉄鉱か何かなのだろう。アニメ瑠璃の宝石で学んだ。今季は見るアニメが多くて時間が足りない。
ムジナ沢出合は地形図で見る流域の割に水量が少なく、探していなければ見落としてしまいそうだ。改めて南岸に渡り、ゴルジュに入る。ムジナ沢は丹波川と違って水が澄んでいて気持ちがいい。ゴルジュも大して難しくない。蜘蛛の巣が多いのが難か。
廃小屋
ゴルジュを抜けると沢は直角に左に曲がる。第1の堰堤が見える。その前にF1の上にあったトタンの小屋をのぞいてくることにした。この小屋は遡行図にも載っている。
草の生えたズリみたいな不安定な斜面を下ると小屋にたどり着く。遡行図では第1の堰堤下でF1とゴルジュに分流しているが、現在は水が流れている様子はない。沢を土砂で埋めてしまったのだろうか。
10:36小屋着。小屋は扉がしっかり閉じられているものの、壁に穴が空いていて覗き込むことができた。中は荒れていてふとんが吊るされていてストーブがいくつか転がっている。灯油缶や板が散らばっていて横になれるようなスペースはなかった。
堰堤6つ
ムジナ沢に戻り、遡行を再開する。第1の堰堤は左から乗っ越す。第2の堰堤は右から。銘板には昭和63年度施工治山事業、施工地丹波山村むじな沢とあった。
第3の堰堤は右から、第4の堰堤は左から越える。いずれもさほど高くないので大高巻きにはならない。
第4の堰堤から第5の堰堤までは右岸のブロック積み擁壁の上を歩く。山からの崖錐堆積物が溜まっている。歩いていて気づかなかったアブラクボはこの上にあるのかもしれない。
第5の堰堤を左から越える。第5の堰堤から第6の堰堤までは少し離れている。第6の堰堤を右から越える。
トノ沢出合
堰堤は6つでおしまい。第6の堰堤を越えるとトノ沢出合。トノ沢はY字に分岐するのではなく振り返ると流れているのに気づく、逆さ川みたいな谷だ。はじめはこの沢が最初の流水のある枝沢だったのでアブラクボかと思ったが、GPSで確認するとトノ沢だった。10:55トノ沢出合。
計画ではムジナ沢を標高1050m付近まで遡行し、トノ沢出合まで戻ったあと、トノ沢を遡行する。計画通りムジナ沢を遡行する。
ムジナ沢ゴルジュ
トノ沢出合から5分ほど登ると右から枝沢が入ってくる。その左手にゴルジュがある。水流は多くないが膝まで濡れる。黒い岩のゴルジュは意外にホールドが少なく手こずる。「123ルート」では「いずれの滝もぬるぬるだが、難しくはない」とあるが、ぬるぬるは感じないものの単純にすべすべで足の置き場、手のかけ方に困った。単純に私がクライミング下手と言われればそれまでだが。
小滝を連ねており、F2-5段15m、F3-4m、F4-4mなどははっきり分からなかった。
ムジナ沢のワサビ田跡
沢が左に曲がるとゴルジュを抜けワサビ田が現れる。ずっとワサビ田は続き、840mで右岸に入ってくる枝沢には段々畑のようなワサビ田が作られていた。沢の流れとワサビ田を仕切る石積みは立派に残っているが、肝心のワサビ田はすでに水の流れはなくワサビも植っていない。
遡行図には橋がかかっており踏み跡があることになっているが、橋は見当たらなかった。遡行図の通りなら昔は丹波川を吊り橋で渡り、ワサビ田の管理に来ていたのだろう。
標高980m付近で勾配がキツくなってくる。この先上部の二俣まで行っても「蔓性植物の深いブッシュに変わり、遡行不可能」なので引き返すことにする。11:27引き返し。
ムジナ沢下降
ワサビ田のある区間は滝もなく問題なく下れる。問題なのはゴルジュである。登りで苦戦した箇所をすんなり下降できない。ここで気になるのはワサビ田の存在である。ワサビ田を管理する人が登り下りにゴルジュを通過したとは思えない。出入りに使った道があるはずなので、それを探しながら歩く。
左岸にそれっぽい踏み跡を見つけるが崩れそうな斜面に導かれる。シカ道みたいで私には歩けないので諦めて沢沿いに下る。ゴルジュに入ったところで登りでは気づかなかった単管パイプの桟道の跡みたいなのを見つけた。やはりワサビ田を管理する道があったのだ。
だいぶ古そうな単管パイプの桟道を渡り、トラバースののち急な斜面を下る。柵のようにロープが張ってあるが、ぶら下がれる固定ロープがほしいところだ。慎重に下ると標高810m付近の左岸の枝沢にたどり着いた。
トノ沢遡行
12:00トノ沢出合に戻り、トノ沢遡行に取りかかる。はじめはただの小沢といった感じで平和だ。谷が狭いからかワサビ田はない。
沢が右に曲がったところで滝が現れる。下から4m、5m、4mくらいの13m3段くらいだろうか。「123ルート」にある「大きな釜をたたえた12mの滝」だろうか。「大きな釜」は見当たらない。3つとも左から巻く。上段には黒いパイプが挟まっていた。トノ沢で見かけた人工物はこの黒いパイプだけだった。
トノ沢スダレ状滝
その先で見た光景に思わずアッと声が漏れた。左手から苔むしたスダレ状の滝が落ちている。よく見るとその上流にはさらに滝が段々になって控えている。正面は乾いて枯れ葉の積もったスラブが迫り上がっている。こんな小さな沢にこんな大きな滝が控えているとは驚きだ。
せっかくなので勾配の緩いスダレ状滝を登ってみることにする。左手の黒い岩の水流づたいを登っていく。つるっと滑りそうで怖い。なんとかスダレ状滝上の白い肌の木にたどり着いた。12:20白い肌の木にもたれながら立って休む。
白い肌の木で小休止
スダレ状滝の上は4段の滝が見えた。上の2段は1つの澪筋だが、3段目に至り2条になり、4段目で幅広滝、その下でスダレ状に広がっている。落差があるため高巻くのも困難だ。登るとしたら水流沿いかもしれないが、残置ハーケンや捨て縄などは見つけられない。「123ルート」にある「登れそうなのは水流沿いのみ」の12m滝だろうか。「123ルート」遡行図には下流から5m、12m、3mトイ状、12mの滝が描かれているが1対1対応が分からない。
いずれにしろ私にはこの滝を登れないのでここで引き返すことにした。せっかくなので白い木にもたれながら大滝を眺めてパンを食べ小休止とする。淵がなく釣り人も入渓しない、ワサビ田も捨てられている。そんな年に1人入るかどうかの沢で大きな滝を独り占めする。尾崎放哉の「こんなよい月を一人で見て寝る」を思い起こす。
トノ沢下降
白い木を支点に懸垂下降する。スダレ状滝の左側へ下ると50mザイルを折り返した25mのうち5mほどが余った。スダレ状滝は約20mということになる。右端に下ったら15mくらいだろうか。
13m3段の滝は太いつる植物をつかみながら慎重に下り、ザイルは出さなかった。あとは難しいところはなくムジナ沢との合流点にたどり着いた。
ムジナ沢下降
ムジナ沢の水を汲み、丹波川に下る。第1の堰堤を下ってから「123ルート」遡行図にある吊り橋を探す。上から見てもなかなか見つからず、河原に降りてやっと見つけた。吊り橋は渡し板が失われており、左岸では網も破けていて渡ることはできない。吊り橋のやや上流の河原を渡渉した。吊り橋の橋台からの道は不安定で、下降に使った踏み跡の方がよかった。
青梅街道旧道に出ると落石なのか土砂が溜まっており、山梨方面には行かず青梅方面に歩いた。途中、サルが旧道を横断していく。
丹波川下降点で休憩
一通り沢登りを終えて丹波川下降点で13:20休憩する。ここのところ連日昼過ぎに雨が降っていたが、今日は晴れている。水を飲んだりせんべいを食べたりしていると青梅側からチリンチリンと音がする。誰だろうと思ったら釣り人が丹波川下降点を探していた。白と茶色のガードレールの隙間から下ったという話をしたら釣り人は丹波川に下って行った。
丹波山温泉のめこい湯まで
13:37発。あとは帰るだけ。サンダルに履き替えて青梅街道を丹波に向かって歩く。背後からゴロゴロと雷が鳴る音が聞こえ、逃げるように東へ向かう。
丹波山村役場で次のバスを見ると30分後に14:44発の便がある。でも温泉に入りたかったので丹波山温泉のめこい湯まで歩くことにした。ちょうど道の駅に着いたころから大粒の雨が降り始め、逃げるように温泉に入った。14:28丹波山温泉着。露天風呂に行くと土砂降りになっていた。
風呂に入って体を休めながら丹波山温泉バス停は屋根がないので次の便でも大雨だったらその次の便にしようかと迷っていたが、丹波山温泉15:52発のバスのころには雨は上がっていた。丹波川は増水し、茶色い水が流れていた。
おわりに
終わってみれば3時間のごく短い沢登りだったが、ムジナ沢のゴルジュで手こずり、トノ沢では思いがけず大きな滝を見ることができよかった。また、廃れた小屋や吊り橋を見ることができたのも探検ぽくてよかった。
「奥多摩大菩薩高尾の谷123ルート」のトノ沢の記述と現地が合わないのが気になった。遡行図では下流から5m、12m、3mトイ状、12mの滝だが、私の感覚では下流から4m、5m、4mくらいの13m3段滝が1つ、20mスダレ状、5m幅広、3m2条、5m、5mの5段40m大滝が1つである。
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