吹突岳 屏風のような急斜面を登る
- GPS
- 10:01
- 距離
- 13.3km
- 登り
- 1,410m
- 下り
- 1,404m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
雪山バリエーションです。 |
写真
感想
吹突岳(ふっつきだけ)という変わった名前の山が秋田にあることは、数年前までまったく知らなかった。栗駒山からよく見える山なのだろうか、ある時、kiyoshiさんから教えられたのだった。秋田県の南東懐深く、栗駒山や虎毛山、高松岳などに囲まれた山域に、屏風のような南斜面を見せる山である。
残雪期、虎毛山頂小屋の裏手に回り込むと、その壁に近い屏風の姿は否が応でも目に飛び込んでくる。強い個性を持つ山だ。2014年4月のtooleさんの登頂記録を参考に、その屏風を正面から臨めるであろうルートで挑戦してみることにした。
小安温泉に向かう国道398号を行くのは、20年ぶりくらい。道の両側にそそり立つ雪の壁は半端ない高さだ。下小鳥谷橋を渡る手前左側に車1台分の除雪スペースを見つけて駐車。雪崩で車が埋まる可能性無きにしも非ずだが、この奥にも温泉が営業しているので、何とかなるだろう。
橋を渡って尾根末端に取り付き、すぐに尾根反対側へ急斜面を下って皆瀬川の左岸側へ。小鳥谷沢へ向かって深雪の中トラバース。ここはもう少し尾根を登ってから、小鳥谷沢の砂防ダムに向かって下り気味にトラバースした方が良かった。
砂防ダムの上流で沢に下りるポイントを探す。沢へ飛び下りることはできたが、オーバーハング状にそそり立つ雪壁のため、右岸側へ上がることに苦戦、ピッケルを駆使し、雪まみれになってなんとか這い上がる。次の小鳥谷沢の右岸側尾根取りつきは急斜面、所々で新雪が硬い雪の割れ目を隠している。片足だけならいいが、身体全体がこんな急斜面ではまり込んだら脱出が大変なので、雪面を確かめながら慎重に登る。尾根に上がった時は、もう体力の半分を使い果たしたように感じた。
明通山の先にある細い急斜面が始まる所で、ワカンからアイゼンに履き替える。硬い雪面が出ている尾根の風上側(右手側)をできるだけ登るが、尾根の幅が広くなると新雪が増え、膝下まで潜り込む。次第に疲れが足にきて、引き上げた時に少しでも筋肉を休ませるように歩くから、ペースは一歩また一歩の亀の歩みだ。
吹突岳が右手前方の枝の間から白い姿を見せている。屏風のような急斜面はなんとか登れそうな角度だ。ただ最後に待つその急斜面まで体力を温存しておかなければならない。あまり先は見ずに、一歩一歩進む。
軽井沢山の山頂から少し下った所で昼食にした。ここは奥深い雰囲気十分でのんびりしたかったが、そうもいかない。吹突岳への急登に手間取った場合、日没迫る中での下山になるかもしれず、雪が緩んできているので雪崩も心配だ。
そこから吹突岳基部までは、スノーシュー向きの幅広い尾根をアイゼンにダンゴを付けながら進む。いよいよ白い屏風が近付いてきた。山頂部に張り出した雪庇が崩れてこないことを祈りつつ、最後の急登に臨む。新雪がたっぷり積っており、硬い雪面は出ていない。高度感が爽快だ。クラックにはまり込まないよう気を付けながら、山頂部の硬い雪面に這い上がった。
吹突岳山頂からの眺めは想像以上だった。見えないのは、高松岳に隠された鳥海山くらいか。遠く月山・朝日連峰・早池峰・岩手山・森吉山・太平山も見えた。特に、栗駒山から虎毛山に囲まれた雄物川源流域の奥深さは印象的。足元に見える、登りで辿ってきた尾根や吹突岳西側から南へ伸びる尾根の、明るく伸びやかな雰囲気がいい。さっきは日没を心配しておきながら、山頂では30分近くも眺めを堪能した。
下山は蝸牛山経由で、尾根を辿る。慎重に読図を繰り返しながら、夕暮れ迫る尾根末端へ下った。
今回の屏風のような急斜面を登るルートは雪崩のリスクが高く、他の方にはお勧めできない。しかし苦戦しながらも最後の急登の末に得られる充実感と素晴らしい眺め。小さな自己満足の話ではあるが、自分にとっては大満足の山だった。
雪山歩きは面白い。自分でルートを選定し、トレースやGPS等に頼らずに歩き切る。もちろんリスク管理は必要だが、こんな面白い遊びは無いと思う。今回の満足感は大きく、身体の疲れも伴った余韻に数日間浸った。
コメント
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kamadamさん こんにちは
自分も以前に石神山までピストンしましたが、まさかそんなルート想像もしませんでした
その界隈の山々も魅力的な山が存在しますね
morizaemonさん、こんにちは
石神山は高松岳から足を延ばしたのでしょうか。私はまだ登ったことがなく、宿題です。
今回味わった眺望は素晴らしく、年一回は可能な限り足を踏み入れたいなあと思っています。
弁慶山地の八森レコ、素晴らしいですね!
池田昭二氏の本は私も持っています。気になる山域ですが自宅からは遠い
雪はまだたっぷりですが、極端に気温が上がる日が多いので、今シーズンは短いかもしれませんね
説明不足でした
石神山へは下小鳥谷橋→蝸牛山→吹突岳→石神山のピストン山行でした
私の八森、拙いレコでしたたが評価して頂きありがとうございます
仰る通り今年の残雪期は短いかもしれませんね!
年の節目のせいか、持病もありかなりガタが出てきておりますが、今後もマイペースで山を楽しみたいと思います😀
kamadamさんとお会い出来るの日を楽しみにしております
こんばんは。
石神山へは吹突岳経由でしたか 蝸牛山や吹突岳への登りは、急な上に細い所が多いので、大変だったことと思います。登りなら、まだ私が今回登ったルートの方が楽そう
ところで一年前には弁慶山へも登られてましたか
久しぶりに池田氏の「忘れがたい山」ともう一冊、「山の本」の2016年春号「特集=残雪期に登りたい山」を引っ張り出したのですが(ちなみに「山の本」で持っているのはこれ一冊だけですが)、その中に曽根田 卓氏の記録が掲載されています。あの曽根田氏をして「高嶺の花のような存在だった」と言わしめる山、まさに標高だけでは計れない、難しい山なのだと思います。
宿題とおっしゃる丁山地の有沢山など、標高はさほどではなくとも、登るとなるとなかなか難しそうです。マイペースを大切に、でも離れた所から期待しております
吹突岳だと思っている山…↓↓↓
https://www.yamareco.com/modules/diary/10491-detail-117139
です。
市営深山牧場の辺りから、こんな風に見えます。
すごい雪庇ですね!!
Springさん、ご無沙汰しております。コメントありがとう。
そうそう、3枚目は吹突岳だと思います!
深山牧場ってどこでしょう? 後で探してみます。
2枚目の虎毛ドームもインパクトのある写真ですね。
教えてくれてありがとう
きっと栗駒山からも目立つ山だと思うのですが、山頂へは学生時代に宮城側から登ったきり、秋田側から登ったことがありません 行かなきゃ
本レコ、見落としてまして、今頃、拝読しました。
「感想」に記載された臨場感たっぷりの内容には、手に汗握る思いで想像力を力いっぱい巡らせました。
素晴らしいオリジナル山行、少しは爪の垢を頂かないとなりませんね。
こちらにもコメントありがとうございます。
「爪の垢」なんてとんでもない!
私の方こそ、nomoshinさんの企画力・行動力、そしてその源となる情熱にいつも圧倒されています。
もちろんそれを実行できる、経験に裏付けられた技術や体力も。
正直、体調不良や体力不足を実感することも多いのですが、nomashinさんのようにありたいと憧れております。
ところで今回は、自分の中の「満足感」というものを考えておりました。
世の中に楽しいことは多いけれど、自分の内なる満足感はそれとは違う。山登りなんか、楽しいというよりは苦しいことが多かったりします。でも満足感は大きかったりする。それは山そのものの魅力だけで決まるものでもない。自分がいかにかかわっているかが大きな要素だということですね。
過去に多くの人が歩き、当日は他の方のトレースがあった神室東稜ルートより、今回の吹突岳は様々な要素で満足感の高いものとなりました。山の持つ魅力も神室に匹敵するほど高かったです。
自分の予測を越えた満足感が得られる山歩き、それがあるから山は止められないですね
そう言うことってアルアルと再認識しながら、「満足感」について思いを馳せました。
私の場合には、満足感の高い山行後には、ご褒美(?)に美味しいモノを自分の口にご馳走したりするので、その時の食べものとともにさらに記憶が刻まれるようです。中央分水嶺を田代山から北上して荒海山から下山した時は湯上がりビールについてきたたくあん数切れでしたが、その味は忘れないです(笑)
たくあんを食べるたびに、田代山〜荒海山を思い出すという訳ですね
山の記憶を食べ物と結びつけるというのはいいですね
私の場合は、「峠の茶屋」のおでんを食べると秋田・岩手県境稜線を歩いて、その後ママチャリで国道を下った時のことを思い出すといった感じかなあ。「峠の茶屋」は国道46号の秋田側にあるおでん屋さんですが、今は秋田市内でもお店を開く日があるのです。
「満足感」を記憶に留める工夫をたくさんすると、それだけ人生が豊かになるような気がいたします
ルートを写真と一緒に拝見すると、小鳥谷沢を渡渉して明通山の尾根に取り付く箇所が一番大変だったのではないでしょうか!? "体力を半分使い果たした"のところで思わず頷いてしましました。
あとは尾根に乗ってしまえさえすれば、のコース取りでしたね。虎毛山塊の奥深い景色を独り占めして楽しまれたようですね
吹突岳からの下りは栗駒の景色を眺めながら、綱渡りするような空中散歩を楽しむkamadamさんの姿が目に浮かびました
僕もこの吹突岳に登った時の事を思い出しました
それにしても、明通山から軽井沢山の尾根を歩いた記録はkamadamさんが初めてじゃないですかね。僕の知る限りではweb上で見たことがありません
吹突岳登山はとても印象深いものでした。いい山でした。
おっしゃる通り、小鳥谷沢を渡渉して雪壁を右岸側へ上がる時と、明通山の尾根に取り付く急斜面の登りが大変でしたね。大雪が暖気のために一旦緩んで崩れ、その後また凍って新雪が覆い隠す。とても登りにくかったです。
むしろ山頂直下の急斜面は程よく柔らかくて、登り易かったですね。
「吹突岳からの下りは栗駒の景色を眺めながら、綱渡りするような空中散歩」・・まさにその通りでした。
tooleさんがこの山域に惚れ込んだのもわかるような気がしましたよ。
軽井沢山から吹突岳に向かう尾根の山深い雰囲気は、とても素晴らしいです。
GWの頃にのんびり泊りたいものですが、その時期にここまで入るのは難しいので、もう一本西側の尾根(小滝沢の右岸尾根)に石神山方面から入るのもいいなあ・・なんて考えています。
tooleさんの沢や藪漕ぎレコも待ってますよ
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