雲取山ゴンエ尾根、無念の撤退
- GPS
- 08:35
- 距離
- 19.3km
- 登り
- 1,921m
- 下り
- 1,939m
コースタイム
天候 | 雨のち晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・1300m辺りから数センチの積雪がありました。 ・大ダワ林道は通行禁止です。最初だけ通りますが、その最初が崩れています。 ・ゴンエ尾根は一般登山道ではありません。 ・橋のない川を二度渡渉する必要があります。 |
感想
雪山登山を学び始めた際に、当面の目標を「積雪期に雲取山のバリエーションルートを単独で登る」事に設定していた。雪が降る前にもう一度奥多摩でツェルト泊をしようとルートを検討している時にそれを思い出し、下見を兼ねて行こうと決めた。
雲取山のバリエーションルートは数多いが、大抵が南尾根だ。雪山登山の訓練に選ぶならより厳しい北尾根が適当だろう。調べたところ、野陣尾根北面の支尾根であるゴンエ(権衛)尾根が条件に沿っており、かつ難易度も高く無いようだ。ただ尾根の突端に取り付くまでに廃道化している大ダワ林道を通る必要があり、その先も分かり難い。先達の記録を保存して目を通し、スマートフォンの地図ロイドに先達のGPSログもセットした。
当日朝、自宅では前夜からの雨が更に激しくなっていた。スケジュールは7時半に東日原バス停に着くバスとその後に8時50分に鍾乳洞バス停まで行くバスの二種類を用意していたが、前者は宿泊予定の雲取山荘に15時に到着するのに対し(後述するがこれ自体間違っていた)、後者は16時になる。但し東日原から鍾乳洞まで歩かずに済む上、9時頃には雨が上がる予報で、雨に濡れる時間は最小限になる。結局後者を選択した。
鍾乳洞行きのバスは最後まで自分以外載らなかった。乗務員の話では、数日前に鷹ノ巣山等で積雪があったが、この雨で溶けたかもしれないという。11月にアイゼンが要るとは思わず、持って来ていない事が気にかかった。
鍾乳洞バス停を降りると紅葉はもう終わりで、雨は上がっている。ザックカバーだけ掛け、準備をして歩き出す。途中でまとまって降ったりもしたが、予報通り晴れ間が差してきた。日陰名栗山の北面等に雪が残り、戸田新道への入口には奥多摩ビジターセンターの「登山道凍結 アイゼン必要」との警告看板が11月19日付で出ていた。若干不安になった。
大ダワ林道への入口に予定より30分早く到着。雨もあって長沢谷へ降りる道はグズグズに崩れている。慎重に降りる。長沢谷は橋が壊れており、渡渉するしかない。雪と雨の影響だろうか、この時期にしては水量が多く、飛び石は難しい。幅は2-3m程で対岸も平たいので、木の杖とザックを対岸に放り投げ、飛び越えた。
記録ではここから二軒小屋尾根の稜線までジグザグに登る事になっている。途中までは比較的新しい踏み跡があったが、見失った。目的はこの尾根を乗り越して大雲取谷に降りる事なので、GPSで尾根のコルを目指しながら道のない尾根腹を登った。深い落ち葉が雨に濡れて、何度も足を取られる。獣道を見つけて這い上がり、漸く辿り着いた。日原林道で稼いだ30分の貯金は帳消しになった。
稜線には登り・下りともロープが張ってあり、東京都の指導標は無残に切り落とされている。登ってきた長沢谷側には意外なまでにはっきりした道がある。矢張り見逃したようだ。GPSで再度確認しつつ大雲取谷へ降りる道を探すと、これも新しい踏み跡が着いた道が見つかった。記録の通り沢のツメ辺りまで道沿いに進み、そこから谷へ斜めに降りた。
大雲取谷も水量が多い。登り口のゴンエ尾根突端に辿り着くにはここを渡渉して右岸をへつって進む必要がある。対岸は狭く、先程のように飛び越えるのは躊躇した。飛び石が出来るところを探したり、狭い箇所に石を放り込んでみたりもしたが、時間ばかりが過ぎていく。只でさえ遅い出発で、先程の道迷いで既に予定より遅れている。幸い体は冷えていないので、時間を浪費するよりはと裸足になって渡った。
右岸は僅かながら余地があって、200m程川を下る。見上げると尾根までよじ登れなくも無さそうだが、ルート通りに進むことにした。時折流木や岩にしがみついて超える。足の幅より狭い踏み場もあった。出来るだけ高度を上げないように川岸にへばりついて進むと、最後のところで岩に阻まれて行き詰まった。再度見上げると尾根はかなり下がって来ている。斜め上に折り返して進むと、果たして岩の上へ進む踏み跡がしっかりとあり、それを進むとゴンエ尾根突端に辿り着いた。
予定より40分遅れている。気は焦るが妙に体が動かない。尾根自体は広葉樹林の太い尾根で、所々急な露岩帯もあるが、怖い程ではない。尾根を直登するだけなので、道は迷いようもない。それでも体は動かない。
今1200mを超えたところで、目標点の雲取谷は2000m超。予定行動時間はあと3時間半。おまけに雪が目立ち始めた。明日の方が天気は良いし、小雲取山手前で奥多摩小屋に行けば標高差は600mで済む。それも厳しくなってきて、今日のところは野陣尾根=戸田新道と合流するところで引き返せば、18時台の日原からのバスには間に合うか。ところが1400m前後の地点で雪が深くなり、登りにも拘らず3度も足を滑らせた。その時点で13時半。このまま雪が深くなるところを進めば、撤退が難しくなるかもしれない。大体、雪山登山の下見に来たはずが、装備も無く本番になってしまったようなものだ。
帰るか、と振り返ったところに、早くも雪に飾れられた天祖山が、周りの冬枯れの森林に囲まれて雄々しく聳えていた。その風景を見た時点で、今日はもうこれを見れたからええわ、と腹を括った。
いつもながら同じ道も下ると早い。そしていつもながら帰り始めると帰りたくなくなる。どうせ帰っても呑んで寝るだけだし、食料もツェルトもあるし、この妙に体も精神も疲れた状態であのへつりと川越えをやるのは危険だ。丁度尾根の突端に素敵な平地がある。危険回避の為、訓練も兼ねてビバークだ。
15時に行動を終了、丁度良い樹間を見つけてツェルトを貼り、横になった。幸い風は弱かったが、寒い。ハイマウントの木炭カイロを持って来たが、最初は熱いもののやがて消えてしまう(これは使い方が悪かった)。使い捨てカイロはもっと頼りない。朝まで何度も目を覚ましながら、過ごした。柳田国男の「山の人生」を肴に、ウォッカの柚子酒を呑む。どどどど、どどどと滝音が心地良い。朝にはツェルトの中で結露が薄氷になっていた。
7時半に下山開始。昨日は大雲取谷を裸足で渡ったが、今日は足が凍えていて、出来るだけ避けたいと思っていたら、水量が減ったのか、難なく飛び石で渡れた。二軒小屋尾根に登り返して、昨日見つけた大ダワ林道の廃道を進む。何の事は無い、長沢谷まで苦労なく降りる事が出来た。こちらも上流を飛び石で渡り、日原林道まで慎重に登った。挫折感を慰めながら日原林道を戻ると、崖下から大きな音がして、カモシカが慌てて逃げるのが目に入った。今回出会った獣はこいつだけだった。
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今後の為に失敗の原因を考えた。
・行動開始が遅い。
雨を回避するためとは言え、ゴンエ尾根に取り付く時点で12時半は矢張り遅い。公共交通機関頼りだとこの辺りはどうしても遅くなるのも悩みどころだ。
・情報収集不足。積雪の事実を知らなかった。
微妙な時期なので、奥多摩ビジターセンターに電話で問い合わせるべきだった。
・バリエーションルートの所要時間計算ミス
麓から800mの標高差があるゴンエ尾根の所要時間を間違って計算していた。標高差と平面距離から検算をする必要がある。
・大ダワ林道の道迷い
長沢谷から二軒小屋尾根の峠への道を、闇雲に登るのではなく、もっと慎重に探すべきだった。これで時間も体力も無駄に消耗した。
以上の反省を踏まえて翌春以降に再度挑戦したい。
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