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発刊以来、私が何度も読み返している愛読書である。
本書は、著者の既刊『日本の山はなぜ美しい―山の自然学への招待』(古今書院、1993年)や『山の自然学』(岩波書店、1998年)などの続編ともいえるような内容であると思う。
著者は冒頭で、日本の山には、世界でも他に例を見ない独特の美しさがあると述べている。
その美しさは、景色の多様性にあるという。
日本の山々が個性的に見えるのは、付加体や火山活動由来の地質であるとともに、多雪や強い季節風、氷河期の状況など様々な要素が影響し、植生も多彩であるためだ。
そこで本書では、高山植物を中心に光を当てながら、その植生分布や生態を決める主因となっている地質や地形の成り立ち、氷河期の影響などについても説明されている。
著者の視点は一貫している。
それは、地質や地形、気候そして植生など、自然を構成する様々な要素を横断的に捉え、相互の関係性を考察しながら自然を理解しようとするものだ。
一方で著者は、日本では自然史教育が普及していないため、自然の成り立ちに目を向ける人が少ないという主張もしている。
確かに、単に景色を眺めただけで、自然を堪能した、などと解った気になってしまうのは目も当てられないだろう。
本書を読むと、自然科学について多面的に関心を拡げることができ、自然や山の本質に近づく切っ掛けになるように思う。
<出版社ウェブページ>
http://www.heibonsha.co.jp/book/b163434.html
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