昨年、11月1日の17時頃、わたしは焦っていた。
前日、猪苗代登山口から会津磐梯山に登ったわたしは、裏磐梯の休暇村キャンプ場にテン泊し、小野川不動滝を経由して、その日はグランデコ山麗駅からロープウェイに乗って山頂駅まで行き、西吾妻山に登る計画だった。
ところが、キャンプ場からグランデコ山麗駅までの道のりと、ロープウェイの山頂駅から本当の西吾妻山山頂が、結構な距離だったので、西吾妻山山頂に到着した頃にはすでに時計が15時半をまわっていた。
「あーあ。やっちゃった」
更に日没後、辺りが暗くなってから天元台スキー場のとてつもなく長いゲレンデを歩いてスキー場のロープウェイ駅に到着したのが18時25分。それはふもとの白府温泉バス停からの最終バスが出る時間だった。
「もう山へ行くのはやめろよ」
わたしが月曜日の朝に出勤出来ない旨会社の上司に電話をすると、わたしが山から帰れなかったのが初めてではなかったので、こっぴどく怒られてしまった。
気分が落ち込んだわたしは、そこから白府温泉への道も怖そうだったので、そこにテントを張ろうか、しばし、迷った末、意を決して白府温泉への車道を歩いて降りて行くことにした。
「あー、着いた」
白府温泉の灯りが間近になったのが、20時ちょうど。多少、高くてもどこかのホテルに泊まるしかないので、目に入ったホテル『中屋別館不動閣』の門前で立ち止まり、スマホでそこのホームページを開くと、値段を確かめ、そのホテルに電話してみた。
幸いにも泊まることができてホテルの入り口から入ると優しそうな主人とその先代の主人らしい老齢の男性が出迎えてくれた。
「お腹空いたでしょう?夕食は終わりましたが、おにぎりでもお作りしましょう」
入り口近くの暖かい囲炉裏の部屋でお盆にのったおにぎりやみそ汁、漬物などを食べさせてもらうと部屋に通され、早速温泉に入った。
「オリンピック風呂?」
そこの大浴場の『オリンピック風呂』のネーミングに驚いた。うん十年もの前、小学生の時に今は亡き両親と祖母と行った懐かしいホテルの風呂が『オリンピック風呂』だったのだ。
「あー、やっぱり」
その『オリンピック風呂』へ入ると予感は的中だった。オリンピックのプールを彷彿させる細長い長方形の形態は確かにわたしの記憶にあったものと一致したのだ。
わたしは、今は亡き両親に導かれてそこに来させられた気がして感慨深い気持ちで温泉に浸かった。
小学生の時の両親と祖母を思い浮かべながら。
「お世話になりました」
翌朝、ホテルの主人と先代のおじいちゃんに見送られたわたしはとても温かい気持ちでホテルを後にした。
山の中に忽然と現れた温泉宿にびっくり、その後の景色の良い道の素晴らしさにも心奪われました
西吾妻スカイバレー、また行ってみたい道です
(オリンピック風呂、そそられます)
中屋別館不動閣のオリンピック風呂は本当におすすめです。
わたしも常宿として定期的に入りに行きたいと思っております。
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