登山というのは何がしか人様に迷惑をかけずには出来ない行為であり、特に山小屋やテント場といった狭い空間では避け難いことがあって、一々目くじら立てるべきではないと思う。が、限度というか最低限のマナーというものがあると思うのだが、これが人によって考え方が違うらしい。
1日目、登山口から登り2時間半、下り1時間半の所にある無人小屋に15時前に到着して、宿泊した。貸切と思って寝ていると、21時過ぎに男が一人、黙って入って来た。「泊まりですか?」と聞くと「はい」、「登りですか?」「はい」。それきり黙ってガサガサ荷物を出して、せっせとエアマットを膨らませて、30分ほどで静かになり、あっというまにイビキを掻き出した。元々寝付きの悪い私は、気が立って夜中まで寝付けなかった。
翌朝、話を聞くと、登りではなく下りであって、「手前にある営業小屋を通過した時点で日が暮れていて、その小屋に泊まろうかという気持ちもあったが、ちょっと欲張って進んでしまった。」と言う。平日だからその営業小屋は予約なしでも泊まれたはずだが、素泊り9000円だから無人小屋にしたいと思ったのかもしれない。コースタイム1時間半のところ、暗いせいで2倍以上かかったわけだ。道は素晴らしく良く整備されていて、昼でも夜でもさほど変わりなく歩けるコースと思うが、この人は夜歩くことに慣れていないのだろう。私が先に小屋を出たが、夜遅く着いて眠りを妨害したことに対する詫びは結局一言もなかった。
2日目、テント場に15時30分に着いた。ガスが濃く、雨が降りそうな気がしたので、急いでテントを張ってから、200mほど先にある小屋の受付に行った。受付でテントを張ってから来たことを告げると、「この小屋では、受付でテントサイトを指定してからテントを張ることになっている」と怒られた。実は予約の電話の際にそう言われてはいたのだが、テント場で周りの人から「今日は空いているから、どこに張ってもいいんだよ」と言われたこともあって、天気が気になって張ってしまったのだった。
ルールを守らないのは良くない。小屋の方で誰かに指定したサイトに先に他人が勝手に張ってしまうと、面倒なことになる。ただ、例えば穂高岳山荘では「自分でテントサイトを選んでから受付をしてください」ということになっている。この小屋のテントサイトは、完全な平地にロープを張って区画したスタイルで、穂高岳山荘と同じである。なのに受付でサイトを指定しなければならない理由が分からない。
さて、受付で翌日の計画を聞かれて「次の***避難小屋です」と答えたところ、「連休に入ったので、ものすごく混んで大変ですよ」と言われた。そうなんだろうけど、ここでそう言われても、他に宿泊できる場所があるわけではなく、縦走を打ち切って下山する気にもならない。せいぜい早く着いて寝場所を確保するしかない。
3日目、私としては最速で歩いて(途中で若い人に散々抜かれたが)、12時に避難小屋に着いたら、二番目で、一番奥に場所を取った。それからどんどん宿泊者が来て、15時半にはこの小屋の定員20名に達した。マットを隙間なく並べた状態だ。これでは済まず、日が暮れてから若者2人パーティーが到着して、彼らは通路の奥を塞いで寝た。このため、トイレに行くために通路に降りるには、まず隣とさらに隣に寝ている人の頭を踏まないように、起き上がってもらわなければならなかった。翌朝聞いた話では、このパーティーはこの避難小屋に連泊の計画だという。
私の隣に寝た男は、着いた時から「夜中に出発します」と宣言していた。実際0時前に起きて、盛大にガサガサ・バタバタ音を立てて支度をして出ていった。時間は計っていないが15分位だったろうか。夜中に出て行くのなら、寝る前にパッキングを済ませ、起きたら静かに寝袋とマットを丸めて外でザックに詰める、ということかと思ったら、とんでもなかった。
翌朝、縦走を続けていると、向こうからこの男がやって来た。にこやかな顔で「***まで行って戻って来た」と言う。避難小屋からコースタイム4時間の所である。この先の予定を聞くと、「避難小屋を通って下山する」とのことで、元々そういう計画らしい。ピストンなのにフル装備を担いでいるのも変だが、そもそもその行程で何故夜中に出発する必要があるのだろうか。早く下山する必要があるのか、あるいはナイトハイクが趣味なのか、どんな理由か知らないが、周囲に迷惑をかけてまでやることなのか。この男からも詫びの言葉は一言もなかった。
通路で寝た二人は若気の至りかもしれないが、あとの二人はそういう年齢ではなく、何とかに付ける薬はない、の類であると私的には思う。若者を甘やかしていると、この二人のようになるのかもしれない。
なお、避難小屋は緊急事態に備えるために設置されているものであって、計画的に利用することはけしからん、という話もある。ただ、中央アルプスではテント場が極端に少ないこともあって、管理者としては避難小屋の計画的利用を禁じてはいないように思う。もちろん、実際に緊張事態で使用される状況になったならば、直ちに外に出る覚悟はしておく必要があるとは思う。
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