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1mメッシュ(標高)(DEM1A)というのは、5mメッシュ(標高)(DEM5A)として提供されている航空レーザー測量データの基データを、その5分の1のサイズの格子に内挿して作成した高解像度の数値標高モデルである。DEM5Aの整備状況は70%程度かと思うが、DEM1Aの方は取得済みのデータを再処理するだけなので、整備は急速に進むのではないだろうか。
DEM1Aのデータは国土地理院の基盤地図情報ダウンロードサービスから無料でダウンロードできる。データ容量は2次メッシュ(2万5千分の1地形図の区画)1区画で約360MB。表示にはGISソフトが必要である。商業用途の大口利用者が多いのか、このサイトが非常に混雑して中々動かないという状況になっている。
幸い、3D地図アプリのスーパー地形から、4月30日のアップデートで「『スーパー地形データ』に1mメッシュから生成したデータを追加しました」というアナウンスがあった。スーパー地形データというのは、数値標高モデルから作成した陰影起伏図と段彩図を合成し、さらに斜度や曲率のデータも加えて、地形を立体的に表現したものである。表示を拡大していくと、これまでのDEM5Aベースの画像からDEM1Aベースに切り替わる。スマホやiPadで、全国どこの画像でも手軽に見ることができる。
DEM1Aになって地形表現は当然精細になった。尾根谷というオーダーを超えて、個々の露岩の分布状況等もリアルに表現されており、航空写真よりはるかに分かりやすい。地質調査等には大いに助けになるだろう。ちょっと気になるのは、実際の地形と関係ない、データ取得か処理の過程で生じたと思われる平行線パターンが表れている箇所がかなりある。この平行線はDEM5Aにも見られるが、DEM1Aではさらに密度が高くなっている。富士山の山頂付近が一番分かりやすい。このノイズために、本来の微細な地形が見えにくくなっている可能性がある。
個人的に注目しているのは、登山道がかなり見えることである。車道であればDEM5Aの画像でも見えるが、DEM1Aでは登山道まで見える。もちろんこれは、登山道が地形として表れている場合に限られる。つまりは通行量が多く、無残に深く抉れてしまった登山道が大地の傷として見えるということである。百名山のような有名山岳の一般登山道は大抵そうなっている。
しかし、今はそれを嘆いているわけではない。これをトレースすることによって、登山道の水平位置と標高を従来より格段に高い精度で把握できるだろう、と期待しているのである。なお、取得時期の異なるデータが稜線付近を境にして繋ぎ合わされているという場合が多く、その境界線が明瞭に見えることがあるが、これを登山道と誤認しないよう注意が必要である。
一例として、QGISで作成した奥多摩長沢背稜仙元峠付近の陰影起伏図を示す。ここの登山道(東京都水道局の巡視路)の位置は「ビッグデータを活用した登山道修正」で修正されたので、かなり正確な方だが、当然ながらまだ多少のズレがあることが分かる。
最近の登山アプリやウェブサービスはどれも登山ルートの累積標高差を表示するようになっているが、同じ登山ルートに対して、アプリごとに異なる累積標高差を示すことが多い。登山ルートの正確な標高データを得ることは結構困難である上に、累積標高差の計算というのは誤差をことさらに強調するような計算である。アプリごとに使用する標高データも、また誤差の影響を軽減しようとする方法も異なっており、その結果異なる累積標高差が算出される。正確な標高データがないことには、どれが正しい値に近いのか検証のしようもない、というのが現状である。
DEM1Aによって正確な標高データが得られるのが一部の限られた登山道であっても、それは最も利用者の多い登山道なのだから、結構意味はあるだろう。さらにそれを試金石にして、標高データの取得方法や計算方法が標準化されていくことが期待される。また、これに伴って登山道の傾斜データの精度も向上し、傾斜ー歩行速度曲線に基づくコースタイム推定の信頼度も高まるだろう。
DEM5Aでは、データ整備済みとされる地域でも、詳細に見るとデータが欠如している箇所が結構ある。その多くは河川や溜池のような水域であるが、さらに拡大して見ると尾根上や山頂といった水のない所に1、2ピクセル程度のデータ欠如があったりする。これはおそらくDEM1Aでも同じだろう。こういった箇所はDEM10Bで補うのが普通だが、DEM5AとDEM10Bでは結構標高値が違うので、穴や突起が生じることが多いだろう。
DEM1Aの提供はありがたいが、DEM5Aを完全なものにする作業も必要だろう。将来的には、地形図の等高線が現行の空中写真測量ベースから航空レーザー測量ベースに変更されるものと期待している。
せっかく購入したスーパー地形アプリ、普段から結構よく使っているとはいえ、特定のいくつかの用途だけで、他の機能を全く使っていませんでしたので、この情報はとてもありがたかったです。
結構山の上の方でも、過去に耕作地だったり山城だったりして「棚田状の地形」を見かけますが、私が過去に現地を見てきた記憶のある場所をこの機能で見ると、その凹凸が明確に表現されていて驚きました。
4/30に行ったばかりのこちら
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-8090481.html
を確認してみたところ、過去に山の上にあった水力発電用の2つの貯水池がくっきり表現されており、これまたびっくりしたところです。
今後これはお気に入りの機能としてお世話になる機会が増えそうで楽しみも増えました。
たしかに人工地形が相当細かいところまで見て取れます。地形図では記載を避けている、あるいは拒否している、というようなものまで見えてしまっている可能性があります。天道様はお見通し、ということでしょうか。
前向きな話として、奈良県では航空レーザー測量データを未知の遺跡発見に利用しているとのことです。それが全国に広がりそうだなと思ったら、なんと既に文化庁からマニュアルが出ていました。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/pdf/94197801_03.pdf
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