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結果として分かったのは、新型コロナは2019年末の出現以来5年余りで、日本の社会に定着してしまった、ということ。2022年以降毎年、冬夏2回の感染拡大を繰り返している。感染者数の推定は難しいが、毎回1千万人規模に達しているのではないだろうか。感染波ごとに15,000人以上の死亡者を出して、年間の死亡者数の2%強を占めている。
新型コロナウイルスは変異を続けており、インフルエンザや百日咳との同時流行というような新しい事態も生じているので、今後どうなっていくかは予測できない。とりあえず今夏(第13波)については、これまでの感染者数と入院者数を見る限り、直近の4波と比較して特別酷いという状況にはなっていないようである。
1)感染者数
5類移行以前は、新型コロナ感染者数の全数把握が行われていた。5類移行以後は定点把握となり、定点医療機関で確認された新規感染者数の平均値(定点当たり報告数)が週ごとに公表されている(厚生労働省:新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況))。定点医療機関に指定されているのは、全国約5000の内科・小児科の医院やクリニックである。2025年4月18日からは、約3000の医療機関に変更された。
5類移行直前の7ヶ月間について、全数把握感染者数と定点当たり報告数が比較でき、その比率は約4万である。この値を使用して、5類移行以後についても感染者数の推計が一応可能である。それによれば、感染波ごとの感染者総数は2022年夏の第7波で最大の約1300万人を記録した後は、波ごとに減少している。ただし、感染の可能性のある者のうちの検査を受ける者の割合が変化していない、というのが計算の前提である。実際にはこの割合は減少しつつあるだろう。
現在の第13波の定点当たり報告数は、最新の報告(8/18〜8/24)で急増して8.73となり、第12波の最大値を上回った。今回の急増の背景には、前週お盆で休業の医療機関が多かった影響があると思われるが、次週以降も増加を続けるかどうか、注視したい。
2)入院者数
新型コロナ感染による入院患者(在院者)数の全数把握が2024年3月27日まで行われていた(厚生労働省:療養状況等及び入院患者受入病床数等に関する調査)。これとは別に、5類移行以降2023年9月24日まで、全医療機関における新規入院者総数が週ごとに公表され、2023年9月25日以降は、基幹定点医療機関における新規入院者総数が週ごとに公表されている(厚生労働省:新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況))。また、これに相当する数値が、G-MISデータに基づいて、2022年12月5日分まで遡って報告された。基幹定点医療機関に指定されているのは、全国約500カ所の病床数300以上の内科・小児科医療機関である。
2023年4月24日〜9月24日の期間で、基幹定点医療機関における新規入院者数を全医療機関の新規入院者数と比較することができ、後者は前者の4倍前後となっている。
基幹定点医療機関における新規入院者数は、感染者の定点当たり報告数とは逆に、第9波、第10波、第11波と次第に増加している。各波の新規入院者総数を感染者定点当たり報告総数で割った値は、第9波の190から第12波の440へ順次増加している。感染の可能性のある者のうちの検査を受ける者の割合が一定であれば、感染者の重症化率が高くなっていることになるが、実際はおそらく前提が成り立っていないのだろう。
3)死亡者数
新型コロナによる死亡者数は、ほかの原因による死亡者数とともに、厚生労働省から人口動態統計月報として5ヶ月後に報告される。これは市区町村に提出する死亡届に添付の死亡診断書または死体検案書に記入された死亡原因に基づいて算出された数値である。
これによると、新型コロナによる2025年3月末までの累計死亡者数は約15万3千人。日本人の約800人に一人が新型コロナで死亡したということになる。個人的には、直接会ったことのある人で新型コロナで死亡した人が一人だけいる。多くの人にとって、同じような状況だろう。なお、2022年以降、新型コロナワクチンによる死亡者が合計69人報告されている。
5類移行以前は、各医療機関が日々保健所に報告した死亡者数を厚生労働省が集計して週ごとに公表しており、2023年4月末までの累計死亡者数は73,939人となっていた。しかし、人口動態統計によれば88,004人であり、16%過小に報告されていたことになる。
感染波ごとの死亡者数は、第8波で最大の約35,000人を記録したが、それを除くと、第6波以降では15,000人から18,000人の間で推移している。年別では2022年が約47,600人と最大で、2023年約38,000人、2024年約36,000人と漸減している。2025年は3月末までで約11,000人なので、年間では2024年と同程度になるかもしれない。
年齢層別に新型コロナによる死亡者数を見ると、高年齢層が大部分を占める。2022年以降、この傾向が一層顕著になり、85歳以上が63%、75歳以上が89%、65歳以上が97%を占める。全ての死亡原因での死亡者数は、85歳以上が52%、75歳以上が80%、65歳以上が92%である(2024年)。したがって、新型コロナは高齢者ほど危険な感染症といえる。これは感染者の致死率の年齢分布からも明らかなことではある。
なお、インフルエンザによる年間死亡者数は、コロナ禍以前の数年は3,000人前後であり、2020年から2022年までは千人未満だった。2023年から徐々に増加し、2025年は3月末までで5,216人と急増した。あまり報道されていないようだが、インフルエンザによる年間死亡者数が5千人を超えるのは1965年以来である。
コロナ禍中に感染防止を徹底したために、インフルエンザの感染者が激減したが、そこで免疫が失われた結果、今年の感染者急増を招いたと言われている。このほかに、コロナ禍中の活動自粛の反動という社会的要素もかなりあるのではないだろうか。
4)新型コロナ関連死の可能性
コロナ禍以前に、近年のインフルエンザによる年間死亡者数は約1万人、ということが言われていた。これはインフルエンザ流行時に統計モデルから予測された超過死亡数を、インフルエンザに関連して生じたものと見なした推計値である。
では、新型コロナによる関連死は生じていないのか? ごく大雑把な検討として、人口動態統計による年間死亡者総数の推移を見てみる。コロナ禍以前は、2010年の約120万人から2019年の約138万人まで、2万人/年前後の一定に近い割合で増加していた。2020年と2021年もほぼこのトレンド上にあるが、2022年以降はこのトレンドより13万人ないし14万人多くなっている。死亡率の推移でも同様の傾向である。
年齢層別に見ると、80歳以上で2022年以降に死亡数が顕著に増加している。ただし、80歳以上では基となる人口自体が年々増加している(1945年以前の出生数増加傾向の反映)ので、死亡率の変化を見るべきかもしれない。死亡率の明らかな増加が見られるのは90歳以上である。
死亡原因別の死亡者数推移を見ると、コロナ禍以前の年毎の死亡者数増加の大部分は「症状,徴候及び異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの」という死亡原因によっている。その内訳は老衰が約85%、残りはいわゆる原因不明である。2022年以降、老衰と循環器系の疾患(特に心不全)による死亡が急増している。
新型コロナが直接の死因とならなくても、新型コロナの感染をきっかけに持病が悪化したり、新たな疾病を生じることはあるだろう。さらには、新型コロナに感染しなくても、高齢者の活動自粛ないし制限が運動不足を招き、老衰や心不全による死亡を増加させている可能性はあるだろう。死亡数増加の全てがそのためであるとは、勿論言い切れないのだが。
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