9月5日のうだだんさんの日記に、「最近累積標高の数値が変わってしまったが何故か?」と質問したのに対して、ヤマレコから以下の回答があったと記されている。
「8月16日に、標高をより高精度で取得する対応を行いました。その日以降は、新しい標高データを元に山行記録の累積標高を表示させていただいております。」
これでは説明不足だと思うが、「標高をより高精度で取得する」とは、「国土地理院標高」の取得に使用する数値標高モデルを従来のDEM10BからDEM5Aに変更する、ということのようである。国土地理院によれば、DEM10BとDEM5Aの標高精度(標準誤差)は、それぞれ5.0m以内と0.3m以内である。また、ヤマレコはDEM10Bには標高タイルズームレベル14、DEM5Aにはズームレベル15を使用しているようなので、解像度が2倍になる(緯度35度での格子サイズは、ズームレベル14は7.3m、ズームレベル15は3.9m)。
8月16日より前に作成した山行記録についても、編集作業を行うと(編集画面を開いてそのまま閉じても)この変更が適用される。山行計画についても同様で、過去に作成した計画でも以下の操作でDEM5Aベースの標高に切り替わる:編集メニュー>ルート作成>らくルートで編集する>保存
ヤマレコとしてはサービス向上ということなのだろうが、ユーザーに聞かれるまで黙っているのは、奥ゆかしいのか無精なのか良く分からない。なお、標高グラフに表示される標高値は、山行計画、山行記録ともDEM10Bのままである。ちょっとチグハグだが、将来変わるのかもしれない。
この変更で累積標高差が変わるのは、累積標高差計算の入力となる標高値が変わるからであって、累積標高差の計算方法が変わったわけではない。自分の山行記録で試したところ、この変更で累積標高差が増えるもの、減るもの、ほとんど変わらないもの、様々である。GPS標高とSRTM標高の累積標高差は変わらない。ヤマレコの累積標高差計算方法については6月30日の日記に書いたので、興味のある方は御覧頂きたい。
そもそもGPSの標高値を数値標高モデルの値に置き換えるのは、その方がより正確な標高値が得られると考えるからである。しかし、これには前提がある。数値標高モデルから得られるのは、あくまでも与えた緯度経度に対する標高値である。
GPSで測定した緯度経度が正確であれば、つまり測定地点の真の緯度経度を示しているのであれば、数値標高モデルが高精度であるほど、正確な標高値が得られる。しかし、緯度経度がデタラメであれば、数値標高モデルの精度がどうであろうと、標高値もデタラメであり、したがって累積標高差もデタラメである。この傾向は地形の傾斜が大きいほど顕著になる。
ちょっと違う話になるが、GPS機器には気圧センサーを備えたものとそうでないものがあり、両者の標高値の精度は大きく異なる。気圧センサーなしのGPSの場合、標高値は不安定で常に振動しており、これを使用して累積標高差を計算すると、大抵相当な過大評価になる。これは数値標高モデルの標高を使用することである程度抑えられる。一方、気圧センサー付きのGPSの場合、標高値はかなり安定しており、数値標高モデルの標高値を使用すると、却って累積標高差が大きくなってしまうことが結構ある。林道や谷沿いのルートでは特にこの傾向が大きい。気圧センサーの有無によるGPSの標高値の違いについては、6月16日の日記を御覧頂きたい。
iPhone13以降は全て気圧センサーを搭載しているし、アンドロイドスマホの一部もそうなので、今の日本の登山者の使用するGPS機器の半数以上は気圧センサー付きだろう。累積標高差計算に数値標高モデルの標高値を使用するのがデフォルトであるというのは、時代遅れになりつつあるのではないだろうか。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する