![]() |
![]() |
![]() |
・クマの出没情報件数の推移
・クマの捕獲数の推移
・地域ごと、月ごとの被害状況の推移
・堅果類の豊凶
1)クマの出没情報件数の推移(2021年以降)
年毎の7月までの出没情報件数は今年が最多で、クマの人里への出没が増加していることを反映しているのだろう。ただ、マスコミでのクマ報道の頻度ほど多くなってはいないような気がする。
2)クマの捕獲数の推移(1960年度以降)
年間の捕獲数は、2015年度以前は2千頭前後の年が多かったが、2016年度以降は毎年4千頭以上に増加し、最多の2023年度は9千頭に達した。これは最多の被害人数を記録した年でもある。ただし、クマの捕獲目的は農林業被害防止という意味合いもあるのだろう。「狩猟者が減少したのでクマ被害が増えた」という指摘がしばしばなされる。狩猟者が減ったのは事実だが、しかしクマの捕獲数は増えている。もっと捕獲すべきなのだが、狩猟者が不足しているためにそれが出来ない、という意味ではそうなのかもしれない。あるいは、昔は役所が把握していない狩猟が多かったのだろうか?
クマの生息数の推定はかなり難しいらしいが、おおまかには全国で2万頭から3万頭という数字がある。人里に出没するクマが増えているのは間違いないが、クマ全体として増えているのかどうか、はっきりとは分からないらしい。2000年以降の捕獲数の合計は約10万頭なので、この25年間の平均として全体の6分の1程度が捕獲(ほとんど捕殺)されてきたことになるのかもしれない。自然保護と人・農林業への被害防止とのバランスとして、これは妥当な数字だろうか?
3)地域ごと、月ごとの被害状況の推移
クマによる被害件数、被害者数、死亡者数について、2008年以降の年毎・都道府県毎の、また2016年以降の月毎・都道府県毎の値を環境省が公表している。
2008年から2025年8月末までの全国のクマ被害人数は1781人。このうち49%は東北6県(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)、33%は中部7県(新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜)で発生している。被害件数でもほぼ同じである。
年間の被害人数が最多だった2023年は、東北6県(特に秋田と岩手)で特に被害が多かった。2番目の2020年と3番目の2019年は中部7県で被害が多かった(2020年は新潟、石川、福井、2019年は富山、新潟)。いずれも9月以降に被害が急増している。なお、長野は全体の被害者数で岩手、秋田に次いで3位だが、2013年に最多の32人を記録した以外は傾向が掴めない。
今年の被害者数は、8月末までの時点で比較すると、2023年に次いで多い。しかし、8月末までの時点の被害者数は年毎の変動が小さく、大きく変動するのは9月以降である。このため、この数字から今年の年間の被害者数について予測することはできない。
4)堅果類の豊凶
堅果類(ドングリ、ブナ、クルミ、クリ、マツなど堅い殻をもった実のこと)はクマの冬眠前の重要な食料であり、その豊凶がクマ被害の時期や規模に大きく影響するといわれている。豊作であれば翌年の出産数が多くなって子連れクマの出没が増え、凶作であればその秋に人里への大量出没となる傾向がある。豊作の翌年に凶作になると、増えたクマが飢えるというまずいパターンになる。
毎年各都道府県が堅果類の開花状況と結実状況を調査している。夏の開花状況から秋の結実状況を予測するわけだが、開花状況と結実状況はかなり良く相関している。なお、ブナは栄養価の高い優れた食料だが豊作と凶作の振れ幅が大きく、それに比べるとミズナラ、コナラ、クリ、クルミは比較的安定した結実をするらしい。
東北森林管理局が東北6県のうち福島県を除く5県について、1989年以降の「ブナ開花・結実調査」の結果を公表している。2023年は5県とも大凶作で、これが過去最大のクマ被害を招いたと言われている。2024年は並作ないし豊作だった。そして、今年の開花状況からは2023年とほぼ同程度の大凶作が予想されている。福島県については、今年のブナは大凶作、ミズナラとコナラは並作ないし豊作と予想されている。
中部7県については、このようなまとまった資料があるのかどうか分からない。が、この地域で堅果類は2018年と2021年は豊作、2019年と2020年は凶作だったのは確かなようだ。今年はNHKのまとめによれば、以下のように予想されている(9月4日のNEWS WEB)。
・ブナ:新潟県、富山県、石川県は凶作、山梨県は並作
・ミズナラ:富山県は凶作、山梨県は並作、石川県は豊作
・コナラ:富山県は凶作、石川県と山梨県は並作
今年は夏の時点で既に人里への出没が多いのに加えて秋に堅果類が凶作となると、クマの専門家が「過去より非常に危険な状態になる可能性ある」(9月4日のNHK NEWS WEB)と警鐘を鳴らすのも無理はないと思う。過去というのがどこを指すのか曖昧だが、とりあえず被害が多い方か少ない方かといえば、多い方になるのだろう。ただ、自然界の状況がそうであるのは仕方ないとして、人間の方でどう対応するかが重要なのだろう。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する