これまでに読んだ遭難関係の書籍を漁ってみました。
せっかくなので読み返して簡単なレビューを書きたいと思います。
(ややストーリー内容に関する記述を含みます)
ドキュメント生還(羽根田治著)
「道迷い遭難」とこの「生還」をはじめて読んだのはもう数年前
のことですが、あまりのすごさにそのあと羽根田氏の著作を
買いに走りました。
何がすごいのかというと、客観的な、および遭難者自身への取材から
構成された文章から当事者の心理状態が手に取るように理解できる
ところです。
遭難というとおおげさですが、簡単な道迷いでもしかけた経験のある
人であれば「あー、あるある」という部分が随所に現れます。
まるで自分自身が遭難しているかのような臨場感。それは、詳細に紹介
される当事者たちのプロフィールがある程度の登山経験者であるため、
私たちとも重ね合わせやすいという理由もあると思います。
さて、「ドキュメント生還」ですが、8篇あるお話の内容は
道迷い、ルートミス、滑落、道迷い、滑落、道迷い、道迷い、道迷い
というものです。
5つの道迷いのうち2つは雪山ですが、いつも道迷い遭難事例をみて
思うのは、GPSがしっかり使えていれば防げるものということです。
(この本の事例は大体GPSが普及する前のものです)。
ただ、GPSがあると防げるといっても実際には、予定路を外したことを
早期に気づくことができるのと、戻ってリカバーするルートを可視化できる
ということだろうと思います。
道を間違えてからGPSを確認するまでの、「何か変だな」という
間は同じ心理状態と考えられます(いまは警告機能もありますが)。
あとは迷ったときは早急にわかるところまで戻るのが重要で、
そうしないとこんなことになってしまう危険性がありますよ、
という反面教師的なことを学べると思います。
(これに関してはヤマレコ使用者であればみんなの足跡を見て、
「この道通れるじゃん」となることもあるのでなんとも断言
できませんが)
疲労していたりして登り返すことをせずに沢に降ってしまう、
崖のようなところに入り込んで進退窮まってしまう、
など頭では分かってはいるけどもし自分が同じ立場だったら
どのような行動をとることができるか考えながら読み返しました。
2つ目のルートミスは急遽予定変更して下山を沢コースにしてしまった
事例です。
一応一般登山道扱いの沢コースみたいですがそれほど簡単
なところではなく(大桧沢:沢登としてどの程度のグレードかは不明)
しかもそこを降ってしまったという。
滝の降りは困難で樹林から巻くにしてもロープが必要なところが多いのは
自明ですが、やはり登山予定の経路の下調べは重要でしょう。
滑落のうち1つは雪山で同行者のザックにあたり転落。
もう1つはちょっと詳細不明ですがおそらく斜面に入りこんで滑落。
同行者にかぎらず、狭く切れ落ちた場所ではザック、荷物は凶器
になり得ます。
登山セオリーで「登り優先(位置エネルギーの大きい降り側の登山者
が待って道を譲る)」というのがありますが、これもすれ違い困難な
状況下でどうすれば最も安全にお互いが通過できるかということを
ケースバイケースで考えるべきでしょう。
また、見通しの悪いところでやぶこぎするようなところでは地面があると思ったらなくてヒヤッと、という経験もみなさんあると思います。
滑落した後の当事者達の心理状態も非常に読み応えのある記録です。
同時に、これらの話は本当に遭難した時、救助を待つべきか、自力での下山を目指すか、というテーマもそれぞれ含んでいます。
それぞれの登山者が持つ装備と救助されるまでの葛藤など、いろいろ
考えさせられるところが多いです。
以前に2,3回は読んだはずですが、改めて読むとまた得るところ
があります。
次は、「山の突然死」を読みたいと思っています。
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