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野口健という強力な磁場に惹かれ、アルコール依存症のように酔った末に人生を狂わされた著者の、愛憎を込めた絶縁状であった。
私も野口健の著書はほとんど読み、講演も聞いたことはあるが、やはりアルピニストの香りは感じなかった。山を舞台に活躍する一流の役者であり、その意味でこのような舞台裏、影の部分があるのも必然とは思うが...普通は表に出るはずのない禁書を手にした気分である。
それらは影ではあるが、悪、ではない。野口健という高峰の、陽の当たらない北壁のようなものだ。何人もの人間が彼に魅了され犠牲になっていったことが窺える。それは成功した世界線での栗城史多、とも言うべき半生。
善悪ではない、人間の、暗い深みと虚しい高みの両方を見たような、素晴らしい一冊だった。
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②地上に星座をつくる
雑誌【新潮】に著者が連載していた7年間の記録を綴ったもの。48遍が掲載されており、どこから読んでもよい。
石川氏の著書は「最後の冒険家」「全ての装備を知恵に置き換えること」から好きだが、天然水のように印象に残らないけれど美味しくて純粋でたまには飲みたい的なエッセイ。
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③山のリスクとどう向き合うか
正直イマイチだった。新しい気づきやリスク低減につながる知識が得られるかと思ったが、これまでの書籍や雑誌やWebで得た範囲を超えるものではなく、目新しさに欠けた。
自分も登った山の遭難事例をたくさん掲載してくれてるので個人的には啓蒙的な意味では効果はあったが、オリジナリティがほしかった。「山のリスクとどう向き合うか」は読者に丸投げされており、例えば丁寧な取材から見えてきた道迷いの際の引き返せない心理など、有事の際に役立つ仮説のひとつでもほしかった。
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