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2017年08月10日 17:14山旅の軌跡全体に公開

船窪岳〜烏帽子岳周回 2の1

山旅の軌跡 第51回 日本三大急登やアルプス三大急登などという言葉を聞くが、その基準はあまりはっきりしない。実際、出典によって名称が違っていることもある。まあ、手前味噌的な要素もあるのであろう。しかし、北アルプス烏帽子岳へのブナ立て尾根が漏れることはないようである。そのブナ立て尾根に勝るとも劣らないという、登山道が直ぐ近くにある。それが船窪新道である。

ブナ立て尾根は、北アルプス裏銀座の起点であるから、結構賑わっている。しかし、蓮華岳から烏帽子岳の間は、船窪新道の急登や蓮華の大下り、荒廃したザレの崖縁を行く、アップダウンのコースなどが影響してか、静かな山域として知られている。別に、静かでなくても良いのだが、厳しいと聞くと登ってみたくなるのが人情である。

そんな話をしていたら神さんが食指を伸ばしてきた。どうも神さんは、NHKで船窪小屋のことが放映されて、小屋を守ってきたという、おばちゃんのことが気になっているようである。放映後、結構訪れる人が増えたらしい。神さんもそのうちの一人であろう。ぜひ会ってみたい。そのためには急登なにするものぞ、の意気込みのようである。まあ、私は、船窪岳から烏帽子間の稜線を歩いてみたいだけなので理由はどうでもいい。ただ、小屋泊まりはいやなのでテン泊とする。

七倉登山口、9時半出発。客待ちしていたタクシーの運転手によると、今日は、船窪新道を登った者はいない、ということである。トンネル手前から沢沿いに進み、左手の斜面をつづら折りに登る。ブナ林の中を行く道で、見通しはない。途中で、下山するグループや単独行とすれ違う。ちょうどそんな時間である。

雀が群れを成して鳴くような音が聞こえてきたが、それは、東京電力の送電線保守用道路の整備のための草刈機の音であった。若い男性二人で、ちょうど休むところだったらしく、しばらく雑多な話を交わした。コスト縮減のあおりで、草刈りも年に一度になったらしい。彼らは、草刈り機を肩に、さらに登っていった。
 
しばらくなだらかなオオシラビソの道が続く。オオシラビソの道は、陰気くさくてあまり好きではない。時折、蓮華の大下りらしき地形が見えた。どんよりとした雲がかかってきて、雷と一緒に雨がぱらついた。昨日は、凄い雷雨だったらしい。登山指導所で、雷に十分注意するようにとの指導を受けている。稜線で雷に遭ったらどうしようか、と不安である。しかし、雷は直ぐに止んで、雨も濡れる程ではなく、かえって涼しくて有り難い。岩小舎を過ぎると、「鼻突き八丁」という急登が始まる。もちろん鼻が土に付くわけはないが、文字通りの急登である。丸太の階段も連続し、重荷の身体には少しばかり厳しい。

「鼻突き八丁」を頑張ると灌木状の道となり、高山の様相を呈してくる。しかし、雲がかかっていて遠くの展望はない。誰も登った者はいないはずだが、中年のカップルが先行していた。今日、船窪新道を登ったのは、私達も含めて2グループだけだろうか。肩に出たところが、天狗の庭である。雨が急に強くなって、雨合羽を羽織った。道は、尾根の右下を行く。チングルマの綿毛が、雨に濡れている。

道は、尾根を乗越すと、目の前に船窪小屋が見えてくる。路傍の砂礫の中には、小さなコマクサが咲く。船窪小屋は、こぢんまりとしているが、がっちりした作りである。小屋の前で写真を撮っていると、おばちゃんが出てきた。神さんがテレビで見たというと、握手をしながら、記念写真に収まった。ネパールでシェルパをしていて、小屋を手伝っているという人も一緒だった。

テントの受付をしている間、お茶をご馳走になった。囲炉裏の回りを登山客が取り囲んでいるが、それほど混んではいないようだ。囲炉裏の煙が目に染みた。そう言えば、数少ないランプの山小屋である。煙の臭いもご馳走なのであろう。(おばちゃんは、現役は引退されたようですが、先日テレビ番組に小屋から出演されていてお元気なようです)

雨は、ほんの一時で、晴れ上がる気配である。緩やかにテン場への道を下っていく。七倉岳への道を分け、さらに下っていくと、ザレの斜面に、丸太の階段が付いていて、それを下るとテン場である。テン場は、ほぼ満杯である。一段下がったところに、少し湿っているが、良いテント場があった。しかし、誰かが糞場として使ったらしく、とてもテントを張る気になれなかった。

あまり条件は良くなかったが、テントとテントの間に、何とか納めて貰った。テントは、10張り位しかないのだが、それでほぼ満杯という狭いテント場なのである。二人用でなく、四人用のテントだったので、張れただけでも良しとしなければならないであろう。水場は、東沢源頭の斜面にあり、ロープ頼りに降りていかなければならない。滑れば真っ逆さまだし、上部の土砂が崩壊すれば、そのまま流されてしまう。あまり気分の良いところではない。しかし、水は冷たく、おいしい水である。

ガスが晴れ上がって、槍ヶ岳や三ツ岳、明日登る不動岳などが姿を現した。テン場から少し船窪岳側へ進むと、針ノ木岳と蓮華岳が真正面である。間近に見るその山体の何と大きいことか。その左側には、立山連峰が連なっている。ガスがかかっている間は、何の変哲もないテント場だと思ったが、ダケカンバに囲まれ、山の深さを感じる、雰囲気の良いテント場である。まあ、しかし、大雨の時には泊まりたくないテン場でもある。

写真左:鼻突八丁を登る
写真中:船窪小屋のおばちゃんとネパールでシェルパをやっているという人と神さん
写真右:槍ヶ岳を望む船窪岳のテン場
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