山行記録にも書きましたが、大山〜弘法山周辺で単独男性が
道迷い遭難で現在も行方不明になっております。
9/30捜索記録↓
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-730621.html
携帯でご家族に「道に迷った」「どこにいるのかわからない」と連絡がありましたが
その後おそらくバッテリー切れを起こし携帯電話会社のアンテナから
具体的場所を察知することが不可能になりました。
現在も公開捜索中です。
このルートを辿ったかどうかも登山届が出されておらず、ご家族にも
「大山へ行ってくる」とだけ言い残して出かけられたため
まったくわかりません。
登山届提出の必要性については今年3月に掲出した私の日記にも記したので
割愛させていただきますが、
捜索救助する立場(ちなみに私は警察ではなく、要請あれば出動する
遭難対策協議会救助隊です)から
もしそのような事態になった場合の留意点を述べさせていただきます。
●もし道迷いを起こし、携帯等でご家族や所属山岳会、地元警察などと
通話やメール連絡ができるなら、たとえ自分のいる位置が不明でも
周囲の状況を冷静に伝えてください。
例)・「水量は少ないが沢の中で、すぐ上流に5mくらいの滝がある」
・「沢は南に向かって流れている」
・「植林帯の尾根の途中で平ら(または急)なところにいる」
・「右下の方に沢の音が聞こえる」
・「日の沈む(方角がわかれば具体的に)斜面側の中腹にいる」
・「3時間前に○○山(最後に現在位置がわかっている所)を
△△に向かって下りた」
・「左斜め下に町灯り(特定できる顕著な物があれば尚良い)が見える」
(だいたいの距離や高度差がわかれば尚良い)
etc
以上の場所状況説明は遭難者から説明するばかりでなく、
連絡を受けた人こそ、まずは遭難者を落ち着かせ、聞き出すように
してあげてください。
連絡中に電波が切れることもありがちなので、簡潔に。
もちろんGPSが使えれば緯度経度や他の情報を伝えやすくなるかも
しれません。
これらの情報は我々捜索する側としても、場所を特定するために
貴重な情報源となります。
●携帯通話やメール連絡が取れた箇所から、焦って動かず、もし夜になっても
そこでビバークの覚悟を決めてください。
動き回れば体力を消耗するばかりか、転落滑落の危険もはるかに増します。
また折角の携帯通話エリアから外れてしまいがちです。
まず自分の身体を保温することに努めてください。
こういう不測の事態は起こり得るものなので、ツエルト(簡易テント)または
アルミ製のビバークシート1枚、雨着(雨着は何も雨避けの役割だけでなく
防寒着としてある程度機能するので、どんなに晴予報であろうが、ハイキングで
あろうが必携です)、非常食と飲料、
そして携帯やスマホ用の予備バッテリーや乾電池式の充電器は常に携行します。
※残念ながら今回の要救者は夜中に焦って動き回ってしまった形跡がありました。
●携帯やスマホは山中ではバッテリーの消耗が下界より激しいので
もし連絡が取れたなら、「次の連絡は明日朝6時にする」など
連絡が取れた人と定時連絡時刻を決めて、特別な指示がない限り
電源を切っておいてください。
予備バッテリーや電池式充電器は最後の手段です。
●捜索を依頼する警察署は、その山の管轄警察が望ましいです。
たとえば大山なら秦野警察や伊勢原警察です。
ご自分の住まわれている町の警察ですと、行方不明になった山の管轄警察と
いろいろ情報のやり取りなどがあり、一刻を争うかもしれない捜索救助活動の
スタートに時間がかかってしまう恐れもあります。
●今回の方の服装な公開捜索ビラにも掲載されていますが、紺色や黒色など
地味な色で、山の中では我々も探すのは非常に苦労しています。
こんなことを言うとウエアメーカーからお叱りを受けそうですが
有事に備えオレンジ、赤、黄などのウエアやザックがよいです。
山でよく見かける猟友会の方はオレンジ蛍光色のベストを着ていますが
森の中や雪の中ではおそらく一番目立つ色かと思います。
●山岳保険は、登山行為を行う人は、以前よりも加入するのが当たり前という
考えは浸透してきました。(もちろん捜索救助費用給付のものです)
しかし、案外加入はしているものの、それをご家族に伝えていない
(したがってご家族はそういう保険に入っていることを知らない)
ケースが多いようです。
警察や消防など公共機関だけならほぼ無償ですが、捜索になると
どうしても人手不足となり、我々のような救助隊が出ることもあります。
そうなると有償です。
また公共ヘリもほぼ無償(一部有償の流れあり)ですが、都合よく
その際に空いていなければ民間救助ヘリが出ます。
ヘリはよく1分1万円と言われますので、相応の金額がご本人または
ご家族に請求されます。
それから遭難現場にたまたま居合わせた他パーティが、事故者を救助するために
使った装備(ロープやカラビナ、スリング等)は当然弁償しなければなりません。
状況により救助に携わった方にも相応の謝礼を払うことが妥当でしょう。
捜索救助付き山岳保険に入っていれば、後日それらを補填できます。
(保険元により給付できる内容とできない内容がありますが)
もし運悪く要救者がお亡くなりになって、ご家族に請求が来ても
山岳保険に入っていた事実を知らなければ、高額な請求に応じなければなりません。
そうならないためにも、保険証券と連絡先、そして補償内容をご家族に
伝えた方がよいと思います。
山岳事故は時代の波のように押し寄せる登山ブームとweb情報の氾濫により
次第に増えています。
自分の身は自分で守るために、事前に怠ってはならない防御策を是非実践して
いただきたいと思います。
3月に引き続き偉そうなことを記しましたがご容赦ください。
残念ながら10/10大山南部の春岳沢/髭僧ノ滝で発見されました。
故人のご冥福をお祈り申し上げます。
またご協力いただいた皆様、誠にありがとうございました。
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