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挙げて締めくくりたいと思います。
比良に伝わる伝説「むかしばなし」についての一項ですが・・
いきなりギョっとさせられるような一文で始まります。
(本文)頁127〜130/「比良の昔語り」「伝説小女郎ガ池」
【前略】荒唐無稽という言葉がある。昔話とか伝説とかいうものは、ほとんど
がこの言葉にあてはまって、ふつうの常識では聞いていられないものだ(中略)
民俗学的な立場から見れば、この昔話や伝説も貴重なものなのだろうが、それは
そうした特殊な研究者のことで、一般にはまったくあほらしい話だ。あまりあほ
らしいのでかえって面白い、ということもできる(後略)
もちろん、いまは古民話に対する受け止め方がだいぶ変わっています。
そんな「日本むかしばなし」世代の人間としては、それを言っちゃあ、というか、
一刀両断、あんまり身も蓋もない筆致に度肝を抜かれます。
けれども、しかし、それゆえに当時の気分が分かって面白いです。
特に( )内の注釈というかツッコミ(笑)ももちろん筆者のものです。
【前略】南船路の土民久右ヱ門とその若い人妻お孝と二人の間の乳児が主なメン
バーである(名前などはどうでもよい)。お孝さんは美人である(ヒロインは
たいてい美人に決まっている)。ある日薪を取りに比良へ登り小女郎ガ池(その
頃はもちろん無名だったのだろう)の辺で美しい青年に会う。青年の微笑にお孝
さんもこたえて仲がよくなる(けしからん嫁さんだ)(後略)
逐一ツッコミを入れなければ書けなかった、というところか。
「小女郎ガ池の伝説」については、何よりも現地に看板があり、比良ハイカーなら
大概はご承知だと思うのでここでは引用しませんが、あとの「解説」も、大真面目
に書き始めたら、そのうちアホらしくなってきた・・ってな感じがよく出ていて
揮っています。
【前略】美青年に会って仲がよくなり、夫と子供を捨てて男の許へ走る、という
のは現代では少しも不思議な現象ではない。池の主の大蛇というのは、有力者
とか金持ちを象徴したものなのだろう。眼玉をくりぬいて与えたというのは、
眼玉は大変貴重なものであることはいうまでもないから、それほどの金品を
不貞の代償に与えたのだという近代的な解釈を加えると、この伝説、さっぱり
面白くない(後略)
「不倫は文化だ」と言い放ったバ・・じゃなかったヒトもいる今ならいざ知らず
う〜ん、50年前でも「少しも不思議な現象ではな」かったんですね(苦笑)
まァそれはともかく、最後はちょっと艶っぽい(?)締めくくり方。
【前略】山の池の主に魅入られたお孝さんは、毎夜体がほてって寝られない
ので、山の池に体を冷ましに登ったという別の話もある。燃えるような恋心
という意味でこれも面白い。
いやいや、そこまで書いて最後ボヤかしたらあきませんぜ、という感じ?

この異説についても、ぜひ「近代的解釈」を、と言いたくなりますが(ゴホン)
こりゃ無理な相談ですね

*************
以上、当今のガイドブックと比べてたいへん面白い「読ませる」記述に溢れており、
貴重な読書体験をさせて戴いたので、ついつい長くなってしまいました。
最後に筆者のプロフィールと、この「山渓文庫」のラインアップを挙げておきます。
できることならこれ、全部読みたいものですが、とりわけ第12巻「新しい六甲山」
だけは(170円)なんとしても手に入れたい!
また新しい古本屋漁りのターゲットが出来ました。

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