※最初に!!かなりの長文ですので、読むのが苦痛な方はスルーしてください。また、山スキー2シーズン目というかスキー2シーズン目の初心者ですので、その範囲内で知り得た情報ということをご承知おきください。
積雪期登山の長距離化を模索し、山スキーへの移行を検討されている方がちらほらといるように感じています。昨シーズンまで、私はそのような登山者の1人でした。装備と安全の兼ね合いに悩み、創意工夫しながらも一定程度、自分なりのスタイルを確立しました。その反面、そのスタイルへの限界も感じ、対策として昨シーズンから山スキーにトライすることにしました。ちょうど今、同じようなことを検討されている方の参考になるかもしれないと思い、昨シーズンから山スキーを始めた者として所感を日記に記します。
結論から言いますと、私の場合、山スキーと雪山登山では、雪山登山の方が圧倒的に速いです。今の自分はスキーがまだまだ未熟で、一般山スキーヤーの末端位のレベルですが、現状で多分、スキーの方が1.5〜2倍遅いと思います。上手くなっても、この差は埋められないと思います。
次に山スキーの実情です。山スキーの登りは、シールというものを板裏に張り付け、その摩擦で歩くのですが、急斜面や小さな階段状の段差、登山者の踏み跡、沈み込まないレベルのクラスト(雪の表面が硬くなっている層)、氷化斜面はスノーシューやつぼ足、アイゼンより遅いです。シールハイクができない場合は板をザックに括り付けて登るのですが、これが非常に重く、普通のつぼ足の方と同程度のスピードとなります(自分は無雪期はCT0.5前後)。さらに重量物を身に着けているため踏み抜き多発となります。
重量物概要は以下の通りです。
・ブーツ:両足で約5kg
・板とビンディング(ブーツを取り付ける金具):両足で約6kg
・スコップ:約0.5kg(緊急時の雪洞やイグルー作り、雪崩埋没者の掘り起こしに必要)
・ゾンデ:約0.3kg(積雪深や埋没者探索で必要)
・スノーソー:約0.2kg(雪用の鋸。イグルー作りに必要)
・ビーコン:約0.3kg(雪崩埋没者の探索機)
・ウィペット:左右で約1kg(ピッケルが合体したトレッキングポール)、
合計約13kgです。
この他に通常の登山で必要な装備が追加となりますので、総重量は日帰りで約25kg位(服は除く)となります。
滑走時はブーツと板の重さ、約11kgは感じなくなりますが、背負って歩くときは拷問です。
そういう条件のため滑走時のスピードを差し引いても、私の場合、雪山登山よりも遅くなります(下山のための下りの滑走だけならば、自分の場合、雪山登山の1.5~2倍弱速い)。
さらに、滑走時も実は楽でないです。湿った雪、いわゆる重い雪は滑走時に太ももの筋肉を疲労します。時々斜面でスキーヤーが立ち止っているのは、筋肉が悲鳴を上げて休憩しているのです。さらにカチカチ斜面では、とても滑走できず、全身の筋肉で板を真横にしてブレーキをかけながら滑り落ちていきます。これも恐怖心も相まって非常に疲れます。
ですが、世の中にはスキーで圧倒的な速さ、距離を行かれる方々がチラホラ見られます。このような方は一体、どうしているのか。自分なりの結論は以下の通りです。
・山頂までほぼ登り、帰りはほぼ下りのコース取りとなりように工夫し、できるだけシールの脱着時間などのロスをなくす。つまりスキーに有利なコースは限られる。
・スキーに向かないような山、登山者の踏み跡でギタギタの山や良く締まった雪質の山は、登山者と同程度の距離までとする。
・スノーシューでも常に膝上のパウダーなどの状況が想定される山に行く(圧倒的に浮力のあるスキーは、登りのシールハイクでも下りの滑走でも、スノーシューより数倍楽で速いため)。
・とにかく、体力と技術を磨く(これに尽きるかも)。
最後の体力、技術が特に重要で、さらに技術がとびぬけている方は、圧倒的に有利です。この技術には、滑走技術はもとより、スキーならではのルーファイ技術があります。それは、登りでは、緩やかな登りとなるようなコース取り、下りでは常に下りとなるようなコース取り、トラバースでは安全重視のコース取りなどです。滑走時は距離がある程度長くなっても、安全に滑走できるルーファイルができ、そこを滑走できれば、所要時間はむしろ短くなります。そういった利点があります。
ですので、スキーを利用して、今までの雪山登山よりも長距離化を目指す場合は、それなりの経験時間と努力が必要となります。そして、それを支えるベースとなる装備が重要です。これは相当に高価で普通の登山者にはおいそれと出費ができない額です。例えば山スキー用の板10万、シール2.5万、ブーツ7万、ビンディング7万、ウィペット3万、ビーコン4万、スコップ、ゾンデ、スノーソーで1.5万で、総計35万です。これが最低限です(自分も板とシールを頂けなかったら、多分、一生やってない)。
その上でそれなりの滑走練習が必要なので、ゲレンデに行きます。自分は今までスキーをしたことがなかったので知りませんでしたが、リフト代はめちゃくちゃ高いです。1日5千円、駐車場千円です。そして、山でどれだけ練習しても、ゲレンデ練習をしないと到底、山で普通に滑走できるレベルにはなりません。スキー初心者では、それが顕著で、1日の練習効率が20倍は変わります。20日、山スキーをしても、ゲレンデで1日、みっちり練習したら、そちらの方がうまくなるということです。そもそもスキー初心者でいきなり山スキーをやるのは、それなりに登山の知識と技術があり、それを応用しないと安全さえ確保できません。というか、自分の経験上、相当に安全が確保できる山スキーの山がない限り、やめた方が良いです。安易に踏み込むと、普通にいつも登っている急斜面で滑落してすぐに死にます。
では、なぜ、それでも自分が山スキーを“今のところ“続けているか?
それは、ただ単純に楽しいからです。これまでに経験したことがない刺激や雪質の変化による滑走の楽しさ、山スキーを始めたからこそ出会えた魅力的な方々。そういったことがあるからです。
ですので、雪山登山から山スキーへ移行することで、楽に速く長距離をこなせるのではないかと思われている方は、リスクばかりが高くなるので、今までのスタイルを突き詰めていった方が良いと思います。ただし、楽しさを突き詰める場合は、トライしてみるのも良いと思います。
なお、山スキーを始める前の私の積雪期登山のスタイルの概要は以下の通りです。
・下りはほぼ、スノーシューで滑りながら走り下る。アイゼンでも可能な限り走り下る。
・登り下りに関わらず、ルートは等高線を見ながら、安全を見込せる場合は、可能な限りショートカットしながら進む。
・足回りの装備は、スノーシュー、12本爪アイゼン、チェーンアイゼン。
・靴は-5℃までならスノークロスという雪山用のトレランシューズ(この場合は12本爪アイゼンは使用不可)。
・積雪がある程度ある場合や融雪による靴への沁み込みのリスクがある場合は、3シーズンのトレッキングシューズ。
・コース上の最低気温が-5~-10℃の場合(ピークハントで逃げてくる場合など)は、スノークロスか3シーズントレッキングシューズ中心に、積雪深があり、ラッセル時間が長い場合は厳冬期用の登山靴。ただし、山頂のみ気温が低く、短時間で標高を落とせるコースとする。
・-5〜-10℃程度が長時間継続する場合や風雪がある場合は長距離はやめて、完全に安全側へシフトして、厳冬期用の登山靴。装備も重量はある程度許容して完全厳冬期仕様。
・常に-10℃以下の場合や、ピッケルを使わないと絶対に登れないような厳冬期アルパインはしない。
・つぼ足で20cm以上沈み込む場合はスノーシュー、それ以下の場合はアイゼンかチェーンアイゼン。
イメージとしては、トレランの延長で、状況に応じてちょっとづつ装備を足していく感じです。
以上、参考になれば幸いです。
長文、失礼いたしましたm(__)m。
ではなぜ自分はバックカントリースキーなのかというと、バックカントリースキーは冬山登山を包括しますが、その逆、スノーシューやワカンによる包括は絶対にないからです。雪上の移動手段としてスキーほど優れたものはないと思います。これはスノーシューもワカンも全く及ばずで、その上位にスキーというものが存在しているからです。
ただしそのハードルは体力的にも金銭的にも高いです。まず体力、伊吹山程度で1日の全体力が終わってしまうようでは駄目です。そんな体力でルート間違えたら、本能的にラクな下へ下へと向かって死にます。そして金銭面。greenriverさんの挙げていただいたアイテムを必要としない山ならいいですが、それらを必要とする山に行くときは全部必要だからです。でもそれを乗り越えるだけの価値はあると思います。
幸い我々には伊吹山という素晴らしい(比較的安全な)冬山があるので、僕もバックカントリーはここでいろいろ修行させてもらってます。ほんとお手軽でいい山ですよね🤗
長々と失礼しました🙇♂️
ベテラン山スキーヤーの視点からの補足、ありがとうございます。
自分は少しずつ経験値を上げている状況で、まだリスクの少ない伊吹山、乗鞍岳ツアーコース、大日ケ岳、霊仙山のみですので、自分の実体験のみからの話に留めました。今後、更なるリスク対応が必要になってくるのでしょう。技術的に、やっと他の山に行けそうになってきたので、クトーも購入しました。ビーコンの実操作訓練、クトー使用訓練の他、厳冬期のグローブ、電熱線ゴーグル、山スキー用ザックの購入などが喫緊の課題です。後は経験値を上げる中でトライアンドエラーかと。
当分は、トラブルあってもつぼ足で戻れる距離までです。
それと、けんきちさんも言われているとおり、我々には伊吹山という素晴らしいフィールドがありますね。これ、本当に奇跡的に素晴らしいお山で、こんな山、そうそうないと思います。しかも昨シーズン、自分が板を頂いた直後に雪山であることを思いだしたかのように大雪が降りました。そして今シーズンも。そして、その山でけんきちさん含め、多くの山スキーヤーと巡り会えました。もうこれは奇跡としか言い様がありません。今後は太陽神に加えて、伊吹山も崇拝して、手を合わせようと思います(笑)。
ありがとうございましたm(_ _)m。
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