登山をしていて時折気になるのは「転進」という言葉です。たとえば「○○に行く計画だったが、天候が荒れることが予想されたため□□へ転進した」といった使い方をします。概して山岳会の人に多いように思いますが、私はこの言葉は使いません。
第二次大戦中、旧日本軍は不利になって敵から逃げるときに「転進」という言葉を使いました。実際は撤退なのに、「退く」という表現を嫌ったからです。その結果、国民は日本軍が劣勢であることを知らされることなく破滅の道を進みました。
戦後80年近く経とうという今、なぜ山ヤはこんな軍隊用語を使うのでしょうか。カトラリーのことを「武器」と呼ぶように、山ヤ特有の洒落のつもりなのでしょうか。
「別に戦争をしているのではなく、単に進路を変えただけなのだから転進でいいではないか」と思われるかもしれませんが、言葉に歴史的背景があるのに無自覚であっていいとは思いません。
私は戦争が嫌いですが、戦争とは究極の人権侵害ですから、直接の戦闘だけでなく、理屈の通らない理不尽な人権侵害(たとえば差別とかいじめとかパワハラとか)も戦争と地続きであると思っています。軍隊同士がドンパチしてさえいなければいいのではありません。戦争はある日突然起きるのではなく、そこに至るまでには大小さまざまな人権侵害が積み重なり、それを許す雰囲気が世の中に醸成された末に起きるのです。戦争を憎むのなら、自分の身近にある戦争の芽にも敏感であるべきです。たとえ洒落でも軍隊用語を使うべきではありません。
「転進」は年配の人だけでなく、若い人も結構使っています。おそらく無自覚に使っているのだと思います。そんな年寄りのマネはかっこ悪いからやめましょう。
登山でも「転身」という言葉が使われているのは初めて知りました。
たしかにおっしゃる通り、登山には軍隊用語または軍人が好んで使いそうな言葉がたくさん使われていますね。
・第○次頂上アタック(攻撃)隊
・サポート隊
・ベース(基地)キャンプ
・撤退または退却
・ルート工作
・偵察
…等々。
私が子供の頃、日本のヒマラヤ遠征隊でこのような言葉がさかんに使われていたような記憶があります。現代の山岳会や山岳部でも言われているのでしょうか。
これらの言葉はカッコよく聞こえもしますが、たしかに戦争を連想してしまいますよね。
これが海外だとどのような表現なのか興味深いですね。
確かに戦中はその意味で使われたことは知っていますが、気になったので、ググってみました。
てん‐しん【転進】 の解説
[名](スル)
1 方向を変えて進むこと。進路を変えること。「航路を北西へ―する」
2 軍隊が、戦場または守備地から他へ移動すること。
第二次大戦中「退却」の語を嫌い、代わりにこの語を用いた。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
とのことなので、第2義のようですね。私自身は戦後生まれなので気にしていませんでした。
気になる方がいるのであれば少し気を付けようとは思いますが、皆さん1の意味で使っているので気にされない方が良いかもしれません。
それより私が気になるのは「制覇」を使われることです。
山と戦っている訳ではないので、登頂ないしは(100名山などは)完登と使うようにしています。
ロングコースを完歩したときは踏破と言うことはありますが。
fireboltさんのコメに禿同(今はネット上の死語)です。
山に対して畏敬や憧憬の念があれば、登頂することを『制覇』と換言するのは、気持ちは分からなくもないですが、不適切だと思います(私感)。
『挑戦』や『チャレンジ』という言葉も、意気込みを込めた他の言葉が思い浮かばないのでやむを得ず使うことがありますが、自然(=山)に対してチャレンジ(挑戦)できるはずがないとも思っています。
「転進」の意味は知りませんでした。
予定していた行き先を変更した時、『転向』と表現したことがありますが、これも正しくないようなので、今後はそのまま『予定変更』と表現したいと思います。
ただ、軍隊用語だからという括りにすると制約が大きくなりますね。
登山関連でよく使われる遠征、強行軍、撤収なんてのは元は全て軍隊用語だし、バラクラバもそう言えるかも知れません。
一般社会でも作戦、戦略、速攻、陣営など普通に使われていますよね。
言葉がどうこうというより、本質的なものをどうするかという方が重要でしょうね。
いわゆる差別用語だから禁止しても差別は無くならず、かえって陰湿になったりする。そんな例は多いように思います。
とはいえ、ある言葉に対して嫌悪感を持たれるの分かります。
私もリベンジという言葉を聞くと、どうしても復讐という血生臭い意味合いが浮かび、それを山での再挑戦の意味で使うのはどうか・・・と思うので、自分では使わないようにしてます。
リベンジは違和感ありますね。松坂世代以降なら抵抗感は少ないのでしょうが・・・・
少なくともこれは外国人には通用しないですね。
通りすがりですがコメント失礼します。
私は昭和45年生まれで山岳会にも所属した事が無いので「転進」は戦争映画でしか耳にした事は無いし、もちろん自分で使う事はありません。
で、一つ申し上げたいのは自分の様な若輩者?からすると「撤退」も同じ類いの言葉だと言う事。
実際検索してみると『撤退(てったい retirement and/or withdrawal)とは、戦略においてある部隊が敵地における作戦地域から部隊を後方へ移動すること。戦術論における後退行動とは異なる概念である』と言う説明に行きつきました。
もうこの際、誰にでも分かりやすく「中止」でいいんじゃないでしょうか?
「転進」の他にも気をつけたい言葉はたくさんありますね。
また、あまり頑なに「こういう言葉を使っちゃいけない」というのも良くないので、私としては言葉の持つ背景をよく考えた上で使っていきたいと思います。
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