私が生まれ育った家は京町家風の古い家で、昭和一桁の年代に建てられたと聞いています。大津市は京都と同じく第二次大戦で空爆をほとんど受けなかったので、このような建築物が比較的多く残っています。それでも周辺では建て替えが進み、京町家風の建物は界隈でうちだけになっていました。
その家も、最後まで住んでいた母が亡くなり住む者がいなくなってしまいました。ここに住むことも考えましたが、築90年近くたち老朽化が激しいこと、土地が広い割りに駐車場がなく使い勝手が悪いこと、住み続けるには大がかりな改修が必要なこと、そしてなにより土地が借地だったため家を建て替えるにしても巨額の資金が必要なことから、泣く泣く建物を解体して更地にし、土地を地主に返しました。樹齢何十年という庭のクスノキも一緒に伐採しました。
表は日本家屋で離れは洋館という趣のある建物で、子どものころからの思い出のいっぱいある家ではありましたが、他に手がありませんでした。6年前のことです。いまは土地は転売され、跡地にはログハウス風の家が建っています。
古い建物が解体されると「もったいない」「残すべきだ」という声を聞きますが、古い建物を残すのは本当に大変な労力です。一介のサラリーマンには荷が重すぎます。みんなが残念だと思うということはそれだけパブリックな存在なのでしょうが、公的な援助はまったくと言っていいほどありません。昔のドラマじゃないですが「同情するなら金をくれ」です。
また、古いというだけで残す価値があるのかはよく考えなければなりません。木造住宅の法定耐用年数は22年。普通は40~50年程度で建て替えるのが前提だと思います。地震の多い日本では、これくらいのサイクルで建て替えるのが合理的だったのでしょう。
現代的な味気ない建物がいいとは思いません。しかしノスタルジーだけでは人は幸せにはなれません。
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