上高地バスターミナルで下車すると、オレンジ色のベストを着た女性が声高に叫んでいました。地震があった、登山道は、全部が安全なことを確認できたわけではない、落石の危険があり、リスクを理解して入山するように、と。身の安全を第一に考えろ、と。
地震の話以外は、登山をする者は皆その考えで来ているんだし、皆その場で取りやめる様子もなく消えていく。
荷物の預かり所へ行き、窓口のおじさんに聞くと、飛騨の方で震度4、ここらは3だったという。
18日から始まったらしい。18日というと台風が来た日。3日目だと小さい余震はあるかもしれないが、さほどでもあるまい、とたかを括ってしまった。
横尾で、涸沢から降りてきた人の話を聞く。涸沢までは行けるだろうが、その先は山小屋で聞いた方が良いと。涸沢でテントを張っていた人は、夜中に小石がパラパラと降ってきて驚いたとか。
とりあえず涸沢まで行ってみることにする。
本谷橋から先、通りすがりのご夫婦に尋ねると、ザイテングラートは通れたとのこと。同じく涸沢までは行けるだろうがその先は情報を取ってから行った方が良いと。
ソーダラップのガレ場で立ち止まって話をしている人たちがいた。何を考えてわざわざ危険なところで立ち止まるのかよくわからない。
今日は何だかヘリコプターの音がよく聞こえる。何度も飛んでいるような、別のヘリが飛んでいるのか。時々物資を運ぶヘリコプターはありがたく見送れる。何度も飛んでいるのは救助に向かっているからか。気味が悪い。
涸沢ヒュッテでお昼を食べたところで小さな揺れがあり、前穂高の斜面からバラバラと落石が沢筋に沿って落ちてきた。午後は穂高岳山荘の辺りでもパラパラという音を聞いた。
山小屋の受付に話を聞くと、夕べ少し大きな揺れがあったという。この先は勧めないと言う。近くに県警だか山岳警備隊だかの詰所があるらしい。登山道の現状は、そこへ行けば詳しく教えてくれるだろうと。だが、そこでも同じことを言うのではないかと。禁止ではないらしい。行くなら自分でリスクを負って、ということ。
穂高岳山荘へのパノラマコースを少し散歩しかけて引き返した。特に落石がありそうな箇所ではないけれど。
電波が繋がったところで徳澤園に電話をかけ、明日の予約をした。そのすぐ後に、穂高岳山荘の予約をウェブでキャンセルした。
相部屋の人も、LINEで奥さんと繋がった後、止めることを決めたようだった。ヘリコプターの音がずっと鳴り響くのは不気味な感じがすると言っていた。もう1人の相部屋同居の若者は、我々の意見に同調したようだった。だが、真意まではわからない。
晩御飯を食べ、すぐに眠った。夜中に目が覚めて起きていると、22:00ごろに震度2くらいの揺れがあった。23:59に震度1強。5時過ぎに2回小さい揺れ。
相部屋の熊本県人は、昨夜はぼくに同調していたのだけれど、今朝になって、モルゲンロートを眺めていた時に隣にいた人の影響を受けたらしく、ちょっと行ってみると言う。どうぞご自由に、としか言えない。多くが上へ行くだろう。で、ほとんどの人は無事に下山するだろう。けれども、普段と違って、ドンときたら、その時ガレ場にいたらお終い。岩に取り付こうとした時だってお終い。気をつけようがない。
「それは勇気なんかじゃない」って、ベテランの登山家が言っていたのを思い出した。山岳救助隊で呼ばれたら行くっていうその人の言葉を思い出した。山はまた来ればいい。
今日はゆっくりできるから、出かけもゆっくりしていたら、同じように下山を決めたカップルが玄関にいた。ぼくも上へは行かないことにして、下山することにしたんです、って言ったら、同じ考えの人がいて嬉しいというようなことを言ってくれた。
横尾までゆっくりと降り、電波が届くところにきた。明日のバス便を今日に変えられないか試してみた。わずかの出費で変更可能だった。
昨夜、明日の宿はどうしよう、と不安になって、涸沢ヒュッテから辛うじて届いた電話で相部屋予約をした徳澤園に、断りの電話を入れた。本当だったら、キャンセル料を取るのだけれど、今回は良いと、電話口の女性が言ってくれた。今度来た時は、徳澤園をベースにしよう。
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