最近、井上靖の「氷壁」を読んだ。
文庫本のカバーの裏を読んで、山に男女のゴタゴタを持ち込んだものと思っていたので、「山」の小説なのに今まで遠ざけていたのだが、どうしてだか読んでしまった。
読んで行く中で、「もしかある日」の詩が目にとまった。
ああ、あの歌はデュプラという登山家の詩が元になっているのか。
長いこと忘れていた歌を思い出した。
どういうわけだか歌詞もメロディも覚えていた。昔に聞いた歌なのに。
確かNHKの「みんなのうた」だったと思う。雪山がバックになっていたはずだ。
本を一時中断してYoutubeで検索。
ダークダックスと中沢厚子の二つがあった。「みんなのうた」はダークダックスだったようにも思うが、中沢厚子とは違う女性だったような気もする。
覚えていたものよりテンポが速く(というか3拍子(たぶん)なので)うまく合わせて歌えないが、覚えていたテンポは中沢厚子の歌に近かった。
今は、自分が覚えていた適当な加減で口ずさんでいる。
記憶では5番までだったが実際は7番まであり、また、原詩の訳者が深田久弥であることも新たな驚きだった。(歌詞は訳詞を簡潔にした感じです)
この歌は歌詞もメロディもロマンティックなのだが、始まってすぐの歌詞が強烈だったので覚えていたんだと思う。
「いつかある日 山で死んだら」
で始まる。
これ以後は、両親、妻子への思いや山友への言葉が続く。どれも心にしみる。
ひと言ひと言は短いが、どれも「芯をくってる」感じでストレートに胸に届く。
でも一方では、好きで登って勝手に死んで(もちろん詩を書いた時は生きている)何を言う、と思う向きもあるだろう。特に女性は。
綺麗ごとを並べたところで残された身にもなってみぃ、とか。
もちろん、山で死んではいけないのだが、この遺書のような詩にヒロイズムや男らしを感じてしまう。
ちなみに、原詩を作ったロジェ・デュプラはフランスの登山家で1951年、30歳の時にヒマラヤで消息を絶ったとのこと。
知っている人は多いと思うが歌詞を全部書いてみる。
いつかある日
1 いつかある日 山で死んだら
古い山の友よ 伝えてくれ
2 母親には 安らかだったと
男らしく死んだと 父親には
3 伝えてくれ いとしい妻に
俺が帰らなくても 生きていけと
4 息子達に 俺の踏みあとが
ふるさとの岩山に 残っていると
5 友よ山に 小さなケルンを
積んで墓にしてくれ ピッケル立てて
6 俺のケルン 美しいフェイスに
朝の陽が輝く 広いテラス
7 友に贈る 俺のハンマー
ピトンの歌声を 聞かせてくれ
この歌に関して詳しく書いてあるサイトがあったのでURLを貼っておきます(無断ですみません)
http://duarbo.air-nifty.com/songs/2007/08/post_e572.html
西前四郎著「冬のデナリ」のファンです。
山の歌「いつかある日」はたいてい作曲・西前四郎、作詞・深田久弥で紹介されていますが、redauonさんが追加記事で書いているように、深田久弥の訳とはまったく違った詩になっています。意味さえもデュプラの詩と違っています。西前さんは深田さんの訳を参考にして書いていても、この歌の作詞者は西前四郎とするのが適切ではと想っていました。ちなみに私は深田さんの訳の方が好きです。
それにしても「いつかある日」と「もしかある日」では意味が違いますね。デュプラは山で死にましたが、この詩を書いた時は山で死ぬとは考えていなかったはずです。ただし万一は考えていたでしょう。このように考えると「いつか」は変ですね。ちなみにこの歌が世に知れる前は「もしか」と歌われていたと聞きました。
>aoiyamaさん
この歌を調べていて、西前四郎という人を初めて知りました。
登山家ってロマンチストが多いんですかねぇ。
登山道を歩くだけの自分と違って、命をかけて、となるとそうなるのかなぁ。
こんにちは
少し前にもこの歌の話題があり
http://www.yamareco.com/modules/diary/42284-detail-72744
みんなのうたで1976年やってましたね。
http://cgi2.nhk.or.jp/minna/search/index.cgi?id=MIN197606_01
小学生で見た憶えがあり〼。青い空、白い壁をザイル付けて登って行くような実写映像でしたね。
勝手なことを、などと言う人がいますが、死ぬ可能性を忘れて生きているようでは、まぬけな人生だと思います。
>yoneyamaさん
やっぱり「みんなのうた」でしたか。歌詞を覚えていたということは繰り返し聞いていたはずなので、そうだろうと思っていました。
昔から、生死の境にいるF1ドライバーやクライマーに憧れていました。ギリギリの緊張感は想像しただけで身がキュッと縮み上がります。
ハーケンを岩壁に打ち込んでロープにぶら下がるなんて怖くてできず、一般登山道を歩くのが精いっぱいですが、それでもいつも危険と隣り合わせであることは意識しています。
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