ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

HOME > florさんのHP > 日記
2024年05月17日 20:16昔話全体に公開

多分、人生で一番無謀だったであろう登山

20年以上、前のお話。

スペインとフランスの間に、アンドラという小さな国がある。
今思うと何を考えているんだ、無知にもほどがある!と、自分を怒りたくなる。そんな、山を愛する人から見たら、恥ずかしい、危険なお話は、この国で起こった。

そもそも、この国に行ったのも、ピレネー犬を見に行きたいというわけのわからない理由。
知人が飼っていた真っ白ふわふわのワンちゃんと仲良しで、そのお友達に会ってくる!と意気込んで行ったが、ピレネー山脈の中にあるこの国に、ピレネー犬はいなかった・・。
首都にいないなら、田舎に・・・と、その日のんだミネラルウォーターの名前になっている街にバスで移動。
南アルプス天然水、のイメージだったが、やはり、ピレネー犬はいなかった。しかも、田舎で旅行客など来ない街には観光できるところもほとんど無し。
そして、戻りの次のバスまで4時間。

で、無謀な冒険?が始まる。
街の地図にモンターニャ・ピエドラという山を見つけた。
観光案内所のお姉さんに聞いた。
「この山、4時間で行って帰ってこれるかな?」
お姉さんはニコニコして、「大丈夫、ウニャラウニャラウニャラ・・・」
よくわかんないけど、大丈夫らしい、と、出発。

始め、ハイキングコースのようだった道は、ブッシュウォークになり、岩のゴツゴツした道になり、もろに、山道になった。
そして、2時間が過ぎた。2時間たったら下山しようと思っていた。が、ここまで来たら、頂上まで行きたい、と、次のバスに乗ることにして、登山を続けた。

ここまで、地図も持たずに無謀なことをしているが、そんな事を平気でしたのには、理由がある。

この数年前に、私は、サンチャゴの道、という巡礼路を歩いた。
スペインの北西にあるサンティアゴ・デ・コンポステーラという聖地に、世界中から道がつながっている。

今ではけっこう有名になったこの道は、当時はまだマイナーで、日本人はほとんどいなかった。
地球の歩き方にたった1/4ページのっていた、コラムの記事を見て、私はその地に行くことを決めた。ちなみに、その後に改定された地球の歩き方には、巻頭4・5ページにわたる特集記事が載っていた。
テレビでも見た。
いまでは、人気のルートだろう。
私はピレネー山脈の麓にあるスペイン北東部の街から始めたが、一緒になった人が口々に、「ピレネー山脈を越えているときが、一番楽しかった」と、語った。
いつか、また来て、ピレネー山脈をこえよう、当時の私の次の夢になった。今でも変わらない思いだが、現実として無理だなとあきらめてもいる。

このときも、私は詳しい地図など持っていなかった。スペインでガイドブックは買ったが、田舎町で良い本がなく、全く役に立たないし、スペイン語だからわからないし。
それでも、迷うことなく歩けた。
黄色い矢印が巡礼者を案内してくれるのだ。
街では建物の壁に、噴水に、ガードレールに、道路に。
山道では岩に、木に。
黄色の矢印が印されていて、ずっと私を導いてくれた。
街を歩くこともあったし、荒野を歩くこともあった。また、森の中や、山道もあった。
思えば、このスペインの山道が、私のはじめてのトレッキングや山登りだった。

楽しかった記憶が蘇り、余計なことまで広がっていった。そろそろ話をもとに戻す。

導いてくれていた黄色の矢印。
その横にちょくちょく、白と青と赤(色は、記憶が間違っているかもしれない)の、国旗のようなマークが書いてあった。
人に聞くと、「これは、グラン・ルート(名前が違うかも、記憶が・・・)だ。ウニャラ、ウニャラ・・・」
説明してくれたが、理解できなかった・・・。
が、このマークも、どこかへの道標であるということだけは、わかった。

この、国旗のような道標が、この山にもあったのだ。
だから、全く不安なく歩けた。というか、歩いてしまった。

山道は、小さな石の集まった斜面になり、歩くたび、ズルズルと滑るようになった。
モンターニャ・ピエドラ(もしかしたら、間違えてるかも)は、直訳すると、石ころ山。なるほど、と思った。
この辺で、山小屋が見えたので、必死に登った。
荷物をホテルに置き、ショルダーバッグをさげて、オレンジ1個と水1本しか持たずにここまで来ていた。靴は、もちろん普通のスニーカーだった。
とうに次のバスにも間に合わない時間になり、タクシーで宿泊している首都まで戻る計画に変えていた。

ここまで自分で書いていてゾッとするが、当時の私はなんの危機感も持っていなかった。山小屋、無人だったら、遭難したかもしれない。
が、私は運がとても良かった。

山小屋には、何人もの男性がいて、美味しそうな食事をしていた。
山小屋レストランと間違えて、私にも頂戴、と言ったら、あちらこちらから食べ物が渡された。
「お金あんまり持ってないんだけど・・いくらですか?」
「いらないよー、ここはレストランじゃないよ」との答え。

彼らは、野生の鹿を取るために来ていた猟師さんたちだった。
私は、猟師さんたちのご飯を分けてもらったのだ。

彼らは、私に、これからどうするのかを聞き、その日が猟最終日だから、自分たちと一緒に下
りないか?車で来てるよー、首都のホテルまで乗っけていってあげるよー、と、いってくださった。
もちろん、Si,por favor!(おねがいします)、だ。

それからは、のんびり過ごした
「シーッ」と、人差し指を唇にあて、そーっと山小屋の後ろに連れて行かれ、指さされた先には・・・。
白い布でくるまれて逆さまに吊るされた、4本の足がニョッキリみえていた。彼らが仕留めた獲物だった。
とても、静かで、神聖な雰囲気さえ感じた。

実は、石ころ山のピークは、もう少し先であると教えられたが、疲れていたのと、彼らとのお話が楽しくて、結局行かなかった。
「今夜は、この鹿を食べるの?」ときいたら、熟成させるために1ヶ月くらい(だったと思う)時間を置くのだ、と彼らは語った。
そのまま夕方までを彼らと過ごした。

その後は、獲物を運ぶ彼らと山道を少し下り(石ころの斜面じゃなかった)、荷台に獲物を乗せたトラックに乗せていただき、山を下り、夜の道を走り、泊まっていたホテルまで送っていただいた。
「さっき撮った写真、送ってね。」
そう言って、猟師さんは去っていった。
大変申し訳無いことに、住所を書いてもらった手帳を、旅行中になくしてしまった。
もう一度、あの地に行こう、そして、あの山小屋にお礼の手紙とともに写真を貼ってこよう、皆さん、きっとまたここに猟に来るはずだから・・・そう、確かに思ったのに、そのまますでに20年以上がたった。

今、山の装備を学び、携行食や水分の大切さを理解し、地図の見方・・・は、まだ学んでいないんだけど、ヤマレコで地図を見ながら歩くことをしている今。
当時を振り返りおもう。
ほんとうに無謀で、危険で、一歩間違えば滑落していたかもしれないし、悪い人とあっていたら、殺されていたかもしれない。
誰にも行き先を言わずに来た私は、誰にも見つけてもらえなかったかもしれない。

あのとき危機意識がなかったように、もしかしたら今の登山も、あとから思い返したら、危ないことをしていたなと思うのかもしれない。

なんだか、まとまらないけれども。
事前に知識を得て、準備をしっかりして、登山届も出して、保険にもちゃんと入って、安全で誰にも迷惑をかけない登山をしなくちゃな、と、今、思っています。


さて、大丈夫と言った観光案内所のお姉さん。
思い返すと、「2時間登って引き返せばいいわよ」的なことを言っていたのかもしれないな、と思います。

まとめるのが下手くそで、長くなりました。
最後まで読んでくださった方がいたら、ありがとうございました。
お気に入りした人
拍手で応援
拍手した人
拍手
訪問者数:479人

コメント

私もうん十年前、アンドラ行きました。アンドラではトレッキングもしないで買い物(免税の国だったような)ばかりしてたけど、その後イギリスのウインダミアーやハワースでは地図も持たずに1人でトレッキング何時間もして迷ったりして、でも幸運にも遭難はしませんでした。今思うとほんと怖いことばかりしてました。懐かしくって思わずコメントしてしまいました。若い時ってほんとに無謀だったと思い返してます。あの時まさかその後登山してるなんて思ってもみなかったですが、、、。今はビビリでどの山行くにもすごく慎重です。あと10年たったらアンドラの巡礼路行きたいです!
2024/5/17 21:20
いいねいいね
1
yokoisさん
コメントありがとうございます。
アンドラ、いかれたんですね。
たしかに、免税の国で、お買い物の国でした。
私は当時、バックパッカーで貧乏旅行をしていましたが、セーターを一枚買ったのを覚えていて、その一枚は、今でも気に入って着ています。

お叱りのコメント覚悟でしたので、まさか共感していただけるとは思いませんでした。
若いって、無鉄砲で、無謀で、怖い物知らずで、なんというか・・・ちょっと恥ずかしいですね。
今となっては、呆れられそうで恥に近いけれど、それでも懐かしさでいっぱいです。
あんなことはもうできません。

サンチャゴの道、Camino de Santiago は、世界中からスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラに続く道で、色んな国の人が来ていました。今は、日本人も多いそうです。
行くときは、ぜひ、ピレネーのフランス側から。
私もまた行きたくなっちゃいました。
とてもとても、楽しかったです。
色々と後悔もあるので、また懺悔の日記、書くかもです。


2024/5/17 22:41
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

コメントを書く

ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。
ヤマレコにユーザ登録する