それはいきなりやってきた。
『ジャニさん、あとちょっとしたらヘリが上空にホバリングし始めます。
そしたら吊り上げますから!!準備しましょう!』
いきなり登場し耳元で叫ぶのは、ヘルメットになにやらウエットスーツのよな出で立ちの消防隊員だった。
次第に爆音が大きくなって、会話もままならなくなり、それがヘリが近づいたことを伺わせる。
それまで横たわっていた簡易ベッドから、吊り上げ用のシートに乗り移る。
一枚のシートのようで、腰掛けて座るようになっている。
そこに頑丈なカラビナを複数装着し、吊り上げるようだ。
爆音と風が一層ひどくなる。
『では、いいですか??上昇しますからねっ!!』
いきなりだ、カラダが浮き上がる。
消防隊員がオレのすぐ横にいる。
一体どんな感じでオレの横にいるのかは想像できない。
不思議と怖さはなかったが、目をつむっていたので、景色はわからなかった。
2〜3回目を開いたが、周りを見る勇気も余裕もない。
唯一、谷津池なのか円良田湖なのかが一瞬でかく見えたことを記憶している。
ヘリに近づいたのか風は弱くなったが、爆音は耳をつんざくように余計でかくなり、そのうちカラダが横に移動する感覚になった。
どうやらヘリ内部に収容されたみたいだった。
吊り上げ開始からものの5分も経っていないみたいだったが、やたらと長い時間が経過したように感じた。
ヘリの中では、有無を言わせず血圧や脈拍などのチェックが再開された。
横になったままなので、ヘリの振動がそのままカラダに伝わる。
ただし不快ではなく、どちらかというと心地よさが勝っていた。
ヘリが移動(飛行?)する感覚もほとんどなく、揺れも感じなかった。
そもそもそういう飛行物体に乗ってるという意識も感覚も無く、なんとも不思議だった。
・・・・・・
『もうすぐヘリポートに着きますから!!』
『救急車が待ってますからね!!』
「もう着くんですか??」
時間の感覚もどこかおかしくなってるみたいだ。
おもむろにハッチ(っていうんだろか?)が開かれる。
”とっくに着陸してんじゃん”
体が浮く感覚がして、薄目を開けると、救急車の中に運ばれたようだった。
ようするにオレは、ヘリの姿も見ていないし、自分が吊り上げられ運ばれている状況も、飛行している感覚も、ヘリポートの様子とかを含めて何一つわかっていなかったことになる。
その後、救急指定病院に到着後、CTスキャン検査などの精密検査を受けた。
結果、疲労はあるものの、脳や三半規管さらには呼吸器系には異常は発見されない、とのことだった。
点滴という名の栄養補給を2時間かけて行った。
その間もウトウトしたり、大きなあくびをしたりしていた。
家族がやってきた。息子だ。
開口一番『オラもヘリに乗りたかった〜〜』
なんつぅやつだ、と怒ろうとしたが、口から出た言葉は『わりぃゴメン、、』
『会計も済ましたし、あとは帰るだけだからな』
『よ〜するに仕事のしすぎだ、ってセンセーに言われた、気ぃつけないとな』
「おぅ、色々スマン」
・・・・・・・
一週間後、お礼とお詫び、それと血液検査の結果を確認するため、児玉駅に向かった。
消防署で、当時のリーダー格だったという救急隊員と話をした。
『いやぁ、ウチは山岳救助をやったことがなくて、そういう意味では貴重な経験しました』
『今後の山行きは充分気をつけてくださいね、単独山行が悪いとは言いませんが、こういうこともあるし、体調管理に気を使ってくだされ』
笑いながら、でも毅然と、キッパリとおっしゃってくれた。
平身低頭、言い訳の一つも言えなかった。
だが今回、救助という手段を選んだことは間違いではなく、致し方なかったとしか言いようがない。
あれから、睡眠時間を充分に確保するように努めている。
三度にわたって、自分の情けない体験を書きました。
すべて自己管理のずさんさが原因と痛感しています。
ご意見をお持ちの方、どうかお聞かせくださいませ。
長々と、だらだらとお伝えしたこと、失礼をいたしました。
自分の救助に携わっていただいた救急隊員の方含め、関係各位の方々、改めてこの場を借りて御礼とお詫びを申し上げます。
大変申し訳ございませんでした。
おわり
PS:当時の記録等、自分の元には何一つ残ってはおりませぬ。
よって、ヘリによる救助の状況を伝える動画を掲載します。
→ 訓練動画です。
ご参考ください。
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