むかし八幡太郎が奥州を征伐して、
衣川の柵を陥とし、逃げる安倍貞任に向かって
「ころものたては ほころびにけり」と下の句で呼びかけた
というのは
あまりにも有名すぎる話
これに対して貞任がすこしも乱れず騒がず、従容として
「年をへし 糸の乱れの苦しさに」と上の句を付けたという
(真偽の疑わしい)美しくも儚いエピソードを
日本の知識人たちは
(味気ない史実に拘って)台無しにすることを潔しとしなかったので
今でも義を知り情けを知るほどの日本人であれば誰しも
貞任の豪胆と、義家の情けを想って
涙を催さない者はない……わけですが、
近ごろ私が涙を催すのは その衣ではなく
コロッケの衣
どうにもこうにも
コロッケの衣を上手につけることができず
揚げた時に爆発してしまうのですな。
爆発といっても衣に穴があいて
そこから中のジャガイモが流出するという程度のことですが…
そんなわけで近ごろ私がコロッケを作りたがらないので
何を思ったか妻は
メンチカツを注文してくるようになりました
メンチなら中身が肉だから
油に流出することもないと思ったとか思わないとか。
しかし妻よ、
このメンチがなおさらたちが悪い
私の作るメンチはカーストの低い庶民階級のレシピ
ひき肉よりも、刻んだキャベツとかパン粉とかいう
ボリューム稼ぎの上げ底部分のほうが多いシロモノ
ゆえにタネが柔らかいので
衣をつけるために
卵液に通すと、なおさらタネがゆるくなって
ぐにゃぐにゃに変形してしまう
これに衣をつけるのは至難の業
結果として
衣には(やはり)穴が開いてしまい
メンチカツだか揚げ肉団子だかわからないブツが
食卓に並ぶのだった。
どうか妻よ、
揚げ物を注文するならば、衣をつけなくていいメニューにしてくれ。
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