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2023年12月23日 09:04雑誌・書籍全体に公開

火の島 新田次郎

1947年に設置され、1965年に廃止された鳥島気象観測所が部台の小説を読みました。
1965年の撤退に至る数ヶ月、緊張に怯える観測所員達の心理描写を中心に描いたリアリティ高く力強い魅力的な一冊でした。
同じ文庫本に収録されている「毛髪湿度計」「ガラスと水銀」も読み応えのある小説でした。

新田次郎の代表作「強力伝」との共通点、実在の事実をもとにした小説であり、その為読み手に力強くグイグイと迫ってくる筆致は深い感動を与えています。
ゴツゴツした無骨な印象の表現ですが、それが作家の意図なのか、些末な弱点を物ともしない魅惑的な文章でした。
新田次郎が文壇に登場した初期の頃、気象庁勤務と小説家との二足草鞋で頑張っていた頃の作品です。売れっ子になり様々なモチーフで書き上げた作品とは違い、初期の作品の文章は堂々とした自信に満ちた筆力で輝いています。
気象庁の観測員として実務に携わっている彼が書いた気象に関わる文章には、門外漢の作家が当事者に尋ねて資料を集めて書かれた作品には無い経験と知識が裏打ちされています。

鳥島は観測員が緊急避難した後、結果的には直ぐには噴火しませんでしたが、伊豆諸島や小笠原諸島ではその後色々な島で噴火が相次いでいます。
今我々が生きているこの時代、21世紀の百年は地球の火山活動が活発な世紀だと言われています。(私見です。)注1
日本ではどの山がいつ爆発してもおかしくないと言われています。世界的にも同じ兆候です。彼方此方で地震が発生していますが21世紀の間はこの傾向が続くことでしょう。
「火の島」はそんな時代に生きる我々に、色々な示唆を与えてくれる一冊でした。

それにしても高度成長一辺倒の昭和の時代は、こんなにも人命を軽んじていた事を改めて認識させてくれました。
様々な公害問題、自然林の伐採から植林そして土砂崩れへと連鎖する問題、炭鉱労働者の人権無視問題、アスベスト問題などなど、鳥島気象観測所撤退の経緯は全てに共通する問題ではないでしょうか。
地震が頻発している孤島に観測員を派遣させ、頻発している火山性地震が起きているにも拘わらず責任或る立場の公務員は来島せず、観測員の避難や観測所の閉鎖に無関心な保身に走る官僚達の存在など、今では考えられない事ばかりです。いや今も同じかも知れません。

解説から
「火の島」は昭和41年9月、書下ろし長編として新潮社から刊行された。戦後日本の最南端であった伊豆諸島の南の孤島、鳥島に置かれた気象観測所の閉鎖のいきさつを書いた小説である。
鳥島は活火山の島で、何回もの噴火の結果島民はいない。そういう危険な場所に気象観測所を作ったのは南方海上の気象状況を知るために必要であったからだ。自然が好きで研究熱心な観測員たちも鳥島勤務だけは嫌った。いつ爆発で生命を失うか知れないからだ。
以下省略

下記は参考までにWebから引用しました。

鳥島気象観測所
東京の南方、560キロ、八丈島よりもっと南の海上に、二重式火山の鳥島があります。
面積は約4.5平方キロの小さな無人の離れ島でアホウドリが住んでいることで知られています。
鳥島気象観測所は、第二次世界大戦後の1947年に気象庁によって設けられて以来、南海上に発生する台風や梅雨前線の観測基地として重要な役目を果たしてきました。
ところが1965年11月、火山爆発の危険を知らせる地震が起こりました。
鳥島は火山島で、むかし何回も噴火したことがあります。明治時代には、噴火のために住んでいた人が全滅したことさえあります。
気象庁では、しだいに大きくなる地震に、観測の中止と観測所員全員の引きあげを命じました。11月15日、観測所は閉鎖されました。そして1967年6月1日、ついに廃止されることになったのです。
現在、鳥島付近の気象観測は、定点観測船によっておこなわれています。

※最近の鳥島
気象庁と海上保安庁は2023年10月20日、伊豆諸島(東京都)の鳥島近海で軽石とみられる浮遊物が見つかったと発表した。鳥島近海では今月上旬から地震活動が続いている。気象庁などは浮遊物の発生源や地震との関連は不明だが、周辺で火山活動が起きている可能性があるとしている。
発表によると、海保が20日、鳥島の西方約50キロの海域で浮遊物が約80キロにわたって点在しているのを航空機から確認した。4日と11日に上空から観測した際には確認されていなかった。
鳥島近海にある活火山の鳥島や 孀婦(そうふ)岩周辺では、噴煙や海面の変色などは見られなかった。20日に航空機に同乗した東京工業大の野上健治教授(火山学)は「このエリアのかなり深い位置で新たな火山活動が起きている可能性がある」としている。

※別の島では・・・。
硫黄島では、2023年10月下旬に、島のすぐ南の沖合で噴火が発生し、一時は黒色の土砂を含んだ噴煙が海面から200メートルほど上がっているのが確認されたほか、噴き出した岩石などにより、最大450メートルの新たな島ができました。


注1 火山活動の活性化
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/15/092500017/092500001/
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