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この一冊は本名となっている「藍を継ぐ海」を含めて5篇の短編小説から構成されている。
・夢化けの島
・狼犬ダイアリー
・祈りの破片
・星隕つ駅逓(ほしおつえきてい)
・藍を継ぐ海
どの先品もフィクションなのだが、史実や実在の人物から着想を得て、資料や情報をを収集した上で書かれており、かなりノンフクションに近い作品として読める。
面白い。
そして読みやすい。
科学的文献や知識に裏打ちされている作品集なので、登場人物の生活まわりの記述以外は殆ど事実であり、過度な衒いや装飾がなく、気持ちよく読み進んでいける。
・夢化けの島
萩焼に関する作品だ。萩焼の白い器を、そして少し赤みがかった釉薬を思い出しながら読むと、萩焼に関する理解が深まり嬉しくなった。
・狼犬ダイアリー
狼についての作品だ。ニホンオオカミやハイイロオオカミ、そして犬との関連について知ることができた。
高見山から大台ヶ原へ続く奈良と三重の県境が舞台だ。「台高の山」と呼ぶらしい。
犬と狼の間に生れた狼混(ろうこん)が今でも生息しているという話だ。
これまた面白い。
・祈りの破片
長崎に投下された原爆についての作品だ。
原爆が投下され破壊され溶け歪んだ全てのものの収集により原爆についてフォーカスしていく物語だ。浦上天主堂が一つの舞台となっている。訪れたくなった。
・星隕つ駅逓
隕石の話だ。舞台は北海道。今年は何度か北海道に遠征したが、隕石についての知識だけではなく北海道の開拓の歴史や郵便局の前身「駅逓」-今で言えば道の駅だろう-についての知識も得られて良かった。アイヌ語との関連が深い北海道の地名や山名についての記述も面白かった。
・藍を継ぐ海
アカウミガメの産卵や一生についての作品だ。舞台は徳島県。
ウミガメの産卵や繁殖に良かれと思って人間がしてきた行為の数々が、逆にウミガメにとっては生き延びていくのに不都合なことばかりという記述は、自然とは何なのか、人間の愚かさについてハットさせられた作品だった。
この一冊、一日で一気読みを又してしまったが、面白い作品だから仕方ない。
また作者の別作品を読みたくなった。
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