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シリーズ第一弾だが、第二弾を先に読んでバックトゥバックで読んだ一冊。
ネタバレになるので裏表紙に書かれていること以上のことは書かないが面白かった。
本のタイトルは「世界でいちばん透きとおった物語」、後書きにある通り、特殊な小説形態で書かれた一冊である。
全ての頁を検証したわけではないが、パラパラと頁を捲ったり頁の最後の文字を確認すると確かにその通りの形態となっている。
小説好き、本好きにはたまらない一冊であることは間違いない。
私も父親の端くれだが、息子や娘をもった父親の儚い子供への愛情が共感できる。
自分が小説家で、容姿の似た息子が不本意ながらも作家になってくれるとは、これ以上の父親としての喜びはない。父親である本人は息子の容姿も小説を書いたことも知らずにこの世を去るのだが、父親からのメッセージは息子に届くのだ。
いつも若い最近の作家には辛口の批評ばかりの私だが、こういった作品を生み出してくれている若い作家の活躍には、つい口元が緩みほくそ笑まざるを得ない。
主人公は週三日書店でアルバイトをしている藤坂燈真であるが、実は深町霧子編集者が本当の主人公である。
他の登場人物も含めて、概ね皆本好きであるのが好ましい舞台設定だ。
ただ、巻頭に記載されている宮沢賢治の文章がこの作品においてどういった意味合いを持つのか、私には未だに判らない。
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すべてさびしさと悲傷を焚いて
ひとは透明な軌道をすすむ
ラリツクス ラリツクス いよいよ青く
雲はますます縮れてひかり
わたくしはかつきりみちをまがる
『小岩井農場』宮沢賢治
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ラリツクスとは落葉松のことらしい。
かっきりとした足取り・・・しっかりとした、軽やかな足取りのことらしい。
宮沢賢治は何かを求めて小岩井農場をわざわざ歩きに来て、何かを掴み取っていったらしい。それはこの世に生きることへのこだわりなのかもしれない。
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