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第172回芥川賞候補作。受賞作。
非常にアカデミックな作品だ。
抑も自分はゲーテなる人物に触れる機会(作品を読むことも人物を知ること)もなかった。
ゲーテ学者の博把統一(ひろばとういち)が、一家団欒の外食ディナー(イタリア料理店)においてティーバッグのタグに書かれている名言に出会う。
高名なゲーテ学者ですら知らなかった言葉だ。
その言葉は以下の通り。
Love does not confuse everything, but mixes. −Goethe
「愛はすべてを混乱させることなく、混ぜ合わせる」
「愛はすべてを混淆せず、渾然となす」
この言葉を中心に物語は進んでいく。
高名なゲーテ学者である統一であっても、このフレーズが記載されている原典がわからなかったのだ。
ゲーテは言った。確かに言った。
ドイツ人は、ハッキリしていなくても全ての名言や箴言の巻頭に「ゲーテ曰く」と付けて話す癖があるらしい。
名言を引用するとき、それが誰の言った言葉か分からなかったり、実は自分が思い付いたと分かっている時でも、とりあえず『ゲーテ曰く』と付け加えておくんだ。何故なら、『ゲーテはすべてを言った』から
引用:「ゲーテはすべてを言った」本文より
統一が知らなかった先程のフレーズも、このドイツ人の習慣からして出典元が不明でも、全てのことを言い表したとされているゲーテだからこそ、特に問題なくゲーテのフレーズとして認識し使っても良いことになるのだが、統一はそれでは釈然としなかった。
この作品の感想は大きく二つ。
一つは、知的探求の世界の面白さが、現実的日常の世界(人間臭い不条理な世界)を超越していて、様々な不知の箴言や名言、人物を知ることができ静かな感動を覚えたことだ。
二つはレベルの高いガーデニングが趣味の妻(YouTubeに嵌まっているところが今の世界を表現している)や英語がネイティブな賢い娘とやはり哲学を勉強しているその彼氏、とても羨ましい限りの家族構成とその家族間の生活や会話が綴られていく。
小説の中とはいえ、理想的な家族の姿が描かれていて羨望を抱いた。
また、なじみのない言葉や人物、作品が数多く出てきて、そのたびにスマホGoogle先生に教えてもらいながら読み進んだ。
因みにこの作品の中ではスマホは済補という漢字で書かれていて、これすらアカデミックだ。
よく知らない人物や作品が数多く出てきた作品だが、時々挿入されている箴言や名言は静かに心の中で響くものが多く、それが静謐な満足する読後感に繋がっていったのだろうか。
勿論読んだことのないゲーテの「ファウスト」なる作品に興味を抱いたが、中々手が出せないので、きっと私は読まないだろう。
『ファウスト』(独: Faust)は、ドイツの文人ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの代表作とされる長編の戯曲。悲劇。全編を通して韻文で書かれている。『ファウスト』は2部構成で、第一部は1808年、第二部はゲーテの死の翌年1833年に発表された。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
※ゲーテ
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
ドイツの詩人、小説家、政治家、科学者
ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)は、1749年8月28日に生まれ、1832年3月22日に亡くなったドイツの詩人、劇作家、小説家、自然科学者です。彼は文学、哲学、自然科学など多岐にわたる分野で影響を残し、特に『ファウスト』や『若きウェルテルの悩み』などの作品で知られています。ゲーテはまた、ワイマール公国に永住し、ドイツ文化に大きな影響を与えました。
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