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2023年11月20日 18:55加藤文太郎全体に公開

謎の初心者

その人物の名前はS氏。

怒らせると怖いが、優しい嫁さんと15歳になる娘さんがいるという家庭を持つ。
それ以外は詳しい事は何も分かっていない謎の人物だ。

彼は登山は今年から始めたばかりで、自分の事を初心者と呼んでいる。
しかし彼の山行記録を見ると、初心者のイメージとはおよそかけ離れていると思えてくる。

登山は日常生活ではあまり使わない筋肉を酷使する。そのため初心者は疲労困憊し、なかには山なんかもう行きたくないという人さえいる…
というのが、私が描いていた初心者のイメージだった。多少、偏見もあるかも知れないが。

しかしS氏はまるで違う。彼はわずか8回目の登山で丹沢・大倉から蛭ヶ岳の日帰りピストンをやってのけた。トレラン顔負けのスピードだ。
そして本人の感想はとても楽しかったというから驚かざるを得ない。

彼の山に対する向き合い方もハンパではない。とにかく勉強熱心なのだ。
マナー、読図、コンパスの使い方、そして気象の勉強まで始めたという。

更に驚いたのは、まだ登山を始めて間もないというのに、すでに山の恐ろしさまで認識している事だった。
これには私も大いに勉強させられた。たしかに登山に絶対の安全などない。

私はヤブ山が好きだが、そんな山でもし負傷して動けなくなったら大変な事になる。
特にこれからの季節は最低でも山で一晩過ごせるように、私も装備を見直してザックの底にツェルトを忍ばせようと改めて考えさせられた。

S氏とはどのような人物なのだろうか。
何度か彼の日記にコメントさせていただいたが、その返信を読んで私はあの永遠の単独行者、加藤文太郎を思い浮かべた。

15年ほど前に、私は彼の生まれ故郷の浜坂にある加藤文太郎記念図書館へと足を運んだ。
そこには彼が使っていた登山用品や当時の新聞記事、そして彼が友人に宛てた手紙などが展示されていた。

新田次朗氏が書いた本「孤高の人」に登場する加藤文太郎は無口で偏屈な変わり者として描かれている。
しかし展示された手紙を読んでみると、実はひじょうに細やかな神経の持ち主で、人間関係をとても大切にする好青年だったのだという印象を受けた。そして私はなぜかホッとしたような気持ちになった事を覚えている。

S氏の日記に寄せられたコメントに対する返答も実に丁寧で謙虚さが伝わって来る。
足の速さと山への向き合い方、そして人間関係を大事にする点は、加藤文太郎とよく似ているような気がする。

もうだいぶ前になるが奥秩父の山を縦走している時、とんでもなく足の速い青年に出会った。その青年を見た大弛小屋の管理人は「ああいう人は遭難するよ…」と言っていた。
その理由を聞くと、自分の力を過信して無理をするからだという。

しかしS氏に関しては、その心配はないだろう。
彼にはわざわざ行動食のお握り🍙を作ってくれる優しい嫁さんがいるという。
いつもコンビニのお握りばかり食べている自分から見れば憎らしい…いや、羨ましい限りだ😅
そんな優しい嫁さんを悲しませるような真似をする筈はない。

そして先ほども書いたが、彼の謙虚さや山に対する向き合い方から考えて、S氏はまず大丈夫だろうと確信している。

基本的にS氏の休日は週一だという。次はどこの山を狙っているのだろう。
彼のスピードなら宮ヶ瀬から丹沢三峰を経て丹沢山ピストンも容易だろうし、箒沢から檜洞丸を経て蛭ヶ岳をピストンする事も可能だろう。
来年の夏は富士山登頂も狙っているかも知れない。彼なら五合目から3時間足らずで剣ヶ峰まで登ってしまうだろう。

S氏の山行記録は楽しみでもあり励みにもなる。そして彼の日記はユーモアもあり読んでいるだけで楽しくなる。やはり彼はただ者ではない。

私は高齢者と呼ばれる年齢に片足突っ込んだ歳になったが、だからといって老け込んでばかりもいられない。

今後もS氏を見習ってトレーニングに励み、山も出来れば週に一度は行こうと思っている。

Sさん、ありがとう。お互いこれからも安全に登山を楽しみましょう!

画像は加藤文太郎記念図書館に展示されている、加藤文太郎が愛用していた登山靴。
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